今回のテーマは「JAPAN」
ソフトウェアやWebサービスを作る上で国籍はあまり関係がないように思える。しかし最近の流行っているサービスは海外製によるものがほとんどだ。海外のサービスは新しい試みを次々と打ち出してきており、どれも魅力的なものが多い。個人的にはそれらのサービスを楽しく利用しつつも、多少の寂しさを感じている。
そこで今回は日本発の魅力溢れるWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)に注目したい。一部英語のみのサービスもあるが、とくに難しいものではないと思うのでぜひ触ってみてほしい。どのWebアプリケーション、OSSもユニークで面白いものばかりだ。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『attedea』 クリエイティブな人のためのSNS
『O'Reilly Maker』 オライリー本風の画像を生成する
『BrEdiMa』 ビジュアル的に数式を組み立てる
『SIE』 IEでもプラグインなしでSVG表示
作品を企画、アピールするのに便利なSNS
名称 | attedea |
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URL | http://www.attedea.jp/ |
クリエイティブな人をサポートするSNS的サービスの『attedea』。ギャラリーやマインドマップ(マインドシェア)を作成、共有することができる。マインドマップは通常のものとはちょっと勝手が違うので、慣れるまでは時間がかかってしまうかもしれない。だが、検索結果を子要素にしたり、画像を配置したりできるのは便利だ。新しい企画を立てる際に便利に活用できそうだ。
SNSなので、日記や友達、メールといった要素も加わっている。プロジェクトをすべて一人でハンドリングする場合は違うが、中規模以上になれば2、3人かそれ以上の人数で開発していくことになるだろう。そうしたときに情報が一元的に管理できたり、相互にやり取りしたりできるのは便利だ。
ほかにも携帯電話からアイディア投稿といった機能もある。ふと思いついたアイディアを携帯電話から送信しておけば、アイディアを蓄積しておくことができる。Webサービスを開発する場合のマネジメントシステムとしての利用も便利そうだ。
あなただけのオライリー本(風)の表紙を生成
名称 | O'Reilly Maker |
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URL | http://www.oreillymaker.com/ |
『O'Reilly Maker』はあの技術書で有名なオライリー本に似た画像を生成できるWebサービスだ。画像には中世のイラストを集めてCreative Commonsで公開している「OldBookIllustrations.com」のものが使われている。
そのイラストと合わせてオライリー本風に文字列が重なると、何となくそれっぽい見た目に仕上がる。自分のサイト名を飾ってみると、自己陶酔しそうになる。作成された作品は画像として出力することもできるので、サイトに飾ったり、プロフィール画像として使ってみたりするのも面白そうだ。ぜひ一度お試しを。
JavaScriptで見た目どおりに数式を組み立て
名称 | BrEdiMa |
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URL | http://bredima.sourceforge.jp/ |
『BrEdiMa』はWebベースの数式エディタだ。BrEdiMaを使えばビジュアル的に数式を組み立てていくことができる。数値入力はもちろん、ルートや分数、Σ(シグマ)などの数学記号もクリックひとつで追加できる。たいていの数式で利用される記号はあらかじめ用意されており、見た目どおりに数式が組めるとあって、操作に困ることはほとんどないだろうと思われる。
作成した数式はmimeTeXを使ってレンダリングし、画像として表示できる。この方式であれば、メンテナンス性が高く、組み立てが容易で見た目にも分かりやすい数式をサイト上で利用することが可能だ。また、そのコードをMathMLやLaTeX、JSONで得ることができるので、これもまた再利用が容易になっている。
これまで数式をサイト上に掲載するとなると、画像を使ったり一行の文字列で難解ながらも表現したりといったことが多かった。だが、BrEdiMaを使えば分かりやすい数式が簡単に利用できるようになる。学生や教諭はもちろん、サイト上に計算式を載せることがある人はぜひチェックしてみてほしい。
IEでもプラグイン不要でSVGを表示!
名称 | SIE |
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URL | http://sie.sourceforge.jp/ |
SVG(Scalable Vector Graphics、Webグラフィックス用のXMLベースの言語)は面白い技術だと思うのだが、いまいち流行りきらない。原因としては、キラーコンテンツが乏しいこと、そして絶対的なビューワーがないことだろう。Web上で利用することが多いので、最近のブラウザではSVGの表示をサポートしている。が、最大のシェアを誇るであろうInternet Explorer(IE)が標準ではサポートしていない。プラグインをインストールすれば利用できるようになるが、その手間が足かせになってしまっている気がする。
そこで試してみたいのがこの『SIE』だ。SIEはJavaScriptのソフトウェアで、これを使うとSVGビューワーをインストールしていないIEであってもSVGが表示できるようになる。JavaScriptによってレンダリングされているということだ。
現状、まだ対応しきれていないSVGもあるが、これは非常に期待がかかる。JavaScript一つでSVGが表示できるとなれば、SVGの拡大に拍車がかかることは間違いない。ぜひさらなる発展を期待したいソフトウェアだ。
いかがでしたか?
冒頭に書いたとおり、ソフトウェアに日本人も外国人もあまり関係はない。だが、かつての電化製品がそうだったように、日本人の作るサービスはデザインやユーザビリティの面で優れていると感じている。また、海外向けにサービスを作る、リリースするコストも大幅に低くなっている。ぜひ日本国内に限らず、世界に向けてサービスを開発、アピールしてほしい。恐らく日本国内に対してだけでは得られなかったレスポンスが返ってくるはずだ。
著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。