ソフトバンクと東京工業大学は2023年10月6日、5G向け周波数帯の1つである3.9GHz帯の電波と、衛星通信の地球局との電波干渉を大幅に抑える「システム間連携与干渉キャンセラー」の試作装置を開発し、室内での実験に成功したと発表しました。この技術が、衛星通信との干渉で思うようにエリアを広げられない5G周波数帯の利用拡大につながるでしょうか。→過去の「次世代移動通信システム『5G』とは」の回はこちらを参照。
5Gのエリア拡大を阻む3.7GHz帯の衛星通信干渉
5G向けとして新たに割り当てられた周波数帯のうち、サブ6の「バンドn78」に分類される周波数の3.6~4.1GHzの周波数、俗に「3.7GHz帯」とも呼ばれる周波数帯は、衛星通信でも使用している周波数帯でもあります。それゆえこの周波数は、電波干渉を避けるため「地球局」と呼ばれる衛星と通信する無線局設備の近くでは自由に使うことができません。
とはいえNTTドコモを除く3社は、サブ6の周波数帯として3.7GHz帯しか割り当てられていないことから、5Gで高速大容量通信を実現するには衛星と干渉しない形でこの帯域を活用するしかありません。それゆえ各社は干渉を抑えるため、地球局に電波が届かないよう基地局のアンテナの角度を変える、基地局の電波出力自体を抑えるなどの取り組みをしています。
ですが当然そのようなことをすれば電波が遠くに飛ばないので、広いエリアをカバーすることはできなくなってしまいます。3.7GHz帯の電波干渉は、国内の5Gエリアを広げる上で非常に大きな障壁となっているのです。