今回のテーマは「表計算/DBソフトのWebアプリ化」
ローカルアプリケーションからWebブラウザ上で使えるWebアプリケーションへ移行するケースが増えている。この傾向は不特定多数にサービスを提供するWebサイトはもちろん、基幹システムをはじめとする業務システムでも見られる。グループウェアは言うに及ばず、CRMや販売管理システムで導入されるケースも多い。
とはいえ、大きな幹になる基幹システムについてWeb化されたとしても、補助として使うツールには表計算ソフトウェアや簡易データベースアプリケーションが利用されているのが実情だ。すべてをシステム開発の対象とするのは、コストの割に成果が乏しい。
そこで必要になるのがWebアプリケーションの利用だ。表計算ソフトウェアやデータベースアプリケーションをWebアプリケーションに置き換えれば、データの一元化が進み、業務の効率化がいっそう進むだろう。そこで今回は、カスタマイズすることで"マイWebアプリ"も制作できるようなサービスやオープンソース・ソフトウェア(OSS)をご紹介したい。これらを使いこなせば、低コストで"表計算/DBソフトのWebアプリ化"が可能になるはずだ。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『Dabble DB』 表計算をベースにWebデータベース化
『Zoho Creator』 Webデータベースアプリケーションを作る
『Tuigwaa』 Seasarプロジェクト発のWebUDA(ユーザ主導型Webアプリ作成ツール)
『ZK Spreadsheet』 Excelファイルをそのまま使う
表計算をベースにWebデータベース化
名称 | Dabble DB |
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URL | http://dabbledb.com/ |
『Dabble DB』はオンラインのデータベースアプリケーションで、表計算のシートをベースにすることができる。取り込んだデータに対してフィルタリングを行い、その状態をビューとして保存。数字や文字列、日付としてデータを取り込むことができ、それぞれによってフィルタリングの内容が変わってくる。
ソート機能や計算式を埋め込んだカラムの作成、ピボットテーブル、集計などを利用することもできる。住所を指定すると、数字データを投影した地図の表示も行ってくれる。データはオンライン編集が可能で、全体のメンテナンスか、専用のフォームを作成して行うこともできる。
ほかにもレポーティング機能や他のユーザとの共同編集機能を搭載。データをイチから作っていくのもよいが、ある程度できあがっているデータを取り込むほうが効率的。データの一部を見せる・見せないといった操作をフィルタで実行するなど、データの新しい見方を提案してくれるツールとしても便利だ。
1ユーザ8ドルの有料プランか、登録データがすべて公開される無料プランがある。無料プランの場合は、公開されるとまずいデータを登録しないように注意してほしい。
Webデータベースアプリケーションを作る
名称 | Zoho Creator |
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URL | http://creator.zoho.com/ |
『Zoho Creator』は、表計算というよりもMicrosoft AccessのようなデータベースアプリケーションをWeb化したものになる。テーブルがベースにあり、そのデータを編集するためのフォームを作成する。フォームはテキストボックス、テキストエリア、ドロップダウン、日付、ファイルアップロードなど豊富に揃っており、ドラッグ&ドロップで設定できる。
プログラミングのようにしてさらに細かく制御できるスクリプト機能もある。どの操作もAjaxを使っており、画面遷移が少なく、手軽に操作できるようになっている。Zoho Creatorを使えば、簡易Webアプリケーションは簡単に作成できるようになるだろう。
実際、Zoho Creatorを使って作られたWebアプリケーションがマーケットプレイスに公開されている。プロジェクト管理やCRM、ヘルプデスクなど業務システムでよく使われるものが多数揃っている。これらは有料のものあるが大半は無料で、ワンクリックで自分のアカウントへインストールできる。そうしたサンプルを見るだけでもZoho Creatorの持つ可能性が高いことが感じられるはずだ。
社内でちょっとしたデータをAccessで管理しているようなものがあれば、Zoho Creatorへ移行してしまうことで、皆でどこからでも見られるようになって便利になるだろう。
Seasarプロジェクト発のWebUDA(ユーザ主導型Webアプリ作成ツール)
名称 | Tuigwaa |
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URL | http://tuigwaa.sandbox.seasar.org/ |
『Tuigwaa』は複数のテーブルを定義して関連づけ、データを蓄積したり参照したりすることができるオープンソース・ソフトウェアだ。すでに開発が終了し、新規開発は行われないことになっているが、それでも十分使えるソフトウェアだ。
定義したテーブルに対してデータの追加、編集、削除といった操作はもちろんのこと、複数行の一括編集、カスタムフォームを定義して編集することもできる。検索フォームの登録や、ロジックと呼ばれるトリガー機能を使い、何らかのアクションと連動して別のアクションを起こす機能も便利だろう。また、集計機能を備える。データを日々蓄積しておき、必要になった時点で閲覧するのに便利だ。
Tuigwaaが目指すのは「ボトムアップで企業の生産性向上を実現するためのツール」。実際、プログラマでないユーザであっても簡単にデータベースに連動したアプリケーションを作成、管理できるように仕上がっている。なお、Tomcat同梱版のTuigwaaも配布されており、設置すればすぐに利用できるくらい手軽だ。複数人、かつWebブラウザだけで使い始められるTuigwaaはとても便利なソフトウェアだ。
Excelファイルをそのまま使う
名称 | ZK Spreadsheet |
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URL | http://jp.zkoss.org/ |
色々なWebアプリケーションがあれど、個人であればMicrosoft Excelで十分と考える人は多いだろう。確かに簡易的なデータベースとしても利用でき、集計機能もあるなどとても優秀なソフトウェアだ。すでに使っているExcelファイルをWebアプリケーションに移行するのは面倒と感じてしまうなら『ZK Spreadsheet』を使ってみるとよい。
ZK SpreadsheetはExcelファイルをそのまま読み込んでWebブラウザから操作できるオープンソース・ソフトウェアだ。Ajaxを使い、操作性は良好。画像やグラフ(未確認)の表示もできる。既存の資産を、面倒な変換作業は不要でそのまま活かすことができる。Webブラウザからの編集はローカルのファイルに反映されるのと同様、ローカルからの編集はWebブラウザ側へ反映される(リアルタイムではない)。使い勝手の良い方法を利用できるのがメリットだ。
もちろん100%そのままではない。マクロは動かせないだろう。だが簡易的なデータ編集から、複数人での共同作業に移行するのにちょうどいいソフトウェアと言える。ZK Spreadsheet自体はライブラリとして提供されているので、これを基にして既存のシステムに組み込むこともできる。
いかがでしたか?
職場には表計算、データベースアプリケーションともに多数存在していることだろう。そうした既存の資産をそのまま使い続けるのも悪くないが、複数人での利用やコピーが把握しきれないほど存在していると、管理が煩雑になるという問題もある。その点、オンライン化すればデータは一元管理できる。
開発をともなわず、ユーザベースでツールを作成できればどうだろうか。WebアプリケーションはWebブラウザさえあれば動作するので、これまで以上にデータの蓄積ができるかもしれない。データベースへ蓄積されれば、基幹システムとの連携も容易にのぞめる。業務の効率化を進めるうえでは見逃せないだろう。
著者プロフィール:MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。