2020年6月15日~18日(米国時間)にかけて開催された「2020 Symposium on Technology and Circuits(VLSIシンポジウム2020)」ではさまざまなセンサ関連の発表があった。中でも「いくつものセンサを搭載した人工瞳孔コンタクトレンズ」、「超低消費電力IoT用圧力センサ」、「レーザー光の干渉防止機能を内蔵したLiDARセンサ」は前評判の高い注目論文となっていた。
imecなどが光彩異常患者のための人工瞳孔コンタクトレンズを発表
ベルギーimec、ゲント大学、ルーヴァン・カトリック大学(KUL)および蘭Holst Centreのグループは、光彩異常患者の対症療法のための人工虹彩を搭載したスマートコンタクトレンズデバイスを発表した。開口径可変の人工虹彩は、4重の同心円状液晶レンズによって実現された。長時間駆動を想定し、人工虹彩の開口制御、まばたきセンサ、光センサおよび制御ロジック合わせた消費電力を1.9μWに抑えている。
Michigan大などが超低消費電力IoT用途ピエゾ抵抗式圧力センサを発表
米Michigan大学とセンサー開発ベンチャーの米CubeWorksの研究グループは、総容積20mm3という小型パッケージ内に集積化されたピエゾ抵抗式圧力センサを発表した。
高感度信号検出が可能なホイートストーンブリッジ型センサ回路を従来のDCバイアス法ではなく、400ns未満だけデューティ駆動し、さらに高効率アンプとフルレンジ電圧の一部であるサブレンジをAD変換する手法により、電力消費を抑えた結果、6.1nJ・mmHg2という高効率を達成した。なお、ここで「消費エネルギー/1変換(nJ/conv)」×「分解能の分散(mmHg2)」という2つの物理量はトレードオフの関係にあり、同センサの性能指標(フィギュア・オブ・メリット:FOM)を表している。
Samsungなどがレーザー光の干渉防止機能を内蔵したLiDARを開発
韓国成均館大、SOS lab、Samsung Electronics、蔚山科学技術大(UNIST)は共同で、オンチップSPADアレイを用いた干渉に強いLiDARセンサを発表した。
同LiDARシステムはシステムごとに固有の時間間隔を設けた2つのレーザーパルスを照射することにより、自ら照射したレーザーの反射光と他のLiDARシステムのレーザー光や反射光を分離することで干渉に強い構成となっている。また、精度の異なるTDCを組み合わせることでヒストグラム処理の複雑さを軽減している。回路水平方向に回転するポリゴンミラーと垂直方向にはMEMSミラーを活用することで120°×8°の広角な画角を持ち、48mの距離で誤差11.68cm精度を達成したという。
将来主流となる車載センサは何か?
VLSIシンポジウム2020では、「センサ」および「センサシステム」の2件のオンラインライブセッションが開催され、センサの今後の動向に関して視聴者に以下のような質問が投げかけられ回答が集計された。
高度なエッジコンピューテイングを必要とする(センサ)エッジにおけるデジタルプロセスに最も適した候補は次のどれだと考えるか?
- CPU:(プログラムし市場へ送るのが最も容易)9.4%
- ASICアクセラレータ:(性能は最高の可能性があるが設計するのに一番時間を要する)40.6%
- FPGAアクセラレータ:(設計はASICよりも速く行えるが、効率的ではない)15.6%
- GPU:(プログラム可能で高速並列計算に最適)6.3%
- 多くの要素に依存刷るので一概に決められない:28.1%
自動運転車は現在、様々なタイプのセンサに依存しているが将来的には、センサの種類は絞られるか?
- 最終的にはカメラだけが使われ、LiDARは消え去る:9.1%
- LiDARは十分な高解像度を持っているので、将来的に唯一の光学センサとなる:4.5%
- LiDARとカメラは両方使われる。超音波とLADARは使われないだろう:27.3%
- LADARがLiDARとカメラをサポートするだろう:9.1%
- センサは互いに補いあい、すべてのセンサが今後も使われる:50.0%