2021年4月14日~16日に開催された「Interop Tokyo 2021」のリアル開催において、大規模なブース出展をしていたファーウェイ・テクノロジーズ。米国からの制裁によって日本でも移動通信ビジネスの制約を受けている同社が、国内向けに取り組みを進めようとしているのがローカル5Gです。同社のローカル5Gに関する取り組みをイベントから確認してみましょう。→過去の回はこちらを参照。
「Interop Tokyo」でローカル5G関連製品を展示
中国のファーウェイ・テクノロジーズは、携帯電話のネットワーク設備とスマートフォンの大手として知られており、2019年頃までは日本でも携帯大手にネットワーク設備を提供したり、スマートフォンを販売したりするなどして注目度を高めていました。しかし、同年に米国から制裁を受けて部材の調達に制約が出たことにより、スマートフォン事業の大幅縮小を余儀なくされています。
それに加えて日本政府が、政府調達の通信機器から実質的に中国企業の製品を排除する方針を打ち出しており、その影響もあってか国内携帯各社は5Gで同社製のネットワーク機器を採用していません。従来の主力だった携帯電話会社向けのビジネスが難しくなっている様子が伺えます。
しかし、すべてのビジネスを制限されている訳ではないことから、Interop Tokyo 2021のリアル展示において、ファーウェイ・テクノロジーズは大規模なブースを出展して自社製品をアピールしていました。Interop自体がネットワークインフラ関連を主体とした展示会ということもあり、展示されていたのはルータやスイッチなどネットワーク・クラウド関連の製品が主ではあったのですが、中には5Gに関する製品の展示も見ることができました。
それはローカル5G用の基地局やベースバンドユニットなどです。担当者に話を聞いたところ、同社ではノンスタンドアローン(NSA)だけでなく、スタンドアローン(SA)にも対応した基地局を日本のローカル5G向けとして提供しており、ミリ波でもSAでの運用が可能な点が大きな特徴だとしています。
SAであれば4Gの周波数帯の免許と基地局を用意する必要がないので、低コストでローカル5Gの設備導入が可能。それだけに、ミリ波による一層の高速大容量通信を実現しながらも、低コスト化が実現できるミリ波のSA対応基地局はメリットが大きいといえるでしょう。
国内では当面、中小の事業者に活路か
同社では、基地局だけでなくコアネットワークも提供していますが、ローカル5Gのサービスを提供する多くの企業が打ち出してるクラウドでのコアネットワーク提供ではなく、物理的な機器を導入してもらうことを重視しているとのこと。その理由として担当者は、ネットワーク遅延を抑えるためだと話しています。
クラウドでのコアネットワーク提供は低コストで導入しやすい一方で、ネットワーク的に距離が離れることから、その分遅延が発生しやすくなるようです。より近い場所にコアネットワークを設置することで、5Gの低遅延を存分に生かした機能やサービスを、ローカル5Gで提供できるようになるとしています。
そして同社の機器を積極的に採用し、ネットワーク構築を進めている国内企業の1つに挙げられるのが阪神ケーブルエンジニアリングです。同社は阪神電気鉄道系列の通信事業者であり、ケーブルテレビ事業から発展していることから、現在は地域BWA(Broadband Wireless Access:2.5GHz帯の周波数の電波を用いた電気通信業務の無線システム)に力を入れている企業の1つとなっています。
実際、阪神ケーブルエンジニアリングは地域BWAのコアネットワーク設備を独自で保有し、自社だけでなく、他のケーブルテレビ事業者など地域BWAを手がける企業らに提供しているのですが、そこに使われているのはファーウェイ・テクノロジーズ製品が中心となっています。同社は地域BWAだけでなく、今後の展開を検討しているローカル5Gに関しても、ファーウェイ・テクノロジーズ製品の活用を検討しているようです。
ファーウェイ・テクノロジーズとしては携帯大手のビジネスに入り込むのが難しくなっているだけに、当面国内では無線通信技術の強みをローカル5Gで生かし、中小の通信事業者などに向けた機器提供に力を入れていく可能性が高いと考えられます。ローカル5Gが同社の国内事業において支えとなるのかどうか、今後大いに関心を呼ぶ所ではないでしょうか。