今回のテーマは「バックアップ」

転ばぬ先の杖とはよく言ったものだが、面倒なことはついつい後回しにしてしまう。そう、バックアップは面倒だ……。が、物はいつか必ず壊れる。それはコンピュータといえども同じことだ。特に最近のハードディスクは大容量化し、一昔前のように CDやDVDに移動させて空き領域を確保する必要もなくなってきている。そんな中、HDDが故障する。たいてい重要な会議の直前であったり、出かける前など狙いすましたかのように発生するのだ。

筆者の環境でもこれまでに数回はHDD故障のトラブルに見舞われている。一度は相当な量のデータが吹き飛んでしまった。それ以来、データはできるだけ二重化して保存するようにしている。そうしておけば、万が一データが消失した時や盗難にあった時でも何とか対応できるようになる。

今回はそんな"バックアップ"をテーマにWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェア(OSS)をご紹介したい。面倒な作業が発生するのではやる気もなくなってしまうだろうが、最近ではできるだけシンプルに、そして簡単に終われるものが多数登場している。

今回紹介するOSS・Webアプリ
iDrive』 2GBまで無料のバックアップ用ストレージ
BlogBackupr』 ブログ専用バックアップサービス
Synkron』 バックアップにも使えるマルチプラットフォーム対応同期ツール
Mathusalem』 多様なバックアップ先に対応したMac OSX向けソフトウェア



2GBまで無料のバックアップ用ストレージ

名称 iDrive
URL http://www.idrive.com/

iDrive』はオンラインストレージのサービスなのだが、バックアップ用に特化している点が特徴になっている。バックアップというと定期的に行なう作業が面倒でやらなくなってしまうものなのだが、iDriveは違う。専用クライアントソフトウェアを提供することで簡単にバックアップが行なえるようになっているのだ。

「iDrive」のWebサイト。アップロードしたファイルの一覧、ダウンロードができる

専用クライアントはWindowsおよびMac OS X向けに提供される。フォルダリストの中からバックアップしたいフォルダを選択するだけのカンタン操作だ。そしてスケジュールの設定をすれば自動的にバックアップが実行されるようになる。リストアも専用クライアントからできる。

Finderに似たインタフェースの専用クライアント。フォルダを選択してバックアップを行なう

そしてMac OS X向けにはiDriveをオンラインのストレージとして利用するためのFinder用プラグインも提供されている。これを使えば通常のバックアップとは別に、必要なファイルを随時オンライン上に保存できるようになる。基本容量は2GBまでだが、有料プランに切り替えることで数十GBまでデータを保存できるようになる。




ブログ専用バックアップサービス

名称 BlogBackupr
URL https://blogbackupr.com/

最近はWebアプリケーションの普及によって、バックアップという行為はローカルデータに限ったものではなくなっている。とくにブログ。単なる日記として使っている人もいるが、場合によってはメディアのひとつとして活用したり、個人的なメモ、プロジェクトに関する情報を蓄積したりと、テキストベースのデータベースとして広く使われている。

そんなブログだからこそ、万が一消失したときのリスクは大きい。ASPのサービスであれば、サービスが終了してしまったり、サービス内容が変更になったりしために乗り換えを余儀なくされるといったリスクもある。『BlogBackupr』はそんなブロガーの役に立つ、ブログ専用のバックアップWebサービスだ。

「BlogBackupr」のトップページ。ブログのURLとメールアドレスを登録するとパスワードが送信されてくる

BlogBackuprはほとんどのブログが発行しているフィードを使ってデータを取得、バックアップしてくれる。そのため、ブログに何かインストールする必要はない。どのようなブログエンジンでも利用することが可能だ。もちろんフィードは全文配信になっている必要がある。バックアップは毎日行なわれる。

バックアップを行なっているブログ。文字化けしているが、ダウンロードされるデータは問題ない

独自ドメインでブログを設置していても、サーバやデータベースが壊れるリスクは常にある。BlogBackuprを使えば万が一の時もデータを復旧できる可能性が高くなるだろう。




バックアップにも使えるマルチプラットフォーム対応同期ツール

名称 Synkron
URL http://synkron.sourceforge.net/

効率的なバックアップのコツは重要なファイルを一カ所、つまりひとつのフォルダに保存しておくことだ。そうしておけば、たとえば、フォルダ同期ツールを活用したバックアップも容易になる。

Synkron』はWindows / Mac OS X / Linuxで動作するソフトウェアだ。本来の目的から言えばフォルダ間の同期ソフトウェアなのだが、同期するフォルダの片方をバックアップ先と考えれば、バックアップソフトウェアとして十分活用できる。さらに複数のコンピュータ、プラットフォーム間でデータを同期するのも容易だ。

同期化終了。次回からは差分のみの処理で高速に行われるようになる

日本語化されており、使いやすい同期ソフトウェアになっている。複数の同期元を指定して一カ所にバックアップする機能や、フィルタリングを使った除外ファイル設定などを用意。バージョン管理機能が備わっているので、ファイルサーバへのバックアップ、同一OSまたはマルチプラットフォーム間でのバックアップを行なう際にはぜひ使ってみたい。

同期した日時に基づいて指定したリビジョンで復元が可能

なお、フォルダ間の同期ソフトウェアなので、ネットワーク越しにバックアップする場合は、別途マウントしておく必要がありそうだ。




多様なバックアップ先に対応したMac OS X向けソフトウェア

名称 Mathusalem
URL http://code.google.com/p/mathusalem/

バックアップと一言でいっても、人によってその手法や好みは分かれるところだろう。さらにバックアップ先についてもLAN内なのか、外部サーバなのかといった違いもある。そうしたさまざまなニーズに対応できるバックアップソフトウェアが『Mathusalem』だ。

バックアップ設定画面。多彩なバックアップ先を指定できる

MathusalemはMac OSX向けのオープンソース・ソフトウェアで、システム環境設定パネルとして動作する。指定したディレクトリ以下のファイルをローカルディスク、 iDisk、WebDAV、AFP、FTP、SFTPそしてAmazon S3のいずれかを指定して保存できる。

スケジュール設定。定期的にやログイン時など柔軟に設定ができる

保存ファイルの圧縮や自動スケジュールの設定が可能なほか、指定したディレクトリの除外設定も用意。Mathusalem上でログを確認し、そこから復旧させることもできる。Mac OS X 10.5にはTimesMatchinesというバックアップ機能があるが、簡単な分あまり柔軟に設定を変更することはできない。Mathusalemを使えばニーズに合わせたバックアップができるはずだ。

いかがでしたか?

一言でバックアップといってもさまざまな方法、内容が存在する。対象のファイルや使い方に応じて適した方法を選択してほしい。バックアップはHDDが壊れたときをはじめ、何らかの問題が発生したときに役立つものだ。そのため、普段はバックアップを意識することはない。

だが、コンピュータが壊れるときは突然やってくる。一部のデータが読み出せないだけでも、その復旧コストは相当なものになる。日々の心がけが重要とはいえ、常にバックアップのことを考えるのもまた難しい。今回紹介したWebアプリケーション、オープンソース・ソフトウェアを活用して自動化、自然と行なえるバックアップ体制を整えよう。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。