ケータイ・TVに進出するウィジェット - ユーザーと企業の有力な接点に(前編)』につづき、後編をお送りします。前編では、NTTドコモおよびソフトバンクモバイルの担当者にウィジェット戦略について伺いました。後編では、ソニーが展開するテレビ向けウィジェット「アプリキャスト」の担当者である、コンスーマープロダクツグループ UIセンター ホーム次世代UI開発部 ソフトウェアデザイナー 岡本直也氏に話を伺いました。

――テレビウィジェット「アプリキャスト」とは?

アプリキャスト」は、テレビを見ながら気になる情報を見ることができる便利な機能です。たとえば、おでかけ前に、テレビ番組を見ながらその日の天気や占いをチェックできます(2007年春に発売されたBRAVIA国内モデルより搭載開始)。

――テレビウィジェットまたは「アプリキャスト」がもたらす価値とは?(利用者視点で)

テレビウィジェットの価値というのは、至ってシンプルなことですが、ふだんの生活の中で、テレビを見ながら、PCを起動させなくても、手軽かつリアルタイムにインターネット上にある様々な情報を取得できるということだと思います。 さらに「アプリキャスト」では、ウィジェット利用にともなうすべての操作をテレビのリモコンのみで行うことができ、気に入ったウィジェット、気になる情報をストレスなく、テレビを見ながらチェックすることができます。これこそが、アプリキャストの最大の価値だと考えています。

――企業が「アプリキャスト」上でウィジェットを提供するにあたってのポイントは?

企業の皆様が気にかけられるのは、ウィジェットとして提供するコンテンツをどうするか? という点で、テレビのウィジェットだから、テレビ(番組など)と関連したコンテンツが必要では……? と考えられる方も多いと思います。実際には「アプリキャスト」上にすでに40個以上の公式ウィジェットが提供されていますが、その多くは通常、ウェブサイト上で提供されているコンテンツをベースとしたものです。利用者に人気のコンテンツの傾向としても、テレビを見つつ「ながら見」できる、シンプルに情報を取得できるタイプです。ネットでは普通に手に入る情報もテレビで簡単に見られることに魅力を感じていただいているようです。ブラウザを連携させることも可能ですが、ウィジェット内で必要とされる情報を提供することで利便性を保つことも重要だと考えています。

「案ずるより産むが易し」 新しい市場だからこそ、ウィジェット展開でアドバンテージを!

デバイスメーカーの視点から、それぞれウィジェットが提供する新しい世界観について貴重なコメントをいただきました。企業がマーケティング目的でデバイス連携型ウィジェットを利用する際の共通したバリューとは、ユーザーに非常に近い"場"に企業として新たなタッチポイントを構築することが可能となるという点です。

デバイスからのインターネット接続がもはやコモディティ化するなかで、2009年以降、その他のデバイス(デジタルフォトフレーム/カーナビゲーション/デジタルサイネージなど)においても、ウィジェット普及の波が広がっていきます。

一方で、ウィジェットを利用する企業サイドの課題は、デバイスごとにいかに効率よくウィジェットを提供できるか、という点です。提供するコンテンツが同じだとしても、ウィジェットを制作する際にそれぞれのプラットフォームに合わせた開発が必要となります。これらの課題を解決する施策のひとつに、Adobe Systemsが提唱している「Open Screen Project」という活動があります。

「Open Screen Project」とは、FlashやAIR技術をオープン化し、PC、テレビ、携帯電話など様々なデバイスでFlashコンテンツを統一的に利用できる環境を作ろう、という活動です(2008年5月に発足)。Adobeを中心に、Nokia、Sony Ericsson、Qualcomm、Motorola、NTTドコモ、MTV、BBCなど、デバイスメーカーやコンテンツ事業者がプロジェクトに参画しています。今後ウィジェット活用する際には、このような技術動向についてもフォローしておくことが必要です。

最後に、新しい「ウィジェットプラットフォーム」において、率先してマーケティングに利用するということは、事例も少ないなかで実行に移せない企業の方々も多いと思います。一方で、初期段階だからこそのメリットとして、先んじて様々なノウハウを蓄積でき、最終的に大きなアドバンテージを得ることが可能となります。「案ずるより産むが易し」という言葉がありますが、ターゲット設定と初期設計をしたうえで、2009年はぜひとも、「ウィジェットマーケティング」に挑戦をしていただければと思います。

以上、コラム「ウィジェットマーケティング最前線」は今回が最終回となりますが、コラム連載をきっかけに、マイコミジャーナル×FLO:Q(フローク)コラボウィジェットを提供すべく、現在準備を進めております。近々、皆様にもご案内させていただきます。5回に渡りまして本コラムをご購読いただき、ありがとうございました。これを機に、「ウィジェットマーケティング」に興味を持たれた方、ぜひとも、ソニーFLO:Qまでお問い合わせをいただければと思います。

著者プロフィール : 竹下直孝

2001年 ソニー株式会社に入社。インターネットサービスを手掛ける部門に属し、利用したコミュニティサービスに関する事業企画を担当する。2005年に有志で「新しいネットメディアの開発」をコンセプトに、ウィジェットサービス「FLO:Q(フローク)」プロジェクトを発足。06年10月にブログパーツサービスを、07年11月にはPCデスクトップ・ウィジェットサービスをリリース。2009年1月現在、ブログパーツはサービス全体で月間1.8億インプレッションを保有、独自の広告モデルを展開中。デスクトップウィジェットについても、昨年末に10万ダウンロードを突破し、本格的にビジネスメニューの提供を開始。さらに、1月から国内で発売されるパーソナルコンピューター「VAIO」の新機種に管理ソフト「FLO:Q Widget Manager」のプリインストールを開始した(※一部、機種を除く)。