今回のテーマは「プロジェクト管理」
システム開発の現場で進捗管理に使われる「プロジェクト管理」。システムの規模に大小はあるが、行なうべき作業のリストアップや情報を一元管理することは大切だ。それは企業やプライベート、複数人やひとりのプロジェクトでも変わらない。機能の洗い出しをしておかないと、開発途中で機能を追加、修正していくうちに軸がブレてしまう。
プロジェクトを適切に開発、ローンチするためにもプロジェクト管理は必須だ。かつてはプロジェクト管理というと重厚なものが多かったが、最近ではカジュアルなシステムが増えている。そんな進化するプロジェクト管理サービス、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介しよう。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『Basecamp』 iPhoneアプリも多数あり! 37signals製管理システム
『GitHub』 分散拠点間のプロジェクト管理にオススメ
『Teambox』 個人で使うなら機能も揃った"無料"がいい
『Redmine』 企業採用も増加中! プロジェクト管理に必要な機能を網羅
iPhoneアプリも多数あり! 37signals製管理システム
名称 | Basecamp |
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URL | http://basecamphq.com/ |
『Basecamp』は、Ruby on Railsを開発する37signalsによるプロジェクト管理システムだ。インタフェースの細かな部分にこだわる彼らだけに、使い勝手は良い。主な機能はマイルストーン、タスク、ページ作成など。ファイルの添付も可能なので、プロジェクトに関する情報を一元的に管理できる。
「Basecamp」のトップページ。基本有料だが、こちらから登録すると1プロジェクトに限り無料で利用できる |
チャット機能は備わっているが、別のWebアプリケーションの機能を使っている(別途有料)。Basecampは基本的に有料ではあるが、管理するプロジェクトの数によって料金は異なり、また個人向けにフリーで使えるバージョンもある。
Webブラウザから操作するのが基本で、Web APIも公開されているため、外部サービスとの連携も容易だ。iPhoneアプリが多数開発されていることからもわかるとおり、Webブラウザ以外からの利用が簡単な点も魅力のひとつと言えるだろう。
唯一気になる点としては、ソースコードのバージョン管理システムがない点。とはいえ、リポジトリをWebブラウザから閲覧する機会はさほど多くないので問題ないかもしれない。操作性の良いWebアプリケーションを知るのにも最適ではないだろうか。
分散拠点間のプロジェクト管理にオススメ
名称 | GitHub |
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URL | http://github.com/ |
『GitHub』と言えば、個人向けにGitリポジトリを登録するサービスというイメージがある。だが、最近ではプロジェクトを管理する機能が多数備わっている。非公開リポジトリも有料で作成できる(元々無料でいくつか作ることはできた)。オープンソース・ソフトウェア開発に向いたシステムなので、開発者を追加してコラボレーションすることももちろんできる。Gitが基礎になるので、フォークした情報やコミットログ、プログラミング言語別にソースコードの量をグラフ化もする。
Wiki機能やチケット発行の機能を備え、プロジェクトの進捗を管理できる。もちろん、GitHubが便利であっても、エンタープライズ分野において外部にソースコードを保存するのに抵抗を覚える企業も多いだろう。そのため、GitHubでは、GitHub本体をそのまま企業のイントラネット上で利用できる「GitHub Firewall」を販売している。さらにWeb APIを公開しているので、こちらもまたマッシュアップが多数存在する。
大規模な企業向けプロジェクト管理には向かないかもしれないが、今はひとつの開発プロジェクトにおいて複数拠点で開発を進めることはよくある。そんな中、集中的なリポジトリ管理は難しいことがある。分散化バージョン管理であるGitとそのインタフェースであるGitHubは、まさにそうした分散した拠点どうしにおけるプロジェクト管理に最適なWebサービスだ。
個人で使うなら機能も揃った"無料"がいい
名称 | Teambox |
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URL | http://www.teambox.com/ |
「Basecamp」が便利なのはわかるが、個人ではやはり無料のほうがいいと思うかもしれない。そんな方は『Teambox』を使ってみてはいかがだろう。TeamboxはRuby on Railsを使ったプロジェクト管理ソフトウェアで、機能的にもBasecampにかなり似ている。
主な機能はメッセージ、タスク、ページ、チャット。チャットはBasecampでは有料機能なのでさらにうれしい。プロジェクトへの参加はメールアドレスのみでできるようになっており、企業のみならず個人によるプロジェクト管理にも最適だろう。
なお、Teamboxについてもリポジトリブラウザ機能はない。そのためリポジトリ管理は別途用意する必要がある。プロジェクトに関する情報を一切管理できる便利なソフトウェアだ。
企業採用も増加中! プロジェクト管理に必要な機能を網羅
名称 | Redmine |
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URL | http://redmine.jp/ |
『Redmine』は、PythonベースのTracに似たWebベースのプロジェクト管理ソフトウェアだ。日本における知名度が高く、日本語ローカライズやプラグイン開発も活発に行われている。複数のプロジェクトを管理でき、チケットの登録やロードマップ、文書、Wiki、ニュース、ファイル管理など様々な機能が備わっている。
見た目も分かりやすく、企業内での採用が多くなっている。リポジトリブラウザ機能があり、Subversion/ Git/ Mercurial/ CVS/ Bazaarなど多数が利用できる。ガントチャートやカレンダー出力といったビジュアル的な機能も備わっているので、小規模から大規模まで幅広くプロジェクトを管理できるのではないだろうか。
Redmineにはプロジェクト管理に必要な機能はほぼ揃っている。あとはRedmineを立ち上げてプロジェクトを開始するだけだ。
いかがでしたか?
Webシステム開発には、企業はもちろん個人やチームなど様々な形態が存在する。最近では一個所に集まらず、メールやチャットを使って情報を共有して個々人で進めるのも当たり前になっている。そんな中にあって情報を一元的に管理するのは容易ではない。Webブラウザをベースにするのはごく自然なことだ。
とはいえ、常にWebブラウザ経由であったり、インターネット上にデータを置くのも一昔前のスタイルになりつつある。プロジェクトの特性や自分のスタイルに合わせて管理方式を自由に選べるのが自然ではないだろうか。それによって生産性、管理コストは大幅に変わってくるはずだ。プロジェクト管理の分野では今回紹介したWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェアのほかにも、多数のプレーヤが存在する。ぜひ色々なものを試し、自分や企業にあったものを選択してほしい。
著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。