今回のテーマは「黒板、ホワイトボード」
一般的にコンピュータを使うのは文字入力のためが多い。メールやブログ、掲示板など、たいていが文字の入力が必要だ。キーボードで文字を打つのは簡単だが、制約もかなり多い。せっかくのコンピュータの広い空間が活かしきれていない。もっと自由に、もっと想像の羽を羽ばたかせて使えるべきだ。
リアルで言えばホワイトボードのような代物が良い。ただ真っ白な空間に、自由に文字やイラストが描ければ、これまでと違った新しい発想が出てくるかもしれない。ただ文字を羅列するだけでは難しい表現も、自由に使える空間があれば表現の幅も増えるだろう。
今回はそうした空間を自由に使えるWebアプリケーション・オープンソース・ソフトウェア(OSS)に注目してみよう。キーボードからの入力とはまた違うコミュニケーションが見いだせることだろう。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『こくばん.in』 懐かしいチョークの匂いまで感じられそう
『Twiddla』 遠隔ミーティングにも使えるWeb上のホワイトボード
『こくばん』 みんなで書き込める! Ajaxを使った黒板
『Souzou』 Wiimoteも使えるホワイトボードシステム
懐かしいチョークの匂いまで感じられそう
名称 | こくばん.in |
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URL | http://kokuban.in/ |
『こくばん.in』は最近事業化されたほど人気のあるWebサービスだ。学生の頃の懐かしい黒板が再現されており、各色のチョークを使って自由に絵を描くことができる。中には写実的とさえ言えるハイクオリティな作品も登録されており、単なるお遊びとは思えないほどだ。
個人で自由に落書きをすることも、お題に対して絵を投稿する「今日のお題」や皆で順番に落書きを仕上げていく「らくがきリレー」などWebならではの機能もある。描かれた絵に対して、コメントも黒板を使って返すというのが面白い。
描かれた作品は、その過程も記録されており、あとで再生することができる。深緑の板からはじまって、どう作品が仕上がっていくのか……ずっと見入ってしまうほど面白いWebサービスだ。
遠隔ミーティングにも使えるWeb上のホワイトボード
名称 | Twiddla |
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URL | http://www.twiddla.com/ |
ミーティングの基本となるホワイトボード。各自が自由に書き加えていって、議論を盛り上げることができる。リアルでは簡単なことが、ことネット上ではなかなか難しい。チャットだけでは自分が伝えたいと思っていることがうまく表現できないのだ。
そこで使ってみたいのがこの『Twiddla』だ。TwiddlaはWebベースのホワイトボードアプリケーション。吹き出しを付けたり、画像を配置したり、線を引いたりといった操作が簡単にできる。さらにチャットしながら議論を進めていくということも。
面白いのはWebサイトを取り込んで、そこにコメントを付けられる点だろう。遠隔地とのミーティングで(もちろんオフィス内であっても)、実際のWebサイトを見ながらあれこれと修正ポイントを挙げて議論できるのが良い。
ホワイトボードは便利な半面、そのデータの保存が若干面倒だった。だがTwiddlaを使えば元々デジタルデータなので保存、再利用も簡単だ。ぜひ一度ご覧いただきたい。
みんなで書き込める! Ajaxを使った黒板
名称 | こくばん |
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URL | http://blackboard.sourceforge.jp/ |
「こくばん.in」は表示にFlashを使ってるが、『こくばん』はAjaxを使って黒板を提供している。特に、コラボレートを重視しており、同時に複数人でひとつの黒板に対して落書きができるようになっている。コンセプトは同じであっても、機能の違いがこれだけの異なる結果を生み出すのは面白い。
他人の書いた内容はリアルタイムに自分の黒板に反映されていく。複数人で同時に編集すると、また違った面白さがある。チョークの太さを変えたり、色を変えたりすることはできないので、「こくばん.in」にくらべると機能が少ないのが残念ではある。
PHPで作られているので、自分のサイトに設置することもできるだろう。気の合う仲間や、レトロなサイトのポイントとして使ってみるのも面白そうだ。
Wiiリモコンも使えるホワイトボードシステム
名称 | Souzou |
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URL | http://sourceforge.net/projects/souzou/ |
ホワイトボードを使ってミーティングを行なった後、そのデータの保存はどのようにしているだろうか。最近ではプリンタ連動のもの、メモリカードに保存できるものなどがある。ただ、操作が面倒だったり、高価だったりする。そのため、ホワイトボードの書き込みをデジタルカメラで撮影しているケースも多いだろう。
その点、元々コンピュータにデータを入れてしまえば再利用も簡単だ。『Souzou』はまさにそのためのツール。起動すると画面全体が真っ黒になり、マウスを使って線を描くことができる。線の色や太さ、背景色などは自分の好きなように変更できる。
元々「Wiimote」(Wiiリモコン)を使って描画することを想定している。設定すれば、空間で棒を動かすだけで絵が描けるようになるはずだ。できあがったデータはSVGやPNG形式で保存できるので、再利用や配布も容易だろう。Wiimoteがなくても便利に使えるし、タブレットPCでも活躍しそうなソフトウェアだ。
いかがでしたか?
ホワイトボードや黒板は、コンピュータの画面と違って創造性を働かせるのに向いている。だが、データの再利用性は悪い。その欠点を補いつつ、アナログツールらしさを感じさせてくれるツールが、今回紹介したものたちだ。高機能な画像編集ソフトウェアや、ペイントソフトウェアはすでに存在しているが、それらとは違う、アナログな雰囲気を残しているのが魅力のひとつだ。
文字の記述とはまた違う、コミュニケーションやアイディアの創出が期待できそうだ。遠隔地とのミーティングの際にはもちろん、記録を残しておくうえでも便利に使えるだろう。コンピュータの前で悶々と考えるよりも、真っ白な画面上に手を動かしながらイメージを描いてみると問題がうまく整理でき、解決できることもある。ミーティング、アイディア整理、マインドマップなどさまざまな場面で利用できそうだ。
著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。