IBMと言えば、大規模なシステム構築を主軸としており、導入コストはそれなりにかかるというイメージを持っている方も多いだろう。しかし、中堅・中小企業向けの製品・サービスの提供も積極的に行われており、製品ラインナップも豊富に取り揃えている。特に今年10月に発売された新たなラインナップとなる「IBM x3100 M4 Express」は、コストと機能の両面において中堅・中小企業の要望にこたえる形で登場したコンパクトサーバであり、必見の価値がある。

高さは縦積みした350mlの缶3本と同等

同製品には、OSを搭載しないモデルから、Windows Server 2008 R2を導入済みのモデルまで幅広いラインアップが用意されている。最も安価な「2582-32J」はインテル Pentium G850(2.9GHz)プロセッサと2GBのメモリを搭載し、HDDやOSは備えていない。ダイレクト販売の価格は6万9,300円とかなり安価だ。Windows Server 2008 R2 Foundationを搭載したモデルは2種あり、上位の「2582-PAK」はインテル Pentium G850(2.9GHz)プロセッサに4GBのメモリと250GBのHDDを搭載しており、ダイレクト販売価格が9万9,750円だ。

同製品は手頃な価格で購入できるだけでなく、本体サイズも幅180×高さ360×奥行き480mmとコンパクトだ。高さを身近なものと比較するなら、縦積みした350mlの缶3本とほぼ同じだ。IBMの従来機種「x3200 M3」と比べて、体積が40%削減されているそうだ。

左から「IBM x3100 M4 Express」、「IBM x3200 M3」。見るからに、x3200 M3のほうが大きい

付け外しが簡単なシンプルスワップ対応ドライブベイ

かなりのサイズダウンだが、それでいて本体にムリは感じられない。ハードウェア構成にもよるが、ケース内部がすっきりしているのだ。5インチベイにはテープドライブも搭載可能で、3.5インチのシャドウベイは4本用意されている。

ケースの開閉、ドライブの付け外しいずれもツールを使わずに行うことが可能である。5インチベイはサイドの紫色にマークされた部分を押してドライブを取り外すことができ、3.5インチベイは左右にある紫の輪を手がかりに簡単にHDDを引き出せる。ホットスワップ対応ではないため、電源を落としてからの作業にはなるが、ドライブをネジ止めすることに比べるとかなりラクだ。この仕組みをIBMでは「シンプルスワップ」と名付けている。

ハイエンドサーバ向け診断LEDや障害予知機能も搭載

内部には随所にLEDランプが埋め込まれている。これは「診断LED」だ。これは故障している場所を光で教えてくれるシステムで、「どうも様子がおかしい」という時はこのランプが光っていないかを確認するだけでよい。ツールを使う知識がなくても、すぐに故障個所を特定できるというわけだ。

さらに、障害が出る前に知らせてくれる「PFA(障害予知)機能」も搭載されている。これはメモリ、CPU、HDD、電源関係、ファンといったサーバの主要機能部分に障害が出そうの場合、24時間から48時間前に知らせてくれる機能だ。これはケースを閉じた状態でもフロントパネルにあるランプで確認できるから、すぐに異常を察知できる。

故障を事前に察知できれば、データが書き込まれている時にサーバが突然壊れて破損する心配もなければ、サーバの突然の停止により業務が中断される心配もない。24時間あれば代替サーバを稼働することもできるし、計画停止を業務に組み込んで速やかに対処できるはずだ。

これらの機能は、社内に情報システム部門や十分な知識を持つスタッフを十分に抱えていない中堅・中小企業にとって、命綱になってくれる。壊れてしまってからサポートを依頼するのでは効率が悪いし、故障の状況がわからずに呼ばれたサポート要員も迅速な対応がしづらい。しかし、「PFAのランプがついているから明日来てほしい」という方法ならば、余裕を持ったサポートが受けられる。

「IBM x3100 M4 Express」の内部。オレンジ色の円で囲んだ部分に診断LEDが配置されている

自動監視でIBMの専門技術員が障害を解決

サポート面でもう1つ心強いのがシステムの自動監視だ。「IBMエレクトロニック・サービス・エージェント」をインストールしておけば、24時間365日システムの自動監視が行われる。具体的には、ハードウェアのエラーログの取得やパフォーマンス情報の報告、ハードウェア障害の自動発報、システム・インベントリーの関し、マイクロコードPTFの自動ダウンロードなどを行ってくれる。

異常が発生すれば、IBMのハードウェア障害テクニカル・センターへの通知も自動で行われる。それを受け、IBMの専門技術員が障害を解決してくれるというわけだ。場合によっては、サポート部隊が駆け付けてくれる。

懇意にしている事業者がいるならば、PFAなどを頼ればよいが、IBMの専門家のサポートが直接受けられるこのサービスをうまく利用するのもオススメだ。しかも、この保守サービスは追加料金不要で受けられるというのがうれしい。

上位機種と同等のサポートを備えたコンパクト&安価なサーバ

診断LEDやPFA、リモートでの自動監視や即時対応といった機能やサポートは、IBMのサーバとしては珍しいものではない。しかしこれらが、コンパクトなボディで最小構成なら6万円台で購入可能なサーバについてくるのは驚きだ。

安価だから低機能でも仕方がないという側面は確かにある。実際、「IBM x3100 M4 Express」も6万円台で購入できるモデルに最高スペックのプロセッサが搭載されているわけではない。しかし、安全かつ快適に運用するための体制は数十万円するサーバと同じものが用意されているのだ。

最近はPCも高機能になっているため、つい手持ちのPCをサーバとして使っているケースもあるだろう。しかし、サーバレベルでの要求を満たすハードウェアと法人向けサーバに必要とされるサポート体制にはかなわない。「サーバにそれほどのスペックを求めていない」、「ラックを置くスペースがない」といった理由から、PCをサーバとして利用している中堅・中小企業にぜひ選択して欲しいサーバだ。

ここまで、ざっと「IBM x3100 M4 Express」の特徴を紹介してきたが、IBMではさらに図解を交えた形で同製品について詳細に説明している資料をWeb上で公開している。同資料では、誌面の都合で紹介できなかったCPUの性能などもまとめられているので、興味がある方はぜひダウンロードしてみていただきたい。