VLSIシンポジウム委員会は4月27日、オンラインによる記者説明会を開催し、6月13~19日に開催される予定の「2021年 VLSIテクノロジー/回路シンポジウム(2021 Symposia on VLSI Technology and Circuits:VLSIシンポジウム2021)」の概要などの説明を行った。

  • VLSIシンポジウム2021

今回はもともと「ライフスタイル変革のためのVLSIシステム」をテーマに6月に京都で開催することになっていたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的な流行への懸念から、すべてオンライン形式として開催されることとなった。

2020年もハワイで開催される予定であったが、同様の理由でオンライン形式に変更となったので、バーチャルコンファレンスとしての開催はこれで2度目である。

この2つのシンポジウムは、1987年に創設されて以降、ハワイと日本の間で交互に開催され、世界トップレベルのデバイス技術者、回路およびシステム設計者が、マイクロエレクトロニクス技術に関する最先端の研究について議論する場を提供し続けてきた。VLSIテクノロジーシンポジウムは、米IEEE Electron Devices Societyと日本応用物理学会が、米IEEE Solid State Circuits Society の協力を得て主催している。一方、VLSI回路シンポジウムは、米IEEE Solid State Circuits Societyと日本応用物理学会が、電子情報通信学会の協力を得て主催している。

委員会では、「産業界のトレンドは収束に向かっており、機械学習、IoT、人工知能、ウェアラブル/埋め込み型生物医学アプリケーション、ビッグデータ、クラウド/エッジコンピューティング、仮想現実(VR)/拡張現実(AR)、ロボット工学、自律走行車などのテクノロジーエコシステムはその重要性をますます高めている。VLSI テクノロジー/回路シンポジウムのプログラムは、このテクノロジーエコシステムを、『ユビキタスインテリジェンス』の将来を約束する、高度な回路設計とアプリケーションプラットフォームに統合することで、マイクロエレクトロニクス業界にユニークな展望を提供している」としている。ここに挙げられているようなキーワードが現在およびこれからの成長分野を示しており、世界中の研究者や技術者がこれらのアプリケーションがさらに発展するためのデバイスや回路の研究を進めている。

2つのシンポジウムの基調講演

VLSI Technologyシンポジウムの基調講演は、Samsung Electronicsのデバイスソリューション事業部ファウンドリービジネス担当プレジデント兼ジェネラルマネージャであるSiyoung Choi氏が、「パンデミックの課題とテクノロジーの答え」と題して講演する。

また、Applied Materials(AMAT)のシニアバイスプレジデント兼最高技術責任者(CTO)のOm Nalamasu氏が「半導体製造における材料からシステムへ、そしてその先へ」と題して講演する。

VLSI Circuitsシンポジウムの基調講演では、理化学研究所・計算科学研究センター所長の松岡聡氏が「富岳とA64FX:最初のエクサスケール・スーパーコンピュータとその革新的なArm CPU」について講演する。また、AMDの技術・エンジニアリング担当最高技術責任者(CTO)兼執行副社長のMark Papermaster氏が「テーラーメイド・コンピューティングの新時代」と題して講演する予定となっている。

さまざまな視点からの議論が期待されるパネルディスカッション

VLSI Technologyシンポジウムのパネルセッションでは、モデレータとして東京工業大学の大場隆之 教授を座長に迎え、「3D/ヘテロジニアスインテグレーション:我々は熱的危機に瀕しているのだろうか?」というテーマで、さまざまな側面から議論を行うことになっている。 また、VLSI Circuitsシンポジウムのパネルセッションでは、モデレータとしてプリンストン大学のNaveen Verma教授を迎え、「主流チップメーカー vs 新興チップメーカー」というテーマで議論を行う。

さらに共同パネルセッションは、モデレータとして日立の矢野和男氏を迎え、「ニューノーマル社会におけるワーク・ライフと教育」というテーマで、多様な視点からポストコロナにおけるVLSI および関連技術、そして我々の社会全体の姿について未来予測を試みる。

3コースが用意されているショートコース

VLSIシンポジウムでは、ショートコース1(テクノロジー分野)、ショートコース2(テクノロジー・回路のジョイント)、ショートコース3(回路分野)の3コースが用意されている。

ショートコース1は「2nm CMOSに向けた先端プロセス・デバイス技術およびエマージングメモリー」と題し、先端CMOS、3Dトランジスタ、配線およびコンタクト技術、メモリー技術のレビュー、先端計測技術など、先端プロセス・デバイスに関する多彩な技術範囲をカバーする。

ショートコース2は、「将来のコンピュータのさらなる高性能化実現技術」と題し、高性能コンピュータを実現するテクノロジーおよび回路の将来技術の方向性、GPU ベースのAIアクセラレータ、ディープラーニング用スパコン、インメモリー、ニューロモルフィック、量子、量子疑似コンピュータを取り上げる。

ショートコース3は、「IoTセンサのための先端回路とシステム技術」と題し、広範なCMOS、非CMOSベースのセンサ、エネルギーハーベスト用の電源管理ユニット、低消費電力アナログ/RF/デジタル回路、セキュリティのための物理攻撃対策のIoTセンサの主要設計項目をカバーする。また、コンピュータビジョンセンサーシステム、バッテリーレスBLEセンサーシステムを、統合されたIoTセンサーシステムの例として紹介しする予定である。

「ポストCovid-19時代のテクノロジー」をテーマにしたフォーラムも開催

2018年以降、学会主催のイベントとして盛況を博している「VLSIフォーラム」が今年も開催される予定だ。今回は「ポストCovid-19 時代のテクノロジー」をテーマとした丸一日のプログラムとなっており、テクノロジー、回路からシステムまでを含む幅広い領域の専門家が、未来を牽引する技術を議論する予定となっている。

このほか、本会議の直前に、以下の4つのワークショップが開催され、参加者にさまざまな分野の造詣を深める機会が提供される。

  • AI・機械学習による回路設計と最適化
  • 3次元メモリオンロジックIC、メニーコアSoC、AIコンピューティングアプリケーションのためのPPAC解析とシステム-テクノロジー協調最適化
  • 最適なアナログ/ミックスドシグナル回路の設計時間短縮に向けた深層解析
  • マテリアル概論 - 全てのデバイスの進化への道筋

(次回に続く)