「出社して最初に立ち上げるソフト」に十分なりえるツール
EC studioが3月に提供を開始したチャットワークは、チャットの効率性を活かしつつ、メールを代替できる可能性を秘めたコミュニケーションツールだ。
企業内でメールが利用されるようになってから十数年。メールに代わるツールはこれまでもさまざまなかたちで提案されてきたが、完全にメールを置き換えて利用できるようなツールはなかった。メールよりも簡単でタイムリーに利用できるツールとしてチャットツール(インスタントメッセージングツール)を利用する企業もあるが、あくまでメールや電話を補完するという役割だ。
実際、出社してまず行う業務はメールのチェックという人がほとんどだろう。その後、社内のWebサイトに書かれた連絡事項やスケジュール、プロジェクト管理ツールなどを確認しつつ、電話やメール、チャットツールなどを使って業務を進めていくというのが一般的だ。
そんななか、チャットワークは、チャットツールが持つメリットを活かしながら、これまでメールで行ってきた業務の機能を取り入れた新しいコミュニケーションツールになっていることが大きな特徴だ。実際、出社してすぐにチャットワークを立ち上げ、そのまま連絡事項をチェックして、進捗確認、担当の割り振りを行うといったこともスムーズにできるツールなのだ。
オンライン/オフラインを気にせずに使える"クラウド型チャット"
これらを可能にしているのが、クラウド上ですべてのメッセージ(チャットログ)を管理するというチャットワークの基本コンセプトだ。
クラウドのメリットについては、GmailやTwitter、Facebookなどを想定すると分かりやすい。ローカルの端末にメッセージを保存するメールソフトやチャットツールでは、アクセスする端末ごとに受信するメッセージが異なったり、チャットログが同期されていなかったりする。だが、クラウド上でデータが一元管理されていると、そうした問題は発生せず、いつどのような端末からアクセスしても常に最新の状態で利用することができる。ログの管理や移行も不要だ。
さらに、チャットワークでは、チャットツールとして当然の機能であるメッセージのリアルタイムでの送受信も可能だ。メッセージを送った相手がログインしている場合は、相手のチャットワークの画面に即座に更新通知が表示され、そのままリアルタイムチャットに移行できる。相手がオフラインの場合でも、相手がログインしてオンラインになると自動的に更新通知が表示され、最新のログを見ながらのリアルタイムチャットに移行できる。ユニークなのは、インタフェース上にオンライン/オフラインのステータス表示がされないこと。相手がオフラインであるか、オンラインであるかをまったく気にすることなく、利用できるわけだ。
チャット上でタスク管理、ファイル管理ができることの利便性
こうしたクラウドのメリットを活かしながら、チャットワークでは、さらに以下の3つの主要機能が提供されている。
- グループチャットによる簡易会議
- グループ間でのタスク管理
- クラウドを活用したファイル管理
以下、順に見ていこう。
1. グループチャットによる簡易会議
グループチャットによる簡易会議は、社内の部署やプロジェクトメンバー、取引先の担当者とグループチャットをつくり、リアルタイムにチャットで情報交換ができるという機能だ。
個人向けチャットツールでは、相手がオフラインの状態ではメッセージが送信できなったり、後から参加したグループチャットでは参加以前のログを参照できなかったりといったケースがあるが、クラウドを利用するチャットワークではそうした心配はない。また、グループチャットのログはメンバー間で共有されるため、メーリングリストの代わりとして利用することもできる。メールのように大量のメッセージに埋もれてしまって情報が伝わらないという事態も防げる。
2. グループ間でのタスク管理
グループ間でのタスク管理では、グループチャットの中で発生したタスクを担当者に割り振ることができる。担当者のアイコンをクリックして宛先を選択し、メッセージを添えて送信するだけで、簡単にタスクを割り振りできる。必要であれば、期日を設定することも可能だ。また、未完のタスクを表示するタブも用意されているうえ、タスクの完了通知もクリック1つで終了する。
メーリングリストやタスク管理ツールを使って担当者を割り振ったり進捗管理したりするのに比べると、チャットの中からダイレクトに担当者を決めて、その進捗管理をチャットログ上で行えることは、とても利便性が高いと言える。もちろん、依頼者も担当者もタスクを管理することができるため、処理のし忘れを防ぐことにもつながる。
タスク表示タブ(ここでは個人用のタスクのみを表示させている) |
3. クラウドを活用したファイル管理
ファイル管理は、メッセージを送る際に、容量の大きなファイルを添付して送信できる機能だ。個人向けチャットツールのようなP2Pを使ったファイル送信ではないため、送る相手がオフラインであっても、ファイルを送信できる。さらに、送受信したファイルを一覧形式で表示するタブも設けられている。
送受信されたファイルクラウド上で保管されるため、ファイルサーバーとして利用することも可能だ。
送受信したファイルを一覧表示するタブ |
秀逸なUIも魅力の1つ
チャットワークが秀逸なのは、これら3つの機能がチャットツール以上に効率的に利用できるようデザインされていることだ。例えば、タスク登録、ファイル送信などのボタンは、メッセージボックス上部に並んで配置され、操作に迷うことはない。加えて、先述のとおり、送信されたファイルや割り振られたタスクは専用のタブに表示されるため、ファイルやタスクを過去のログからわざわざ探しだすといった労力も不要だ。
メッセージボックス上部にタスク登録ボタンやファイル送信ボタンが配置されている |
実際に使ってみると、このことが実感できるようになる。そこで、次回は、そうしたチャットワークのインタフェースや操作方法に触れながら、脱メールのツールとしての可能性を探りたい。