毎年、京都とホノルル(米国ハワイ州)で交互に開催されてきた「VLSIシンポジウム(VLSI Symposium)」。2022年はハワイにてリアル会議として6月12日~17日に開催され、コロナ禍にて各国の入出国に様々な制限があることを考慮し、オンデマンドとの併催によるハイブリッド形式の会議として運営される。ハワイでの会議は、前回2020年はオンラインのみのバーチャル会議に変更されたので、2018年以来4年ぶりの開催となる。
技術と回路のシンポジウムを1つに融合
今年から会議の構成が大きく変更される。従来は、「VLSI Technology Symposium」と「VLSI Circuits Symposium」の2つの国際会議を合わせて「VLSI Symposia on Technology & Circuits」として運営してきたが、今回から一本化して「VLSI Symposium on Technology & Circuits」として開催される。正式な名称は「2022 IEEE Symposium on Technology & Circuits」に変更された。
VLSI Symposium委員会委員長で東京大学教授の黒田忠広氏は、名称変更について「VLSIシンポジウムは、これまでテクノロジー(プロセス、デバイス)と回路の2つの別々のシンポジウムを併催してきたが、今年度より1つのシンポジウムに融合し、あらたなスタートを切ることにした。これは、微細化の進展や技術の複雑化にともなって、従来のテクノロジー分野や回路分野で切り分けられない新しい技術への対応が必要であると判断したからである。そのような意味を今年度のシンポジウムテーマにも込めた」と説明している。
社会基盤としての半導体をテーマに
ちなみに、今年のテーマは、「Technology and Circuits for the Critical Infrastructure of the Future(未来を担う不可欠な社会基盤のためのVLSIテクノロジーと回路)」である。黒田氏は「現在世界は、いまだかつてない半導体不足に直面している。我々半導体技術にたずさわるものも含めて、半導体技術というものがいかに我々の生活にとって重要な地位を占めるかをあらためて思い知った。加えて、世界の半導体の需要の伸長はいまだ衰えておらず、この半導体不足が一過性のものであるとは決して言い切れなくなって来ている」とこのテーマを選んだ理由を説明している。
主要国中で最少となった日本からの投稿・発表件数
今回のシンポジウム全体の応募件数は580件で、採択件数は198件となり採択率は例年並みの34%となった。つまり3件に1件しか採択されない難関の会議である。また、日本の応募件数は、主要国(米・韓・台・欧・中・日)の中で最少だったという。
最多応募地域は、例年通り北米(米国・カナダ)で応募数は134件、採択率は49%(65件)で平均を大きく上回る。日本の応募件数は32件と、主要国の中で一番少ないが、採択率は53%(17件)と最も高かったという。韓国ならびに中国からの応募件数が急増しているが、その採択率は韓国は34%(42件)で平均並みだが、中国は13%(12件)と極めて低い値となっている。
分野別では、テクノロジー分野が、応募件数232件、採択件数82件で、採択率は35%。回路分野が応募件数348件、採択件数116件、採択率33%であった。プログラム委員会によると「日本からの応募は32件と少ないものの、採択率は53%と高く、高得点の論文が多かった」という。また、中国からの応募件数は急増してきているものの採択率は低いとするが、これはいわば少数精鋭の日本勢に対して、数はパワーとばかりに研究開発人口を急増させている中国勢が、今後どのように成長して日本の脅威となるのか否か注視する必要性があるという見方もできる。
なお、VLSIシンポジウムは6月13日から17日にかけて朝8時から夜10時まで、基調講演、一般講演、ショートコース、ワークショップ、パネル討論、開発した回路デモなどがびっしり詰め込まれているほか、翌週の6月20日~22日早朝にライブの質疑応答セッションが開催されることになっている。一部の企画は6月11日から開催される。いまのところ、会議終了1週間後からオンデマンド視聴が可能になる予定になっているが、これらはあくまでも予定であり、最終スケジュールは、会議直前に公式Webサイトで確認するようプログラム委員会は呼びかけている。
次回以降は、特に注目される企画や講演内容についてのプレビューをお届けする。