Wordは、本文を10.5ptの文字サイズで記述するように初期設定されている。とはいえ、必ずしも10.5ptの文字サイズで文書を作成するとは限らない。もっと大きな文字サイズを本文に使いたい場合もあるだろうし、その逆の場合も考えられる。そこで、今回は文書全体に関わる文字設定について紹介していこう。
標準の文字サイズを変更する
Wordは「標準の文字サイズ」が10.5ptに初期設定されている。よって、普通に文字を入力していくと10.5ptの文字が文書に入力される。もちろん、入力した文字の文字サイズはいつでも自由に変更することが可能だ。このため、『標準の文字サイズが何ptであろうと別に気にしない…』という方も多いであろう。しかし、このような使い方は思わぬトラブルを引き起こす場合もあるので注意が必要だ。
前回の連載でも紹介したように、Wordの初期設定では「1字」が10.5pt、「1行」が18ptに設定されている。この設定は文書上で文字サイズを変更しても変わらない。仮に本文が16ptの文書を作成する場合であっても、「1字」は10.5pt、「1行」は18ptとして処理されてしまう。つまり、実際に使用する文字サイズと初期設定が異なるため、様々な不都合が生じるのである。
1~2ページ程度の短い文書ならそのまま作業を続けても構わないが、何ページにも及ぶ文書を作成するときは、本文の文字サイズに合わせて「標準の文字サイズ」を設定しておくとよいだろう。これで「1字」や「1行」のサイズを本文の文字サイズに合わせて変更できるようになる。「標準の文字サイズ」は以下のように操作すると変更できる。
たとえば、上記の手順で「標準の文字サイズ」に16ptを指定すると、「1字」は16ptに変更され、「1行」は21.75ptに変更される。
これで「標準の文字サイズ」の設定変更は完了…と言いたいところであるが、このまま「OK」ボタンをクリックしても、なぜか設定が正しく反映されない。試しに適当な文章を入力して行グリッド線を表示してみると、「2行」の行間で文字が配置されているのを確認できる。
このような結果になるのは、「1行」の設定が18ptのまま更新されていないことが原因だ。16ptの文字が「2行」の行間で配置される理由は、前回の連載で紹介したとおりである。「標準の文字サイズ」や「1字」は正しく16ptに更新されているのに、なぜか「1行」の設定だけ18ptのまま変更されない…、という不思議な現象が起こってしまうのだ。
これを正しく設定しなおすには、「ページ設定」ダイアログの「行数」を手動で指定する必要がある。たとえば、「行数」に30と再入力してから「OK」ボタンをクリックすると、設定が正しく反映されて文字が「1行」に収まるようになる。
文字数と行数の指定
先ほど紹介した「標準の文字サイズ」にも関連する話であるが、Wordで文書を作成するときは、1ページあたりの文字数と行数を最初に指定しておくのが基本である。すると、ここで指定した「字送り」や「行送り」が、「1字」や「1行」のサイズとして採用される仕組みになっている。
「標準の文字サイズ」を10.5ptのまま使用する場合であっても、「1行」の行間を変更したい場合などは、これから紹介する設定変更を行う必要があるだろう。
文字数や行数は「ページ設定」ダイアログで指定する。ここには4種類の指定方法が用意されているが、通常は「行数だけを指定する」を選択するのが基本となる。「行数」を変更すると、その値に応じて「行送り」も自動的に設定され、以降はその値が「1行」のサイズとして扱われるようになる。もちろん、「行送り」を直接指定しても構わない。この場合は、指定した行送りに応じて自動的に「行数」が設定される。
文字数も指定したい場合は「文字数と行数を指定する」を選択すればよい。この場合は「文字数」と「字送り」が連動して変化することになる。
ただし、必ずしも指定した文字数になるとは限らないので注意すること。プロポーショナルフォントの場合は文字ごとに文字幅が異なるため、文章の内容に応じて文字数が変化する。また「両端揃え」を指定している場合は、各行の右端が揃うように字間が自動調整されるため、指定した文字数にならない場合もある。
必ず指定した文字数で配置したい場合は、「原稿用紙の設定にする」の指定方法を選択してから「文字数」と「行数」を指定すればよい。すると、グリッド線のマス目に1文字ずつ文字が配置されるようになる。ただし、この指定方法では「中央揃え」や「右揃え」などの配置が指定できなくなる点に注意すること。
ちなみに「標準の文字数を使う」の指定方法は、「1字」=標準の文字サイズ、「1行」=12ptに設定するものとなる。ただし、これは少し特殊な設定であり、文字が行グリッド線に沿って配置されず、文字サイズに応じてそのつど適当な行間が自動指定されるようになる。また、この指定方法で作成した文書をWord 2007で開くと設定が無視され、ページレイアウトが意図しない状態になるなどの不具合も報告されている。よって、この指定方法は選択しないのが無難といえる。
「既定に設定」ボタン
「ページ設定」ダイアログや「フォント」ダイアログには、「既定に設定」というボタンが用意されている。このボタンは"かなりの上級者"でない限りクリックしないのが基本である。というのも、文書単位の設定ではなく、Word全体の設定を変更してしまうからである。
通常、Wordを起動すると、「NORMALテンプレート」を基に白紙の文書が作成される。この「NORMALテンプレート」には、標準の文字サイズ=10.5ptなど、Word文書に関する様々な初期設定が保存されている。「既定に設定」ボタンは、この「NORMALテンプレート」の内容を更新するものであり、初期設定そのものを変更してしまうボタンとなる。むやみにクリックすると元の状態に戻すのが難しくなるので、よくわからない方は「既定に設定」ボタンに触れないように注意しよう。