今回のテーマは「Eコマース」

おそらく皆さん一度はインターネット上で何かを購入した経験があるだろう。自社でEコマースサイトを立ち上げて運営されている方もいるかもしれない。クレジットカードの普及や、物流システムの向上もあって、通常店舗で物を探すよりもインターネットで購入したほうが手軽で便利になっている。

Eコマースサイトで有名なものといえば、Amazon、eBay、楽天、Yahoo!などが挙げられるが、本連載ではもちろんそうした大手は取り上げない。大手が君臨するEコマース分野で、小さいながらも、新しい取り組みやアイディアに溢れる面白い仕組みを持ったWebアプリケーション、サービスに注目していきたい。

今回紹介するOSS・Webアプリ
Market Lodge』 Facebook向けショッピングアプリケーション
Shopify』 2分ではじめられるEコマースサービス
SubstructRuby on Rails製のEコマースシステム
PrestaShop』 PHP+MySQLのクールなEコマースシステム



Facebookを利用して"信頼"をウリに

名称 Market Lodge
URL http://www.themarketlodge.com/

物を購入するにあたって、ひとつの基準になるのが他人の評価だ。例えば検索を使って他人の批評を見たり、レビューサイトでの各ユーザの評価を見たりして購入を判断するだろう。そして、その際に相手の信頼度も重要になる。信頼している相手の評判はすんなりと聞けるが、誰だかわからない人や信頼していない人の判断はうがった見方をしてしまう。

そこに目をつけたのが『Market Lodge』だ。これは今もっとも勢いのあるSNSであるFacebook上で動作するアプリケーションだ。Market Lodgeをインストールすると、自分の推薦する商品だけを登録したショッピングサイトが作成できるようになる。

「Market Lodge」のトップページ。利用にはFacebookのアカウントが必要

ここで紹介するのは自分が勧める商品だけなので、それを見たあなたの友達は、あなたの評価を信頼して購入することができる。商品が売れた場合は、10%がコミッションとして支払われる。

サンプル商品。商品は1,200点を超える中から選択できる

商品数はまだ多くないが、今後増加していくだろう。知り合いが勧めていると安心して買える、という仕組みをうまく利用したシステムだ。




手軽なEコマースサイト作成サービス

名称 Shopify
URL http://www.shopify.com/

『Shopify』は誰でも簡単にEコマースショップを開設できるWebサービスだ。例えば楽天やYahoo!などのEコマースモールサービスに出店する場合、その料金体系やすべきことの多さを辟易してしまうだろう。とても個人レベルでは難しい。そうしたときにShopifyはごく手軽に商品の販売をはじめられる。

「Shopify」のトップページ。簡単なユーザ登録だけですぐに利用開始できる

Shopifyはいくつかの料金体系に分かれているが、トライアルであれば5回の注文まで無料で利用できる。次のステップになっても、$24/月の基本料と2.0%のトランザクションフィーで利用できる。いずれのプランであっても初期費用は必要ない。

「Shopify」で構築されているショップのサンプル

支払はクレジットカードやPaypal、Google Checkoutが利用できるようになっている。さまざまなサービスにおいて個人に注目が集まっている今、個人間での売買インタフェースとしてShopifyは要注目だろう。




海外販売にも対応したRuby on Rails製のEコマースシステム

名称 Substruct
URL http://code.google.com/p/substruct/

Eコマースを成功させる秘訣は何だろうか。それはオンラインのシステムではなく、物流や決済方法、マーケティングなどによるところが大きい。そしてオンラインのシステム自体、スクラッチで開発されたものであっても、パッケージやオープンソースであっても目を見張るほどの差は感じられないのが実情だ。むしろオープンソースの場合は新しいテクノロジーや試みが数多くなされ、時代に合わせてどんどん進化している。

『Substruct』はRuby on Railsで作られたEコマースシステムだ。上品な画面構成と使い勝手のよいシンプルなデザインが特徴だ。注文、商品、ユーザ管理といった基本的な機能はもちろん、プロモーション、ユーザからの質問管理、ファイルやコンテンツ管理機能がある。ブログ機能による店長日記的なコンテンツを作成することも可能だ。

商品画面。AjaxやJavaScriptを使って格好よく表示される

配送料は海外発送にも対応しているし、Paypalやクレジットカード決済も利用できる。日本だけを見ずに海外発送も考えるとSubstructの導入によるメリットが大きくなるはずだ。

管理画面。わかりやすいデザインになっている




クールなインタフェースのEコマースシステム

名称 PrestaShop
URL http://www.prestashop.com/

『PrestaShop』はPHP+MySQLで開発されたEコマースシステムだ。したがってサーバ導入の障壁はいくぶん低いだろう。画面構成はすっきりとして見やすく、ユーザにとっては買い物しやすくなっている。Eコマースサイトは商品情報をできるだけ載せようとしてゴチャゴチャしがちだが、そこをあえてすっきりとさせることで商品閲覧から注文までのプロセスをスムーズにしてくれるはずだ。

ショッピング画面。シンプルでわかりやすい画面構成

販売管理やユーザ管理機能はもちろん、アクセス解析、決済システムなどのさまざまな機能がモジュール化されていて、自由に選択することができる。SEOを意識したURLも生成される。ウィザード形式のインストーラがあるので、ごく簡単に導入できることも利点だ。

管理画面。さまざまな機能がモジュール化され提供されている

PrestaShopは多言語に対応しており、海外発送機能を備えている。PrestaShopを利用すれば、Eコマースサービスの早期立ち上げも可能になるだろう。

いかがでしたか?

Eコマースサービスは数多く存在するが、乱立しているために使い勝手や見た目でユーザの混乱を生みやすい。使い勝手のよいシステムを構築、導入することでユーザビリティを向上させ、売上が伸びる可能性もある。

また、これから新規にサービスをローンチするのであれば、スクラッチで開発することはオススメできない。ここで紹介したWebアプリケーションやオープンソース・ソフトウェア(OSS)をはじめ、さまざまな既存のシステムが存在している。それらを目的に応じて選定すれば、迅速かつコストも抑えつつサービスのローンチに臨めるようになるはずだ。

著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。