本連載では、メールシステムやチャットツールの課題を解説した後、それを代替できる可能性のあるツールとしてEC studioが提供するクラウド型チャットツール「チャットワーク」の3つの特徴を紹介してきた。今回は、業務での利用シーンを想定しながら、チャットワークの脱メールツールとしての可能性を探ってみたい。
実運用でどう活きるのか
それではさっそくチャットワークに触れていこう。
今回は、開発元のEC studioの方々に協力してもらいながら、ビジネスを想定したディスカッションやファイルのやりとりを行った。
以下、その内容と感想を簡単に紹介していこう。
情報共有スペースを瞬時に開設可能
チャットを始めるには、画面右上の「コンタクト管理」からメンバー検索し、コンタクト一覧に追加。1対1のチャットであれば、すぐに開始できる。グループチャッ トを開始する場合は、左カラムにあるチャット一覧の最下部の「グループチャットを新規作成」を選択。そこでメンバー選び、グループを作成すればよい。
必要な準備作業はこれだけ。あとはメンバーが個々に発言していけば、全員でディスカッションの内容を共有できる。
同様の環境をメーリングリストで作るとなると、管理者を決めて、所定の手続きで申請処理を行った後、管理サイトなどにアクセスしてメンバーの追加などを行うことになる。「自由にメンバーを追加できる」と言うのがはばかりたくなるほど、面倒な作業が必要だ。場合によっては登録作業に1日以上かかることもある。
ビジネスを円滑に進めることを考えると、ここまで簡単かつ迅速にプロジェクトの情報共有手段を用意できるのは大きい。キックオフミーティングの勢いをそのままオンラインでのやりとりにつなげられる。これが翌日になってしまうと、どんなにミーティングで盛り上がったとしても、仕切り直しのような感覚が生まれる。些細な点かもしれないが、実業務では意外と重要な部分だ。
グループディスカッションでも相手を指名できる
チャットのグループを作成したら、いよいよメッセージの投稿である。画面中央下部のメッセージボックスにメッセージを入力してEnterキーを押せば、その内容がグループの共有スペースに書き込まれる。この際、グループ全体に対してメッセージを送るだけでなく、メンバーを個別に指名することも可能だ。指名すると、メッセージの上部にアイコンが表示され、だれ宛のメッセージなのかが一目でわかるようになる。
グループチャットの画面。メッセージを送る相手を指名することもできる。 |
この機能は、ベーシックなものではあるが、実用性が非常に高い。特に背景色がつき目を引ける点は大きいと言えるだろう。例えば、メーリングリストなどでは「> ○○さん」といったかたちで指名して要件を伝えることもあるが、これが存外見落とされやすい。本文の上の方だけを読んで関係ないと判断され、そのまま放置されてしまったというのはよくある話だ。
上記の機能はそういった事故を防ぐことができる、インパクトの大きいものと言える。
また、投稿済みの各メッセージに対しては引用や返信を行うこともできる。このあたりはメールの良い点を踏襲したものになっている。
ディスカッションの結果を即座に個人のタスクへ落としこみ
前回も説明したとおり、チャットワークでは、メッセージの投稿だけでなく、ファイルを送信したり、タスクを登録したりする機能も用意されている。いずれも、メッセージの投稿と同様にメッセージボックスから行える。
ファイルの送信は、メッセージボックス上部の「ファイル送信」ボタンをクリックしてファイルを選択するだけ。タスクの登録は、メッセージボックス上部の「タスク」ボタンをクリックして、タスクの内容を入力すればよい。
メッセージボックス。上部の「タスク」や「ファイル送信」からタスク登録/ファイルアップロードが行える |
これらは画面右下の小さなタブから、ファイルだけ、あるいはタスクだけまとめて確認することも可能だ。
チャットグループ内でやりとりされたファイルは「ファイル」タブで確認できる |
チャットグループ全体のタスクは「タスク」タブにまとめられる |
なお、タスクの登録は、自分だけでなく、他のプロジェクトメンバーに対しても行うこともできる。具体的な作業が発生した場合には、その場で担当者を決めて仕事を割り振り、プロジェクト全体のタスクリストとして登録しておけるのだ。
