今回のテーマは「Webサイト作成」
インターネットには、Google/Yahoo!/Amazonなどの超大規模なWebサービスがある。しかし、その一方、インターネットサイトの大部分を占めるのは小規模から中規模のWebサービスではないだろうか。実際、日々数多くのWebサービスが開始され、また消滅している。そうしたサイトはどれも最初は小規模であり、その中からYouTubeやTwitterのように大きなトラフィックを集めるサイトが生まれていく。
今回はそんな、中・小規模のWebサイトの構築に便利なWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェア(OSS)を紹介していきたい。大規模なサービスを構築するのとは異なり、より身近に感じられるのは間違いない。また、実際に自分たちでWebサービスを立ち上げる際にも利用できる場合が多そうだ。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『LaunchSplash』 Coming Soonページを作成する
『YikeSite』 Webサービスの静的コンテンツ向けCMS
『ねこすけLPO』 ランディングページを最適化
『SkyBlueCanvas』 DB不要で使えるCMS
間もなくローンチするサービス向け
名称 | LaunchSplash |
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URL | http://www.launchsplash.com/home |
新しいWebサービスを立ち上げる際、まだ公開できるものがない場合でも作成できるものがある。それはComing Soon(予告ページ)だ。そうやって旗を立てることで注目を集めたり、ユーザの期待感を高めたりすることができる。だが、ただ文字で書いてあるだけではダメだ。たとえば、公開や開発状況を知らせるためにメールアドレスを登録してもらったり、RSSフィードを登録してもらったりして、ユーザをつなぎ止めておく工夫が欠かせない。
その手の仕組みを一手に提供してくれるのが『LaunchSplash』だ。メールアドレスを登録するためのフォーム、RSSフィードの配信、各種テーマ、自由に変更できる文言などが提供されている。フリーで利用できるのは限られたテーマだが、有料の場合は数多くのパターンから作成できるようになる。
作成時には「comingsoooon.com」に対するサブドメインが提供される。リリースされたらリダイレクト設定すれば、初期ユーザ(とくに興味を持ってくれているユーザ)を取り逃がすことなくローンチができるようになる。自社であまり数多くのサービスを提供することはないだろうが、Web制作会社などでは便利に使えそうなWebサービスだ。
Webサービス提供画面以外のコンテンツを作成する
名称 | YikeSite |
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URL | http://yikesite.com/ |
Webサービスを立ち上げるにあたって、サービス提供画面のほかにも必要なものがある。たとえば「プライバシーについて」「サービス提供会社の説明」「価格表」などだ。これらはサービス側にくらべると静的なシステムで、あまり更新頻度は高くない。また、双方向性のデータ授受は起こらない。
そうしたところをシステムとして組むか否かは大事な選択だ。静的なファイルを作成して提供する場合もあるだろうが、担当者レベルで変更できるようにするには簡易的なCMSのほうがよいだろう。『YikeSite』はまさにそうした目的のためのサービスを提供している。
YikeSiteはブログの画面に近く、エントリーではなくページを作成する機能だけを提供している。ログインしていれば、画面上で編集ができ、その場ですぐに反映させられる。サブページの機能があり、ページを階層的に管理できるようになっている。
モジュール機能を使ってサイトマップを作ることもできる。デザインはHTMLレベル、またはCSSで自由に変更できる。アクセス解析機能を備えているので、Webサービス側とは異なる機能にどういったユーザがアクセスしているのかを分析することが可能だ。
簡易的なWebサイトを立ち上げる際にも利用できるし、Webサービスのみならずソフトウェア開発や何かのプロジェクトサイトとしても利用できるだろう。
ランディングページを最適化、コンバージョンを測定する
名称 | ねこすけLPO |
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URL | http://lpo.necosuke.jp/ |
LPOとはランディング ページ オプティマイズの略だ。ランディングページとは、検索エンジンやクリック課金型広告からたどり着いたページのことになる。この最初にたどり着いたページを最適化することで、より高い成果を得られるようになる。
たとえば同じ不動産のページであっても、東京+不動産で検索してきた場合と、大阪+不動産で検索してきた場合とでは、見たい物件情報は異なってくるはずだ。そういった各キーワードにページを作成してもよいが、『ねこすけLPO』を使えば、同じページであってもコンテンツを柔軟に差し替えることができるようになる。
ねこすけLPOではJavaScriptのタグを埋め込むことによって、ランディングページのリファラーにある検索キーワードごとに最適化されたページを生成できる。コンバージョンページにもタグを埋め込むことで、成果を測定することや、ランディングページを複数作成して、それらの違いによってコンバージョンがどれくらい変わるのかを測定することもできる。
ネット広告では費用対効果が細かく求められる。そしてその内容に応じて、随時コンテンツを切り替えていくことで、より高い成果を得られるようになる。ねこすけLPOを使えば、そうしたコンテンツの微調整が容易になるはずだ。
DB不要で使える高機能CMS
名称 | SkyBlueCanvas |
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URL | http://www.skybluecanvas.com/ |
コンテンツを柔軟に管理しようと思ったときに利用するのがCMS(Content Management System)だ。日本ではXoopsやDrupal、Ploneなどを使うことが多い。また最近ではブログシステムをCMSとして利用することも多い。それらは往々にしてデータベースが必須になっている。だが要件的にそこまでの規模ではなく、データベースサービスを用意できないこともあるだろう。
『SkyBlueCanvas』はまさにそうした場合にぴったりのオープンソース・ソフトウェア。データベースが不要でライトな作りになっている点が売りだ。XMLを使ってデータを管理し、ページ管理、WYSIWYGエディタ/スキン/プラグイン/検索エンジン向けURL生成/フィード配信といった機能がある。
すでにプラグインは多数存在している。リンク集/イベント/FAQ/投票/ニュースといったコンテンツも簡単に作成できる。こうしたプラグインを上手に使えば、手軽に十分な機能を持ったWebサイトが構築できるはずだ。
システムは、立ち上げるWebサービスの規模によって最適なものを選択すべきだ。大は小を兼ねるが、最適とは限らない。小規模なサービスを立ち上げるなら、SkyBlueCanvasのほうが手軽で便利なこともあるだろう。
いかがでしたか?
今回はWebサイトの構築を小・中規模のものにフォーカスを絞ってお送りした。単なるCMSに限らず、一時的なWebサイトやWebサービスとは異なるコンテンツを提供するものなど、ニッチなニーズは数多く存在する。こうしたニーズを組み上げていけば、まだまだ異なる需要がありそうだ。
サイトを構築する際には、それぞれ適したシステムを選定すべきだ。大規模なシステムではアーキテクチャから細かく分析されるが、小規模ではそうした分析はおざなりになる。だが、ニーズに特化したサービスを利用することで最適なシステムを用意することができるはずだ。
著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。