今回のテーマは「プロジェクト管理」

IT系におけるプロジェクト管理といっても、その内容は大きく分けてふたつある。ひとつは開発会社にとってのプロジェクト管理で、これは顧客にシステムを納品するところまでで完結する。だが顧客にとってのプロジェクト管理とはサービスをローンチするところからがスタート。さらに日々運用、改善を重ねていき、その先にある成功を収めるところまでがプロジェクト管理だ。

ほかにもチーム体制によって管理する項目は異なったり、システム形態によっても変わったりしてくる。ごく小規模なプロジェクトであれば、個人の頭の中に収まってしまうかもしれないし、大規模なものになれば進捗の管理やレポーティングなどさまざまな機能が必要になる。

今回はそんな多様な見方、要素が存在する「プロジェクト管理」に注目してお届けしたい。ひとくちにプロジェクト管理といっても、立場や関わり方によって必要なものは異なってくる。ぜひ自分たちにあったプロジェクト管理システムを見つけて、活用してほしい。

今回紹介するOSS・Webアプリ
PlanHQ』 スタートアップ企業向けの事業計画管理システム
Liquid Planner』 Webベースのガントチャートを描けるプロジェクト管理
Longhouse』 Google Codeクローンを目指すプロジェクト管理
9arrows』 日本製のかっこいいプロジェクト管理システム



スタートアップ企業向けの事業計画管理システム

名称 PlanHQ
URL http://www.planhq.com/

Webに限らないが、何らかの製品やサービスを提供することを目的としたプロジェクトにおいて、その管理とはシステムや製品単体だけに限らない。販売方法や会計、さらに資金調達などさらに広い範囲でのプロジェクト管理が必要とされる。

PlanHQ』はそんな事業計画を管理するためのWebサービスだ。30日間のフリートライアルはあるが、基本的にすべて有料のプランになっている。ゴールを設定し、そこに向けてやるべきアクションを設定し、さらに他の人を巻き込んで共有したりすることができる。

「PlanHQ」のトップページ。ビジネスプランを育むためのシステムだ

おもにスタートアップ企業向けになるが、事業もひとつのプロジェクトと言えるだろう。PlanHQを使って広く管理、さらに他の人の意見も取り込んでいけば事業がスムーズに展開できるようになるかもしれない。

ゴールを設定し、その目標に向かってドリルダウン、タスクを設定していく




Webベースのガントチャートを描けるプロジェクト管理

名称 Liquid Planner
URL http://www.liquidplanner.com/

Liquid Planner』は、いわば開発会社などに向いたプロジェクト管理システムだ。タスクを登録し、ガントチャートが生成され、他のユーザと共有することができる。タスクにはコメントを付けてディスカッションしたり、添付ファイルやリンクを加えたりすることが可能だ。

「Liquid Planner」のトップページ。きれいなガントチャートが描ける

まるでローカルアプリケーションのようにデザイン性が優れたインタフェース、そしてAjaxを使ったスムーズな操作性が魅力だ。複数のプロジェクトを登録して個別にステータスを管理したり、他の人との共同作業の状況を適切に管理したりすることができるだろう。

タスク一覧。タスクをダブルクリックすると編集画面になるなど、ローカルアプリケーションのような使い勝手

頭の中でタスクを管理する人もいるが、日々の業務に忙殺されるとついつい忘れてしまうことがある。一度書き出しておくだけで、作業内容を忘れずに済み、チームのメンバーにも迷惑をかけないようになる。小規模なプロジェクト管理にぴったりのWebアプリケーションだ。




Google Codeクローンを目指すプロジェクト管理

名称 Longhouse
URL http://code.google.com/p/longhouse/

最近、オープンソースのプロジェクト管理サイトが増えてきている。昔は「SourceForge」が有名だったが、今は「GitHub」や「Google Code」で公開されるオープンソース・ソフトウェアも多い。どちらも特に多機能というわけではないが、最低限の機能は備えており、かつ手軽に使えるという点において他のプロジェクト管理システムよりも優れている。

Longhouse』はそんなGoogle Codeを模したオープンソース・ソフトウェアだ。プロジェクト管理とはいっても、マイルストーンやスケジュール管理などの機能はないので、ごく小さなプロジェクト向きと言えそうだ。課題の管理、Wiki、ソース管理といった機能を備えている。

プロジェクトトップページ。Google Code風のインタフェースだ

社内で小さなプロジェクトチームを作り、さまざまな課題に取り組むような仕組みをLonghouse上で管理すると面白いかもしれない。ソフトウェアの開発のみならず、小さな業務改善プロジェクトなど、多くのシーンで利用できそうなソフトウェアだ。

システムのトップページ。シンプルでやはりGoogle Codeに似せて作られている




日本製のかっこいいプロジェクト管理システム

名称 9arrows
URL http://9arrows.com/

9arrows』は、プロジェクトマネジメントの手法であるWBS(Work Breakdown Structure)を使ったタスク積み上げ型のプロジェクト管理システムだ。イベントやマイルストーンを追加でき、きれいなガントチャートも表示できるようになっている。日本製のオープンソース・ソフトウェアで、日本語の扱いは問題ない。システムはRuby on Rails製だ。

WBSの画面。プロジェクト作成時にテンプレートからタスクを自動生成できる

プロジェクト作成時にWeb製作系、システム開発系といった指定をすることで、タスクのひな形を作ってくれる機能が便利だ。プロジェクトは複数管理が可能で、タブを使って切り替えることができる。Ajaxを使ったスムーズな操作、見栄えがよく分かりやすいデザインが魅力だ。

ガントチャート。イベントやマイルストーンも合わせて一覧できる

さらにAdobe AIRを使った専用クライアントが提供されている。これを使えばオフラインでもデータを閲覧できて便利だ。数多くの機能と、それを重たく感じさせないデザインが合わさった、魅力的なソフトウェアだ。

いかがでしたか?

プロジェクト管理といっても、種類は実にさまざま。ぜひ立場や必要な機能に応じて使い分けてみてほしい。特に、チーム体制や開発規模によって管理項目は異なるので、小規模な開発であれば、項目が少なく、手軽に使えるプロジェクト管理の導入を検討するとよいだろう。

プロジェクト管理はシステムを管理、運用するのが目的ではない。プロジェクト全体のスムーズな進捗チェック、必要な機能がそろっているかの検証などに利用するものだ。自社はもちろん、クライアント向けの開発についても適切な管理、運用を目指して規模に合わせたプロジェクト管理システムを利用してほしい。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。