グループチャットの作成プロセスでも触れたが、こうしたビジネスを加速させる機能はチャットワークの大きな特徴の1つである。メーリングリストやチャットでのディスカッションでは、やることが決まったとしても担当者があいまいになってしまい、進捗が滞ることが多い。それに対して、チャットワークでは、タスク登録機能を使ってディスカッションの結果を個人の作業にまで即時に落とし込むことができる。各人の責任範囲を明確にできれば、無駄に停滞することもなくなるだろう。
プロジェクトの"脱落者"を減らす未読機能
さりげないものだが、チャット一覧やチャット画面に表示される「未読」も大きな役割を果たす機能である。
例えば、遠地への出張などで長時間ログインできなかったときに、他のメンバーでディスカッションが大幅に進んだとしよう。投稿が10件程度であれば造作ないかもないが、50件を超えるようなケースでは、画面を何回もスクロールしなければならなくなる。自分が確認済みの箇所を探すだけで一苦労だ。
それに対し、チャットワークでは未読メッセージが未読マークで明示されるうえ、「チャット一覧」においても各グループの未読件数が表示される。自分がどこから確認すればよいのか、またそもそも確認すべき内容があるのかがすぐにわかるようになっている。
チャット一覧には、未読メッセージの数も表示される |
また確認済みメッセージのステータスを「未読」に戻す機能も搭載されている。これにより、「後で返信」などの対応を忘れずに行える。
さらに、一定時間見ていない未読チャットをメールで通知する、という機能も最近あらたに実装された。
この機能は、チャットワークに最後にアクセスしてから、ユーザーで設定した一定時間(デフォルトは24時間)が経過すると、未読のチャットがある場合メールで通知される、という機能だ。 これによって、未読チャットの見落としがなくなり、プロジェクトの進捗が滞るということも防止できる。
日常的に使うツールであるだけに、こうした機能は非常に大きな役割を果たすはずだ。
一連の機能を自分向けに利用できる「マイチャット」
そのほか、チャットワークには、上記の一連の機能が自分専用のタスクに適用できる「マイチャット」も用意されている。こちらに関しては、自分を相手とみなしてチャットワークのやりとりが行える機能だと考えればよい。自分向けのメッセージを備忘録として使ったり、割り当てるタスクをToDoリストとみなしたりできる。ファイルを送信しておけば、個人用のファイル置き場のように使うことも可能だ。
マイチャットもチャット一覧で1クリックするだけで閲覧できるので、操作に手間取ることはない。
「脱メール」ツールとしての可能性
以上、ごく簡単ではあるが、チャットワークを使用しての感想を紹介した。
操作が複雑でビジネスの重荷になってしまう業務ツールが多い中、シンプルでありながらもビジネスを加速させる機能が多数盛り込まれている点は大きな魅力と言える。
なお、本稿では紹介できなかったが、マイチャットにはそのほかにも、情報を分かりやすくするためのアラート表示、スカイプと連携した通話機能、スマートフォン対応など、多くの機能を備えている。これらは、3月のリリースから随時アップデートが施されており、どんどん使いやすくなっている状況だ。クラウド形態で提供されるため、システム管理者などが手を煩わされずに済むというメリットもある。
一方、企業内での利用においては、ログイン履歴や操作ログなどのシステム管理やファイルの不正送信の防止策などといったセキュリティ面での機能は欠かせない。現状では、システム管理者がユーザー管理やログ管理を行う機能は提供されていないものの、今後のバージョンアップによって、機能追加がされていくはずだ。
今後、クラウド技術が企業の情報システムや社員間のコミュニケーションのあり方を変えていくことは間違いないと言える。メールシステムに対する不満や課題も無視できないものになっている。そんななか、チャットワークは、「脱メール」を促す最適なツールと言えるだろう。ぜひとも実際に利用し、自身の目で確かめていただきたい。