今回のテーマは「ドキュメント管理」
コンピュータの中を見ると、様々なドキュメントが存在している。テキストファイルをはじめ、ワードプロセッサ、表計算、プレゼンテーションそしてPDFなどなど。これらのドキュメントは日々の業務や生活の中で作成されていくものだ。
そうしたファイルを知り合いと共有したい、または自分のコンピュータではなくファイルサーバやインターネット上に保存しておきたいといったニーズは高い。今回はそうしたニーズに応えられるオープンソース・ソフトウェア(OSS)、Webアプリケーションを紹介していこう。
今回紹介するOSS・Webアプリ
『O3Spaces』 Javaで作られたドキュメント管理ソフトウェア
『MindTouch Deki Wiki』 PHP+MySQLで作られたWikiエンジン
『Adobe Share』 Adobe Labsで公開されているFlashベースのドキュメント共有サービス
『.docstoc』 各種オフィスドキュメントを共有するWebサービス
WindowsインストーラもあるJava製ドキュメント管理
名称 | O3Spaces |
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URL | http://community.o3spaces.com/ |
まずはJava製のドキュメント管理ソフトウェア『O3Spaces』だ。10ユーザまで無償になっているので、小規模なオフィスやプロジェクト単位で試してみてほしい。
O3Spacesは「OpenOffice.org」または「StarOffice」に対応したドキュメント管理ソフトウェアになっている。Windows向けにインストーラーが提供されているので導入は簡単だ。他にDebianパッケージやRPM、VMWareイメージが配布されている。
利用はブラウザベースで、ドキュメントをアップロードすると画面上にリスト化される。編集はファイルをダウンロードして行う。編集が終わったら再度アップロードするという手間はあるが、アップロードするとリビジョンが更新されて履歴管理できるようになっている。複数人で作業していると間違って上書きしてしまったり、最新版がどれか分からなくなったりすることがよく起きるので、リビジョン管理という機能は必須だろう。各ドキュメントにはコメントを付けることが可能だ。
また、トップページではアナウンスやカレンダー機能、掲示板機能も利用できる。これを使えば、たとえば締め切りを設定したり、ミーティングを連絡したりするといった簡単なグループウェア的な使い方もできそうだ。
完成度の非常に高いWikiエンジン
名称 | MindTouch Deki Wiki |
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URL | http://wiki.opengarden.org/ |
次はちょっと変わってWikiを使ったソフトウェア『MindTouch Deki Wiki』を紹介しよう。オープンソースとして提供されており、PHP+MySQLをベースに開発されている。ただし、オープンソースの.NET実装であるmonoを使っているので、レンタルサーバなどの管理者権限がないサーバではインストールできない可能性がある。
設置例。筆者のサービス「kwhw.org」でも「MindTouch Deki Wiki」を利用している |
「Desktop Connector」を使ってファイルを一覧表示しているところ。同じファイルをアップロードするとリビジョンが繰り上がる |
MindTouch Deki WikiはWikiなので、複数人でコラボレートするのが基本。ドキュメントのアップロード機能を備えており、リビジョン管理が行える点が特徴だ。ドキュメントとして残すほどではないものや更新が頻繁に行われる文字情報などはWikiで編集し、図表をともなうようなものはドキュメントをアップロードするといったように、用途に応じた使い分けが考えられる。
そしてMindTouch Deki Wikiをオススメする理由として、ファイル管理用のWindows向けアプリケーション「Desktop Connector」の存在が挙げられる。これを使えば複数のファイルを一回でアップロードできる。コンテンツのアップロードはできないが、Desktop Connectorからページの作成、添付ファイルのアップロードが可能だ。一般的な職場ではWindowsマシンのシェアが高いので、便利に使えるだろう。ちなみに、筆者の環境下では失敗してしまったが、「Microsoft Outlook」からDeki Wikiに投稿する「Outlook Connector」というソフトウェアも用意されている。
Flashを駆使したクールなドキュメント管理
名称 | Adobe Share |
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URL | https://share.adobe.com/ |
『Adobe Share』は現在、ベータ版としてAdobe Labsから提供されているサービスだ。Adobe Systemsらしく、Flashを活用したクールなサービスになっている。ファイルの選択、アップロード、管理まですべてFlash上で行うことができる。
アップロード対象の形式は何でもよいが、Adobe Share上で閲覧できるファイルはPDFまたは画像のみ。対応する形式は今後増えていくとのことだ。なお、PDFファイルによってはプレビュー表示できないものもあるので注意したい。
アップロードしたドキュメントには、誰でも見られる「Public」、指定した(招待した)人だけが見られる「Limited」という2種類の閲覧制限を設定できる。リビジョン管理機能は用意されていないが、インターネット上でドキュメントを共有するのに便利なサービスだ。
ドキュメントをFlash Paperに変換・共有
名称 | .docstoc |
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URL | http://www.docstoc.com/ |
そしてもうひとつが『.docstoc』だ。こちらはまだスタートして数カ月のサービスではあるが、Techcrunchでも掲載されて注目を集めている。アップロードできる形式はテキスト、リッチテキストフォーマット、各種オフィスドキュメント(Word/Excel/PowerPoint)、そしてPDFファイルになっている。
「.docstoc」のドキュメント一覧画面。ドキュメントにアイコンが付き、わかりやすくなっている |
ドキュメントのプレビュー。各ドキュメントは「Flash Paper」というFlashファイルに変換されている |
各ファイルをアップロードすると、Flash Paper形式に変換され、共有できるようになる。また、他人がアップロードしたファイルを自分の管理フォルダに入れておくこともできる。こうすれば必要なときに即座にファイルをチェックできて便利だ。
Flash Paperを使うことで、ブラウザ上でオフィスドキュメントを手軽に閲覧できるようにもなっている。それを共有したり、ブログで紹介したりといった操作も簡単に行える。今後、さらに広まっていくと思われるサービスだ。
いかがでしたか?
ドキュメントをインターネット上で管理するというのはかつてはなかった概念だ。それだけに一般的になれば、以前とはまた違ったコラボレートが生まれてくる可能性は十分にある。オープンソース、フリーウェアといったセットアップ型か、Webアプリケーションか。用途に応じて使い分けよう。
著者プロフィール
MOONGIFT 中津川 篤司(なかつがわ あつし)
1978年生まれ。オープンソース紹介サイト「MOONGIFT」管理人。プログラマ、SE、ITマネージャを経て、オープンソースのビジネス活用を推進する。現在は独立し、Webサービスのコンサルティング、プロデュースを行う。