今回のテーマは「アクセス解析」

自分の(または自社の)Webサービスにどういった属性の人たちが、いつアクセスしているのかを知るのはとても大事なことだ。それによってサービスの改善や、方針の変更を行ない、より良いサービスを目指すことができる。リアルな店舗では来客者の動向調査やPOSシステムの分析などが役に立つ。それに相応するのが"Webアクセス解析"だ。

アクセス解析は大枠で3つのパターンがある。一つはJavaScriptや画像のタグを埋め込むもの、二つ目はアクセスログを解析するもの、そして最後はパケットを解析するものだ。Webアプリケーションとして提供されているものについては、パケットを解析するのが難しいため、JavaScriptタグを埋め込むものが多い。アクセスログを解析するものは社内の解析サーバやローカルPC内での解析が多い。

今回はアクセス解析をテーマとしてお送りしたい。単なるログを見せるだけに限らず、世の中にはさまざまなユーザ動向を知るためのツールが存在する。これらのツールを使いこなせば、今までにないユーザ属性、利用法がわかってくるはずだ。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Clicky』 アクセス解析2.0
Piwik』 Google Analyticsの代替えを目指す
Mogura』 日本製のフリーのアクセス解析ソフトウェア
ClickHeat』 ヒートマップ作成ソフトウェア



4つの便利機能がオススメのアクセス解析

名称 Clicky
URL http://getclicky.com/

『Clicky』はJavaScriptを埋め込む形で提供されるアクセス解析Webアプリケーションだ。それだけであれば競合するサービスは多数にあるだろう。オススメなのは、以下の4つの機能があるからだ。

「Clicky」のトップページ。利用はユーザ登録が必要

一つ目はSpy機能だ。これはDiggSpyなどでおなじみの機能で、追加されていくデータをリアルタイムに見ることができる機能だ。刻々と変化していく様子を見られるのは面白い。二つ目は外部への流出先URLを追える機能だ。内部へとどめたい場合、予期せぬ流出を避けることができるようになる。

「Clicky」のダッシュボード。主立ったデータが一覧できる

三つ目はRSSフィードの配信機能だ。主立ったデータがRSS配信に対応しており、これを登録しておけば、都度Clickyにアクセスしなくてもデータが見られるので便利だ。そして最後の四つ目はWeb APIになる。ほとんどのデータがXMLやJSON、PHPの形式で取得できる。これをうまく使えば自社のサービスと合わせたり、自動でアラートしたりといった使い方ができるようになる。

Spy機能。データが次々と流れていく

もちろん、アクセス数やユーザの属性など通常のアクセス解析で必要なデータは取得できる。なお、現状では日本語を含むURL(検索キーワードやWikipediaなど)が文字化けするので注意が必要だ。




多彩なデータとグラフが魅力のアクセス解析

名称 Piwik
URL http://piwik.org/

無料で使える有名なアクセス解析サービスにGoogle Analyticsが挙げられる。元々Urchinという商用のWebアクセス解析ソフトウェアだったものをGoogleが買収し、無料サービスとして提供しているものだ。商用ならではの見やすさ、多機能さで利用者が多いサービスだ。

だが、アクセス解析のデータがGoogle側にあることに懸念を覚える人も多い。企業内でのサービスでなおさら心配だろう。そこで使ってみたいのが『Piwik』だ。これはGoogle Analyticsのオープンソース代替えを標榜するソフトウェアで、確かに見た目のわかりやすさ、デザインの良さ、そして多数のグラフなど使い勝手の良い仕上がりなっている。

「Piwik」のダッシュボード。すっきりとした見やすい画面構成

主なデータを一覧できるダッシュボード、Ajaxを使ったページネーション、Open Flash Chartを使ったグラフなど、多数の機能が揃っている。キャンペーン設置機能もあり、これを活用すれば流入元からの結果測定にも利用できる。

グラフ。Open Flash Chartsを使って生成された見やすいグラフだ

Google Analyticsにはない機能として、Web APIが提供されている点も見逃せない。JSONやCSV、XMLなどでデータが取得できるのでレポーティングに使ったり、他のシステムと組み合わせたりといった用途に役立てることができる。

OS/ブラウザの比率を円グラフにしたもの。これも見やすい表示だ




モバイルにも対応したフリーのアクセス解析

名称 Mogura
URL http://fmono.sub.jp/v_mogura/

こちらはオープンソースという訳ではなく、フリーウェアなのでご注意いただきたい(ソースは公開されている)。『Mogura』の利点は何と言ってもモバイルのアクセス解析にも対応している点だろう。OSの種別の際に、Windows/Mac OSX/Linuxなどに加えてDoCoMo、au、vodafone(開発は2006年で停止している)といった携帯の名称や機種も表示してくれる。

ブラウザの比率。一覧が見やすい

Webアプリケーション型のアクセス解析サービスではJavaScriptの埋め込みのみで、携帯電話への対応が弱いことが多い。日本の携帯電話への対応となればなおさらだ。MoguraはPCはもちろん、携帯電話もサポートしているので、双方に対応したサービスを立ち上げた時にはきっと便利に使えるはずだ。

携帯の機種ごとにも一覧が出る

機能は豊富だが、見た目はシンプルになっているので使いやすいだろう。開発が停止してしまっているのが残念ではあるが、フォーラムなどはいまなお活発なので、利用してみてはいかがだろう。

検索キーワードの一覧。アクセス解析として必要な機能は網羅されている




どこをクリックした? ヒートマップでさらにユーザを知る

名称 ClickHeat
URL http://www.labsmedia.com/clickheat/

ヒートマップとはWebページ内におけるクリック回数が多い場所をグラフィカルに表現したグラフだ。サーモグラフィのように、クリック回数が多い場所がとくに赤く表示される。これによりユーザを意図したとおりに誘導できているかどうかがわかってくる。

そんなヒートマップを作成できるオープンソース・ソフトウェアが『ClickHeat』だ。サーバに設置後、指定されたJavaScriptタグを埋め込めば測定が開始される。あとはしばらく待ってユーザのクリックデータが溜まってきたらヒートマップが見られるようになる。

MOONGIFTで試したヒートマップのサンプル

Webサイトの上にレイヤーを重ねる形でヒートマップが表示されるので、実際にどこがクリックされているのがひと目でわかるようになっている。リンクになっていない部分がクリックされていたり、予期せぬ場所がクリックされているとしたら、改善の余地があるだろう。

埋め込むJavaScriptコードなどの設定画面

通常のアクセス解析では結果を一覧したり、フィルタリングしたりすることでしか判断できない。だがClickHeatを使えばさらにユーザの視点でサービスを見られるようになる。常に計測が必要なわけではないが、定期的に観測するのに使ってみてほしいソフトウェアだ。

いかがでしたか?

アクセス解析を使えばサービスを使ってくれているユーザをさらに知ることができる。その中には予想と違う動きや、流出なども見られることだろう。大事なのはそれらを踏まえたうえで、どう改善していくかを判断することだ。

取得できるデータが多岐に渡るため混乱してしまう可能性もある。それらの情報をうまくフィルタリングし、自分たちのサービスのコンセプトに合うデータをさらに磨きあげて成長につなげてほしい。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。