2022年6月12日~7日にハワイにて開催される「2022 VLSI Symposium」では公募で採択された一般論文の講演のほかに、基調講演はじめ招待講演や教育的な講義やパネル討論などさまざまな催しが企画されている。
これらにはキーワードがちりばめられており、一覧することにより、先端半導体プロセス、デバイス、回路、システム分野で、今何がホットな話題になっており、専門家の関心を呼んでいるか把握できる。今回は主要な催しの簡単な内容紹介をしたい。
基調講演は4件、ASML、TSMC、Qualcomm、SK Hynixが登壇
基調講演は4件予定されており、テクノロジー分野では、ASMLの社長兼CTOのMartin Van den Brink氏による「Holistic Patterning to Advance Semiconductor Manufacturing for the 2020s and Beyond(2020年代以降の半導体製造を進化させる総合的パターニング技術)」およびTSMCの研究開発担当SVPのYuh-Jier Mii氏による「Semiconductor Innovations, from Device to System(半導体イノベーション:デバイスからシステムまで)」の2件が予定されている。
回路分野では、QualcommのSVPであるChris Patrick氏による「From System-on-Chip (SoC) to System on Multichip (SoMC) Architectures: Scaling Integrated Systems Beyond the Limitations of Deep-Submicron Single Chip Technologies(SoCからSoMCへ: 超微細シングルチップ技術の限界を超えた集積システム微細化)」、およびSK Hynixの社長兼CEOのSeok-Hee Lee氏による「The Rise of Memory in the Ever-Changing AI Era – From Memory to More-Than-Memory(変化し続けるAI時代におけるメモリの隆盛–メモリからメモリの先へ)」の2件が予定されている。
最先端のデバイス技術と回路設計の協調を目指す
Technology&Circuitsジョイント・フォーカスセッションは、今年は4セッションを用意し招待講演として、「Memory Technologies and Circuits for CIM(メモリ技術と回路)」、「Advanced Wireless Communications(ワイヤレス通信)」、「Biomedical Applications(バイオメディカル応用)」、「3D Heterogenous Integration(3次元ヘテロ集積)」に関して4テーマが選ばれた。CIMとはComputing in Memoryの略で、HPC/メモリ分野で特に注目されている。外部の記憶媒体を使わず、メインメモリ上で演算処理を行う手法である。
また、テクノロジー分野のフォーカスセッションでも2つのテーマにて招待講演などが行われる予定となっている。
半導体不足や大学での半導体人材教育をパネル討論
このほか、テクノロジー・回路合同パネル討論として、半導体チップ不足に関する話題が取り上げられる。半導体業界はどのようにして今日の供給不足に陥ったのか? どうすれば健全なサプライチェーンを取り戻せるか? それとも半導体不足は続くのか? 業界をリードするファウンドリ/IDM、OSAT、ファブレス企業、素材メーカーおよび装置メーカーよりエキスパートがパネリストとして集い、どこに課題があり、供給不足を克服するために企業はどのように協力できるのか議論することになっている。
また、テクノロジーセッションとしては「What will it Take to Bring New Material from Lab to Manufacturing?(新しい材料をラボから工場へどのように技術移管するか?)」と題したパネル討論が予定されているほか、回路セッションとしては、「Building the 2030 Workforce: How to attract great students and what to teach them?(2030年に向けた技術者の確保: いかに優秀な学生を惹きつけ、彼らに何を教えるか?)」と題したパネル討論が予定されている。
さらに、テクノロジーのショートコース(講義)として、「Monolithic and Heterogeneous Integration(モノリシック&ヘテロ集積化技術)」が、回路のショートコースとして「Electronics that Drive the Next-Generation Smart Car(次世代スマートカーのためのエレクトロニクス)」が、テクノロジーと回路にまたがるジョイントショートコースとして「Advances in Application-Specific Computing Systems and Technologies(特定用途向けコンピューティングシステムと技術の進展)」がテーマとして取り上げられる予定となっている。
なお、本会議の期間中に、以下のような6つのワークショップが開催され、研究、応用を問わず、本会議では議論されることが少ない分野について議論される。
- Machine Learning Applications in Semiconductor Processes and Equipment Development(半導体プロセスと装置開発における機械学習の適用について)
- Heterogenous Integration – The Next Scaling Frontier: Material and Process Challenges(ヘテロジニアスインテグレーション - さらなるスケーリングのためのマテリアル・プロセスチャレンジ)
- Recent Advances in mm-Wave Radar: Technology, Circuits and Packaging(ミリ波レーダーにおける近年の進展:テクノロジー、回路、およびパッケージング)
- The Emerging Ecosystem of Open-Source Chip Design(オープンソースチップ設計の新たなエコシステム)
- Analog Circuits for IoT(IoT向けアナログ/RF回路)
- Cryogenic Electronics for Quantum Computing(量子コンピューティングに向けた極低温エレクトロニクス)
近年、学会主催のイベントとして盛況を博しているVLSIフォーラムは、VLSIシンポジウムの将来の方向性を示唆したり、VLSIの最先端のアプリケーションを紹介するなど、VLSIシンポジウムのスコープを広げるために企画されており、今年は「VLSI for Infrastructure and Infrastructure for VLSI(インフラのためのVLSI、VLSIのためのインフラ)」というタイトルで、グリーンモビリティ、パワーエレクトロニクス用IC、ビッグデータを活用した半導体製造などについて招待講演が計画されている。
次回は、一般講演の中から、特に注目されるテーマの講演を紹介する予定である。