今回のテーマは「Webサービス用ランチャー」

Webアプリケーションが多数提供されるようになり、"ローカルアプリケーションでしかできない"ということが減っている。逆にWebブラウザさえあれば、画像を編集したりブログを書いたりドキュメントを書いたりすることも簡単にできる。おそらく"離れることのできない"Webサービスがあるという方は多くいることだろう。

ローカルアプリケーションは利用する際に、都度深い階層をたどって起動するのが面倒だ。そのため、ランチャーと呼ばれるユーティリティを使い、よく使うアプリケーションを登録しておく。そしてキーボードなどから手早く呼び出して利用する。

Webアプリケーションの時代になっても同様の問題はある。多種多様なWebサービスが存在するため、アクセスが面倒に感じることも。ランチャーで一極集中できたほうが効率的だ。今回はそんなWebサービス用のランチャーに注目してWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介したい。もっと効率的にWebサービスが活用できるはずだ。

今回紹介するOSS・Webアプリ
iHome』 iPhone/iPod Touch向けWebアプリケーションホーム
StartCommand』 Webサービスをコマンドライン風に呼びす出
Quick Search Box』 Webサービス用Mac OS Xランチャー
Ubiquity』 Mozillaの提供する先進的ブラウジング



iPhone/iPod Touch向けWebアプリケーションホーム

名称 iHome
URL http://ihome.stylegraph.net/

iHome』はiPhone/ iPod Touch用のWebサービスランチャー。本体オリジナルのホーム画面風のリンク集を提供している。ユーザ登録を行って、登録済みの数多くのアプリケーションを設置すればSafariの中にオリジナルのホーム画面が作成される。

アプリケーション風ではあるが、実体はリンクだ。そのため、各アイコンをクリックすると別なタブが開いてURLが表示される。とはいえ、どのURLもiPhone/ iPod Touch向けに最適化されているのでスムーズに操作できるものばかりだ。

まるで標準のホーム画面のようなインタフェース

設定画面からアプリケーションをホームに登録する

「FON Maps」のような地図、乗り換え案内、Google Docs、計算機など執筆時点で93件のアプリケーションが登録されている。ジャンルもカレンダー/メッセンジャー/ mixi/ニュース/ポッドキャスティング/ twitter/ビデオなど多彩に揃っている。

ローカルアプリケーションも魅力はあるが、iPhone/ iPod Touch用Webサービスはごく手軽に立ち上げられるのが魅力だ。また、iPhoneはパケット定額契約のみなのでWebアプリケーションであっても通信費を気にすることなく使えるのが魅力だ。iHomeを使って、ローカルアプリケーションとはまた違う魅力を感じてほしい。




Webサービスをコマンドライン風に呼び出す

名称 StartCommand
URL http://www.startcommand.com/

たとえば翻訳サイトや株価を調べたいといった時、Googleで「和英 ○○」「株価 ○○」などと入力するとそこからWebサービスにジャンプできる。他にも映画、会社情報、通貨、天気、電卓、荷物、乗り換えなどさまざまな特殊検索機能がある。

この機能をさらに一般化したものが『StartCommand』だ。StartCommandはコマンドを使ってWebサービスへのリンクを作り出す。「google ○○」と打てばGoogle検索(「g ○○」でも可能)、「2ch」で2ちゃんねる検索、ほかにも「Amazon」「Gmail」「価格コム」「ニコニコ動画」「twitter」など多彩なコマンドが存在する。

「StartCommand」のトップページ。テキストボックスのみのシンプルな機能

このコマンドさえ覚えてしまえば、都度利用するWebサービスに飛んで検索する手間が省ける。Googleの提供するサービス以上に幅広く活用することが可能だ。よく使うWebサービスのコマンドを集めてマイスタンドを作るとさらに便利なものになるだろう。

文字を入れるとこのようにコマンドをサジェストしてくれる




Webサービス用Mac OS Xランチャー

名称 Quick Search Box
URL http://code.google.com/p/qsb-mac/

Mac OS Xユーザであれば利用者も多いであろうランチャーが「QuickSilver」だ。もはやランチャーという枠を越えて活用できるソフトウェアではあるが、同作者によるWebサービス用に作られたランチャーが『Quick Search Box』だ。

キーボードだけでGoogleなどの各種Webサービスを検索する

デフォルトではコマンドキーを2回押すと呼び出され、QuickSilver風にテキストボックスだけが表示される。そしてGoogleの各サービス向けに検索を実行することができる。Googleアカウントを登録すると、Googleドキュメントの文書やPicasaの写真検索も行ってくれるようになる。Web検索や画像検索、ニュース/商品/ Wikipedia/ Googleドキュメント/ YouTubeの検索が可能だ。アドレス帳やSpotlight検索、iTunesも取り込んで表示することもできる。

設定画面

Webアプリケーションとローカルアプリケーションを活用していると、その境界が面倒に感じてきてしまう。Quick Search Boxはその垣根を乗り越えてデータを検索してくれる便利なソフトウェアだ。




Mozillaの提供する先進的ブラウジング

名称 Ubiquity
URL http://ubiquity.mozilla.com/

Webブラウザを立ち上げている時間はどんどん長くなっている。常時起動の状態という人も多いだろう。そのWebブラウザ上でメールやドキュメントを作成していることを考えると、データが連携してくれたら便利なのだが……と思うことがある。たとえば、Webブラウザに表示されている文字をコピー&ペーストしてWebメールで貼り付ける時だ。

ほかにも文字を選択して翻訳サイトに貼り付けることもある。そうした"よくある操作"に対して回答を示してくれるのが『Ubiquity』だ。選択された文字列や表示されているURLに対して他のWebサービスを実行し、その結果を素早く手に入れることができる。Firefoxアドオンとして提供されており、ランチャー風に呼び出して利用する。

キーボードからサービスを呼び出す。translateは翻訳するコマンド

たとえば、文字列を選択した状態で翻訳すると、Webページ内部の文字がそのまま翻訳して埋め込まれる。その状態でGmailに移動して訳文を貼り付けた状態でメールを書くこともできる。コマンドはGmail/ Amazon/ YouTube/ブックマーク/ PDFのテキスト変換/ページ編集/検索/地図/ tinyurl/ twitterなど様々だ。

コマンド一覧。translateの説明文を翻訳し、日本語が埋め込まれている

新着のメールをUbiquityから手早くチェックしたり、選択した文字をTwitterに投稿したりと色々な活用法が考えられる。Webサービスを密に連携させ、活用できるソフトウェアだ。

いかがでしたか?

ランチャーというとローカルアプリケーションのイメージが強いが、よく使うリンク集の延長線上と考えるとWebサービスでも十分に利用することができる。むしろOSの垣根を越える分、Webブラウザのほうが便利に使えるだろう。

ブックマークから呼び出すだけでは不十分だ。もっと各サービスに踏み込んで、一回のアクションで必要なデータが得られれば不要なアクションや通信が減り、生産性が高くなる。さらにUbiquityのように各サービスをシームレスに連携させてしまう技術もある。

Webアプリケーションの活用が当たり前になりつつあるからこそ、その各サービスのデータをもっと柔軟に活用できると便利だ。Webサービス用ランチャーを活用して、もっと楽しいブラウジングを行ってみよう。

著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)

1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。