今回のテーマは「オンラインストレージ」
10年くらい前は、HDD容量が1GBに満たないことなんて当たり前だった。HDD自体の単価も高かった。それがいまや、単価は年々下がり続け、大容量化が進んでいる。いまでは1TBなんて数字もよく聞かれるようになってきた。扱うデータのサイズが大きくなるにつれ、大容量化へのニーズはどんどん高まっている。動画なら数百MBは当たり前。写真だって大量に集まればかなりのサイズになる。いくらHDDの容量があっても、多数のメディアファイルを持っていたら、あっという間に容量が足りなくなってしまうだろう。
そんな大きなサイズのデータを相手に渡す場合、電子メールに添付するのは辛い。USBメモリや外付けのHDDを経由させるという手もあるが、そのためにはお互いが実際に会ったり、郵送したり手間がかかる。そこで使いたいのは"オンラインストレージサービス"。大きさなサイズのデータでも効率よく渡すことが可能だ。日本、海外ともに各種サービスが存在するが、どちらかと言えば海外のもののほうがシンプルで、かつ容量が大きなものが多いようだ。今回はそんな大容量データを上手に管理できるオンラインストレージに注目してお送りしたい。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『Amazon S3』 容量無制限かつ安いストレージといえば
『File Savr』 簡単にアップロード&共有を実現
『OFFSystem』 P2Pを使って分散バックアップ
『The Drag & Drop.io』 Firefoxにドラッグ&ドロップでアップロード
容量無制限かつ安いストレージといえば
名称 | Amazon S3 |
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URL | http://aws.amazon.com/s3 |
オンラインのストレージサービスとして有名な『Amazon S3』をまず紹介したい。利用するにはアカウント登録が必要なほか、有料となっているのだが、外部にバックアップサーバを借りたり、バックアップ用に外付けのHDDを購入したりするよりも安価で済む可能性が高い。セキュリティ面で言えば、個人で管理しているサーバよりもAmazonのほうがよっぽども信頼性が高いだろう。
料金は1GBあたり0.15USドル(約16円)。そして1GBあたりのデータ転送料が、アップロードで0.1USドル(約11円)、ダウンロードで0.17USドル(約18円、ダウンロードは転送料が増えると単価が減る)。そしてリストやゲットなどのコマンドによって0.01USドル/1,000リクエストまたは0.01USドル/10,000リクエストが課金される。
Amazon S3をバックアップ目的で利用している場合、ダウンロードの転送はさほど発生しないだろう。たとえば、30GBのデータを保存しても7.5USドルだ(約810円、転送料含む)。ごく安く信頼性の高いストレージが手に入るようになる。データに対する外部からのアクセス制限を設定することが可能で、アップロードしたファイルを指定したユーザーにだけ渡すこともできる。
Amazon S3はWeb APIのみを提供しており、一般ユーザにとって使いやすいインタフェースは提供されていない。だが、「Cyberduck」(FTPクライアント)、「s3fs」(ファイルシステムとしてマウントする)、「S3 Browser」(専用クライアント)、「JetS3t」「S3Hub」「S3 Backup」などさまざまなAmazon S3の活用ソフトが登場している。これらを使うのも手だろう。一般的なバックアップサービスと比較、検討してみよう。
簡単にアップロード&共有を実現
名称 | File Savr |
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URL | http://www.filesavr.com/ |
最近はオンラインストレージサービスでも、ユーザ登録不要で使えるものが増えてきている。『File Savr』もそのひとつ。今後はユーザ登録制に移行する予定はあるようだが、現状はとくに登録の必要もなく利用できるようになっている。アップロードできるファイルは10GBまでとなっている。
インタフェースは実にシンプルで、ファイルアップロードボックスがひとつという構成。ファイルを指定してアップロードすると、そのファイルをダウンロードできる画面に移動する。あとはそのURLを友人に教えれば、ファイルの受け渡しができるという手軽さだ。
File Savrはとにかくシンプルであることを目標にしている。他のサービスのようにダウンロードまでのタイマーがあったり、ポップアップ広告があったり、ユーザ登録を強制したりすることはない。ただひたすらにシンプルで分かりやすく、使い勝手のよいオンラインストレージを目指している。
ただし、他のユーザのアクセスを許可/拒否するような仕組みはない。そのため、重要なファイルに関してはアップロードするのは控えたほうがよさそうだ。今後はもしかするとパスワードロックのような仕組みができるかもしれない。機能強化も楽しみなWebサービスだ。
P2Pを使って分散バックアップ
名称 | OFFSystem |
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URL | http://offsystem.sourceforge.net/ |
『OFFSystem』の名称は、Owner Free Filesystemの略字をとっている。その名のとおり、オーナーがいない、自由なファイルシステムだ。各自ファイルをアップロード、ダウンロードすることが可能で、各ファイルは各ノードに対して分散化して保存される。分散化することによって、断片単位では所有者、著作権がないということからオーナーフリーと名付けているそうだ。
もちろん、断片化したファイルを集めた元ファイルについてはオーナーが存在する。従ってオーナーはダウンロードできるユーザを指定することができる。ファイルサーバを立てるといった一極集中型のファイル管理は、コストとリスク面において不利になることもある。P2Pを使えば各マシンが共同でデータを管理し、データをレプリケーションすることでひとつのマシンが壊れたときのリスクを分散化することができる。
OFFSystemの設定ではアップロード/ダウンロード速度を設定することが可能。P2Pというと印象のよくない話題が多いが、それは優れた技術であるゆえ、いい面にも悪い面にも転用ができるということでもある。複数台のクライアントマシンで構成すれば手軽なバックアップシステムになるはずだ。
Firefoxにドラッグ&ドロップでアップロード
名称 | The Drag & Drop.io |
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URL | http://static.drop.io/howto/dragdrop/ |
オンラインファイルストレージサービスの最大の欠点は、"ファイルアップロードが面倒"という点ではないだろうか。Webサイトにアクセスし、ファイルを選び、アップロードし、そして完了する。ここまでのステップがもっと単純化されれば、利用促進にもつながるかもしれない。
そんな希望を叶えてくれるのが『The Drag & Drop.io』だ。これはシンプルなオンラインストレージサービス「Drop.io」が提供しているFirefoxアドオン。インストールするとブラウザの右下に赤い丸が表示されるようになる。ここにファイルをドラッグ&ドロップすると自動的にアップロードが開始される。
ファイルのアップロードが完了したら設定画面が表示されるので、そのURLを相手に通知すればよい。ファイルを渡したい、と思った時にすぐに作業できるのが魅力だ。Drop.ioもFile Savrと同様にファイルを指定するだけというシンプルなオンラインストレージサービスだが、パスワードロック機能を備えるなど若干機能が多い。ファイルの授受が多い方にオススメのソフトウェアだ。
いかがでしたか?
オンラインのストレージサービスはファイルの授受はもちろん、バックアップにも利用できる。無料で使える容量も増加傾向にあるが、セキュリティ面や継続性で不安がある場合は、有料サービスを選ぶほうがよいだろう。どちらを選ぶかは、利用するデータの質や目的によって変えればよい。
ネットワークが高速化されているので、オンラインのストレージをイントラネットのファイルサーバ並に利用することも夢ではなくなった。サーバ本体やそれを管理・運営するコスト、メンテナンス費用を考えるとオンラインのほうが安い場合もあるだろう。ぜひ色々なサービスを試し、検討してほしい。
著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。