NECは2022年1月20日、ローカル5G向けの小型基地局「UNIVERGE RV1000」シリーズを発表しました。 基地局の無線部と制御部を一体化し、従来の基地局よりもコンパクトかつ低価格を実現したUNIVERGE RV1000シリーズですが、設備の高額さが導入を阻んでいるローカル5Gの課題解決につながるでしょうか。→過去の回はこちらを参照。
基地局の機能を一体化したUNIVERGE RV1000シリーズ
5Gと基地局設備のオープン化を機として、通信設備事業で攻めの姿勢を見せているNEC。そのNECが2022年1月20日に、ローカル5G向けの新製品発表会を実施しました。
NECは、これまでキャリア向けなどの通信設備事業など培ったモバイル通信の知見などを生かし、2019年にローカル5G事業への本格参入を表明。
スタンドアローン運用ができる4.7GHz帯の割り当てが開始されたのに伴い、2020年11月よりローカル5Gを企画から導入、運用保守までワンストップで提供する月額制のサービスを開始しています。
同社はその後も、さまざまな企業や行政などとローカル5Gを活用した技術実証を実施。発表会の直前となる2022年1月17日には、コニカミノルタと共同で開発を進めている、ローカル5Gを活用した「未来ファクトリー」構想の取り組みの1つとして、工場で用いられるAGV(無軌道型無人搬送車)の高効率自動制御システムを開発したことを打ち出しています。
そして今回、ローカル5Gの導入を加速するための取り組みとして打ち出されたのが「UNIVERGE RV1000」シリーズです。これはローカル5G向けに提供される新しい基地局製品群で、最大の特徴は基地局に必要な要素が1つにまとめられていることです。
基地局は一般的に無線通信を担う無線部(Radio Unit、RU)と、無線信号を処理するデジタル部(Distributed Unit、DU)、処理したデータを集約してコアネットワークとやり取りする集約部(Central Unit、CU)の3つから構成されていますが、携帯電話会社向けのように大規模なネットワークを構築するための基地局は、DU/CUとRUが分離しており、1つのDU/CUに複数のRUを接続して広い範囲のエリアをカバーする仕組みとなっています。
しかし、ローカル5Gの場合、工場内など特定の場所だけをカバーすればよく、また接続する端末も少ないことが多いため、そこまで大規模な基地局設備が必要ないケースが少なくありません。そうしたことからUNIVERGE RV1000シリーズでは、RUとDU/CUをすべてて1つの筐体に収めることにより、シンプルかつコンパクトなサイズを実現しているのです。
ちなみにNEC側の説明によりますと、広さが陸上競技場のトラックの内側くらいであればUNIVERGE RV1000シリーズでカバーできるとのこと。公共施設やオフィスの1フロアなど小規模でローカル5Gを活用したいというニーズに応えるための製品といえるでしょう。
小規模・低価格でローカル5Gの普及に弾み
そして機能を一体型にしたことによる最大のメリットが価格です。
UNIVERGE RV1000シリーズにはサブ6の4.7GHz帯に対応した「UNIVERGE RV1200」と、ミリ波の28GHz帯に対応した「UNIVERGE RV1300」の2つが用意されますが、前者は98万円、後者は498万円とのこと。RUとDU/CUが分離しているタイプの基地局と比べ価格がが大幅に安くなっているというのです。
ローカル5Gは産業界から大きな注目を集める一方、その活用が実証実験にとどまるものが大半を占め、ビジネスの現場で実際に活用されるケースがまだほとんどありません。その大きな要因の1つとされているのが設備コストで、現状ローカル5G向けにカスタマイズされた基地局などの製品が少ないことから、携帯電話会社向けの高額でオーバースペックな設備を使わざるを得ないことが導入を阻む大きな要因となっている訳です。
そうしたことからNECでは、ローカル5Gを導入したい企業のニーズに応えるべく設備面でもさまざまな対応を進めており、コアネットワークに関しては専用の設備を置くのではなく、クラウドで提供する「5Gコアクラウド」を活用しています。それに加えてUNIVERGE RV1000シリーズの提供で基地局の低コスト化も実現できたことから、低コストでローカル5Gを活用したい中小の事業者に対するニーズに応えられる体制が整ったといえるでしょう。
そこでNECは、ローカル5Gを小さな規模から始めたい導入したい企業に向け、UNIVERGE RV1200と5Gコアクラウドを組み合わせた「ローカル5G Sub6スターターパック」の提供を打ち出しています。その価格は5Gコアクラウドの1年間使用料込みで498万円からとのことで、従来よりはかなり安い価格でローカル5Gを導入できるようになったとしています。
もちろん、ローカル5Gの導入障壁となっている要素は、設備の価格以外にもいくつか存在しています。例えば周波数免許を取得する必要があることから、Wi-Fiなどと違って導入する川に無線通信に対する詳しい知識が求められることも大きな課題となっているようです。
しかし、今回のNECの新製品投入が、基地局の低価格化という大きな課題に解決策を打ち出してきたことは確かですし、NECも2022年度には実証から実用へとフェーズが移りローカル5Gの本格普及が始まると見ているようです。
思うように利活用が進まないローカル5Gですが、NECをはじめとした関係各社の積極的な取り組みによって、2022年中にはビジネスの現場で活用されている姿が見られることを期待したい所です。