今回のテーマは「グループウェア」
社内におけるスケジュールや顧客情報などを一元管理する仕組みとして利用されるのがグループウェアだ。元々、Microsoft OutlookやLotus Notesなどのクライアント型アプリケーションが多かったが、インターネットやLANの普及によってWebブラウザ向けに提供されるものが増えてきた。日本ではWeb型としてはサイボウズがもっとも有名だろう。
商用やオープンソースをはじめ、多種多様なグループウェアが存在するが、それだけに必要な機能はおおむね絞り込まれており、差別化が難しい分野でもある。だがすでに10年以上の歴史を持つ分野だけに、そろそろ次世代型のグループウェアが登場してもおかしくはない。インターネットの普及や技術など、時代は変わっているのだ。
今回はそんな、一歩抜け出す可能性を秘めたグループウェアを紹介したい。実務での利用にもきっと役立つのではないだろうか。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『Zoho Business』 Zohoの各種サービスを一元化して提供
『GRIDY』 グリッドコンピューティングをビジネスモデルに
『6zap』 ローカルアプリのようなインタフェースが特徴
『Team scheduler』 スケジュール/タスク管理のシンプルなグループウェア
Zohoの各種サービスを一元化して提供
名称 | Zoho Business |
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URL | http://business.zoho.com/biz/index.do |
「Zoho」では元々カレンダー/ ドキュメント作成/ Wiki/ メールなどのWebアプリケーションが提供されている。それらをひとつの画面にまとめて提供するのが『Zoho Business』だ。主な機能はメール/ カレンダー/ ドキュメント管理/ ドキュメント作成/ 表計算/ プレゼンテーション/ メモ/ リンク/ 連絡先などとなっている。
各機能は個別でも提供されており、便利なものだったが、一カ所に集約させると様子は一変してしまう。まさにこれはグループウェアだ。さらに組織を構成することで複数人で情報の一元管理もできるようになる。これは何も同じ企業だけに限らず、プロジェクトメンバーとして外部企業の人も追加できる。
個人の情報管理はもちろん、企業であっても十分利用できるだろう。なおZoho Businessは10ユーザまで無料で利用可能、11ユーザ目から7,500円/年となっている。無料では基本的な機能は変わらず、ストレージは1GBまで、オンラインサポートがないという制限がある。小さな組織であれば無料の範囲で便利に使えるだろう。
グリッドコンピューティングをビジネスモデルに
名称 | GRIDY(グリッディ) |
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URL | http://gridy.jp/portal/ |
『GRIDY(グリッディ)』は無料で使えるWeb型グループウェアだ。Web型とは言いつつも、Windows向けにソフトウェアをインストールする必要があったり、広告型のビジネスモデルではないところが特徴だ。主な機能はタイムカード/ 電話メモ/ アドレス帳/ Webメール/ スケジュール/ 資源管理/ ファイル管理/ ToDo/ 設備予約/ メモ/ 備品管理/ 議事録/ プロジェクト管理/ 報告書など実に数多い。
日本で開発されているものなので、日本の商習慣にマッチしていると思われる。これだけ便利な機能を備えていながらなぜ無料なのかと言えば、ビジネスモデルがグリッドコンピューティングの販売となっているからだ。つまり、インストールが必須になっているクライアントアプリケーションがグリッドコンピューティングクライアントになっているのだ。
CPUの空き時間やHDD容量を集約し、仮想的なスーパーコンピュータ化し、大規模な計算処理やHDD容量を必要とする企業に貸し出すことにより対価を得るようになっている。このビジネスモデルはなかなか新しいのではないだろうか。データはVPN接続を通じて送受信され、端末からは読み取れないようになっている。
GRIDYへのフルアクセスにはGRIDYのインストールが必須になるため、ネットカフェや他の端末からでは制限された機能のみ提供される。その点においても面白い。現在はWindowsのみが対応であり、将来的にMac OS XやLinux、iPhoneなどに対応する予定とのことだ。
ローカルアプリのようなインタフェースが特徴
名称 | 6zap |
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URL | http://www.6zap.com/ |
GmailやGoogleカレンダーなどを使いこなす方にとって、Webブラウザ上でスムーズに操作できないようなグループウェアは採用する気になれないだろう。そのような方や企業は『6zap』を導入してみるとよい。これはまさにWebアプリケーション型のグループウェアと言えそうだ。
メール/ スケジュール/ ファイル管理/ アドレス帳/ パスワード管理がメインの機能になる。どれもがAjaxを使い、スムーズに操作できるようになっている。メールは3ペインの構成になっており、スター機能やフォルダ、検索を使ったメッセージ管理が可能だ。
カレンダーはGoogleカレンダーライクにドラッグ操作で時間を指定でき、日本語も表示できる。さらにカレンダーの予定枠のみを公開する(内容は非公開)こともできる。これもGoogleカレンダーにあるような機能だ。アドレス帳はグループ管理でき、写真やメールアドレス、住所などを一元管理できるようになっている。パスワード管理はURLとそのID/パスワードを管理できる。
Googleの開発するオフライン技術であるGearsにも対応し、オフラインでも各データを参照できるようになっている。興味深いのはAmazon EC2向けのAMI(Amazon Machine Images)が公開されている点。これを使えばまさに5分で6zapを使ったグループウェアを構築できるようになる。
Googleの提供するような各Webアプリケーションを使いたいと思いつつも、セキュリティ上データを自社システムに置かなければならないような場合は6zapを検討する価値はありそうだ。
スケジュール/タスク管理のシンプルなグループウェア
名称 | Team Scheduler |
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URL | http://code.google.com/p/team-scheduler/ |
グループウェアは多機能であることが良いわけではない。実際、使われている機能はごく一部だったりする。多機能なグループウェアだと、かえって余計な混乱を生んだり、利用率が下がったりしてしまう。もっともよく使う機能を挙げるとしたら、恐らくスケジュール機能になるのではないだろうか。
ごく小規模な組織や外部の方も一緒にスケジュールを管理したいと思った場合、そのために多機能なグループウェアを導入するのは手間がかかってしまう。『Team Scheduler』はスケジュール管理とタスク登録のみに特化したWebアプリケーションだ。
Ruby on Railsで作られており、日付単位でのスケジュール管理が可能だ。機能が少ないように感じられるが、実際にはこのくらいが管理もしやすく、わかりやすいかもしれない。スケジュールはタスクとしても管理され、各日付ごとに何をすべきかを一覧で確認できる。グループごとにスケジュールを確認することも可能だ。プロジェクトのマイルストーンを管理したり、タスク管理に使えるのではないだろうか。
いかがでしたか?
最近のグループウェアの特徴としては、ただ多機能を追求するのではなく、実際に使われている機能や、操作性を高めたものが見られるようになっている。また他企業も同じデータを見られるようにし、コラボレーションを促進するようなものも多い。実際、10年くらい前とは異なり、最近のプロジェクトではシステムや企画が複雑化し、自社ですべてを行うのではなく、複数企業で取り組むケースも多い。そうした際に便利に使えるだろう。
インターネットの普及に合わせてグループウェアは各企業に普及している。だが、すでに時代は移り変わりつつあり、インターネット上の技術も大きく様変わりしている。そろそろグループウェアに求めるべき機能も変わってきているのではないだろうか。
著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。