今回のテーマは「CMS」
CMSとはコンテンツ マネジメント システムの略で、Webサイトにおけるコンテンツ(内容)を制御するシステムのことだ。システム的に管理するので、HTMLを使って個々のページを作成するよりも簡単で、さらにアクセス制御や掲示板などのシステム的な機能も簡単に取り入れることができる。
ごく小規模なWebサイトであれば手作業での更新でもよいだろう。だが、ページ数が増えてきたり、利用者が増えたりすると更新頻度は高くなり、そのままでは運用できなくなる。そのような状態になってから導入すると、それまでのコンテンツの移行が煩雑になってしまう。Webサイトを運営するうえで、想定利用者数があるていど多いと思われるならば、あらかじめCMSを導入しておくほうがよいだろう。
今回はそんな「CMS」をテーマにWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介する。自社で導入したり、個人で自分のWebサイトを作る際に導入していただきたい。
今回紹介するWebアプリ・オープンソース
今回紹介するOSS・Webアプリ
『Pagety』 ASP型CMSはシンプルでわかりやすい
『CushyCMS』 コンテンツ配信はFTP経由の変わり種
『concrete5』 ユーザ画面をそのまま編集OK! 使い勝手バツグンのCMS
『bingo!CMS Core』 多彩なテンプレートでデザイン良しのサイト構築
ASP型CMSはシンプルでわかりやすい
名称 | Pagety |
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URL | http://pagety.com/ |
『Pagety』はオンラインで提供されるCMSだ。キャッチコピーとして「あなたはC(コンテンツ)を、私たちはMS(管理システム)を提供します」とある。オンラインでコンテンツを管理できるので、サイトの管理を行う必要もなく、手軽に利用できるのがメリットだ。
無料プランと有料プランに分かれており、ホスティングも含めて10ドル/月から120ドル/月までと、Webサイトの数やページ数、アップロードできるファイル容量などによって料金が異なっている。無料プランの場合は3ページまでで、アップロードできるサイズも5MBまでになる。
ページのレイアウトや、CSS/JavaScriptなどを個別で定義していく必要があるので、ほぼイチからサイトをすべて構築する感覚だ。そしてフォームを作成でき、その集計もオンライン上で可能になっている。ひとつのサイトをまるごと作成するというよりも、広告のランディングページなど、一定期間利用するかわりに数多く必要なページを作成するのに向いていそうだ。
ごくシンプルなCMSではあるが、その分わかりやすい。アンケートや勉強会の公募など、データを集積する際に便利そうなシステムだ。
コンテンツ配信はFTP経由の変わり種
名称 | CushyCMS |
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URL | http://www.cushycms.com/ |
『CushyCMS』の変わっている点は、CushyCMSがコンテンツの配信を行わない点だ。コンテンツの作成はCushyCMS上で行うのだが、その結果をFTPを通じて別途用意するWebサーバへアップロードするという形式をとっている。いわば、オンラインのHTML作成ツールと言えそうだ。
CushyCMSを利用する利点としては、テンプレートを使ったシステマチックなコンテンツ作成と、FTPがなくともインターネットにさえ接続していればどこからでも更新できる利便性だろう。さらにバージョン管理の機能があるので、間違った修正を差し戻せるのも便利だ。現状では日本語が利用できない点が残念ではあるが、その点は今後の改善に期待したい。
さらにユーザ管理機能を搭載しており、FTPの情報や使い方を知らなくても更新ができることや、PHPやPerlといったスクリプト言語やデータベースがなくてもCMSを利用できる点も魅力になるだろう。小規模なサイト向けのCMSではあるが、意外とその規模でも十分というサイトのほうが多い。静的なファイルで運用されているサイトであれば、CushyCMSへ乗り換える余地はありそうだ。
ユーザ画面をそのまま編集OK! 使い勝手バツグンのCMS
名称 | concrete5 |
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URL | http://www.concrete5.org/ |
一般的なCMSは、ユーザ画面と管理画面とに分かれて管理される。管理画面ではコンテンツを作成し、その結果がユーザ画面に反映されるようになっている。これが合理的ではあるのだが、管理画面での編集結果がどのようにユーザからは見えるのかは、実際にやってみないとわからない。その点においては使い勝手が悪いと言える(プレビュー機能を備えるタイプもあるが)。
『concrete5』はオープンソースのCMSで、ユーザ画面をそのまま編集することができる。項目はドラッグ&ドロップで並べ替えることもできるので、とても使い勝手が良い。まるでデスクトップアプリケーションのHTMLオーサリングツールを使っている感覚にすらなる。
項目はブロックと呼び、単なるHTMLのほかにYouTube、Googleマップ、ファイルダウンロード、スライドショーなど様々に存在する。もちろん自作することだってできる。デザインもテーマを切り替えることで、その場で一新させることができてしまう。
管理画面ではユーザ管理やアクセス解析、サイトマップ、フォームの登録内容などを確認するようになっている。いわばサイトのコンテンツとは一線を画したデータを管理する場所だ。PHP+MySQLで作られており、ウィザード形式でインストールできるなど、利用までのステップが容易なのもオススメできる点だ。相当に優秀なCMSなので、ぜひ一度触れてみてほしい。
多彩なテンプレートでデザイン良しのサイト構築
名称 | bingo!CMS Core |
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URL | http://www.bingo-cms.jp/ |
『bingo!CMS Core』もまた、見たまま編集できるという形式をとっているCMSだ。だがデータ自体の編集は専用のダイアログを介して行うようになっており、インラインではない。コンポーネントの追加や配置などについてはドラッグ&ドロップでできるので、HTMLに不慣れな人であっても容易に編集ができる。
多彩なテンプレートが利用でき、簡単にデザインの優れたWebサイトが構築可能。SEO対策もされているなど、企業での利用も十分に考慮されている。Ajaxを利用したり、YouTubeの動画を貼り付けたりするような操作もドラッグ&ドロップでこなせてしまう。
また、メールによる問い合せフォームやRSS配信などの機能を実装。簡単なWebサイトであればほぼプログラミングレスで実装できるだろう。なお、 bingo!CMS Coreは日本製のオープンソース・ソフトウェアであり、有償版も提供されている。サポート面などで心配がある場合は有料版の利用をオススメしたい。
いかがでしたか?
ブログエンジンの台頭によって、CMS専用のシステムは若干意義が薄くなってきているように感じていた。だが、ブログでは対応しきれないごく小規模なWebサイト作成や、ビジュアル的なデータ編集などまだまだ活躍できる範囲は多そうだ。
とくにこれまでのモジュール化され、デザインを含めてシステマチックな印象があったCMSが、柔軟にデザインを変更したり、コンテンツを見たまま修正したりできるようになっているなど、デザイン指向になってきているのが印象的だ。この傾向があればよりCMSを適用できるWebサイトは増えていくのではないだろうか。
今回紹介したもの意外にも様々なCMSが存在する。ぜひ自分の目的にあったものを探してみてほしい。
著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。