IAサーバのプロセッサの処理能力は順調に向上を続けており、単一のワークロードでは使い切れないレベルにまで達している。このため、現在では仮想化技術を活用して複数のワークロードを単一のIAサーバに集約することが一般的な状況になりつつある。
もっとも、プロセッサの処理能力さえ十分ならどのようなサーバでも複数のワークロードを集約できるわけではない。当然ながら、仮想化を念頭において設計されたサーバとそうでないサーバでは運用管理の面はもちろん、性能面でも差が出るものなのだ。
今回、プロセッサの処理能力やレイテンシなど、さまざまな要素において、仮想化環境に最適化された日本アイ・ビー・エムのブレードサーバの特徴を紹介しよう。
最近は運用管理機能も充実
ブレードサーバが出現したのは10年ほど前のことだ。当初のブレードサーバは、何よりも実装密度の大きさをメリットとしていた。インターネットバブルと呼ばれた時代の影響もあり、サーバの台数が倍々ゲームで増えていく状況下で、「サーバを設置するスペースが足りない」という課題の解決策として注目されたのがブレードサーバだった。そのため、「当時は処理性能を犠牲にしてもとにかく高密度化を追求する」という設計の製品も見られた。
しかし、現在では極端に高密度な製品は姿を消している。これにはさまざまな理由が考えられるが、仮想化の普及は無視できないだろう。中途半端な性能のサーバを数だけ増やすより、高性能なサーバを仮想化によって分割して使うほうが柔軟性が高いのは明らかだ。
現在主流のブレードサーバは、ブレード単位で見ても標準的な1U/2Uサイズのラックマウントサーバと比べても性能的に遜色なく、実装密度は1Uサーバよりも高い。しかも、多数のサーバをまとめて扱うための運用管理機能が充実しているなどの特徴を持つ。多数のブレードを収容するためのエンクロージャを必要とすることから、サーバの台数が少ない場合はともかく、多数のサーバを運用する環境では大きなアドバンテージがある。
最先端のハードウェア技術を利用可能
IAサーバはコモディティ化していると言われるが、これはラックマウント型やタワー型、ペデスタル型といった一般的なフォームファクタのサーバはともかく、ブレードサーバには当てはまらない。
ブレードサーバは最初から複数のサーバをまとめて1つのエンクロージャ内で相互接続して利用することが前提なので、サーバブレード間のインターコネクトや、複数のサーバブレードで共有されるI/O周りや電源、冷却など、メーカー各社が独自に工夫を凝らしたハードウェア構成となっている。
日本アイ・ビー・エムのシステムx事業部 事業開発 システムズ&テクノロジー・エバンジェリストの柴田直樹氏は、「ブレードサーバにはハードウェアベンダーの最新技術がいち早く盛り込まれ、最先端のハードウェアが利用できるプラットフォーム」と語る。ブレードサーバには標準的なフォームファクタのサーバには含まれないコンポーネントが多数存在するため、その分独自の設計を織り込みやすいというわけだ。
仮想化プラットフォームとしてのブレードサーバ
ブレードサーバのメリットは、省スペースで多数のサーバを集約できることにある。しかも、「IBM BladeCenterでは実装密度のために性能を妥協したりはしていないため、仮想化を利用する場合にはそのメリットがさらに大きくなる」と、柴田氏は語る。
例えば、サーバブレードとしてIBM BladeCenter HX5は最新のXeon E7プロセッサをシングル幅で2ソケット搭載している。コア数では最大20コア、さらにエンクロージャにIBM BladeCenter Hを利用した場合、9Uサイズに14基のサーバー・ベイがあるため、コア数では280コアを1Uサーバ9台分のスペースに集約できることになる。
仮に、「仮想マシン1台に1コアを割り当てる」という保守的な方針を採ったとしても、280台の仮想マシンを運用できるわけだ。こうした集約率の高さは、特に仮想マシンの台数が膨大になりがちなクライアントPCの仮想化(デスクトップクラウド)にも向いていると言える。
さらに、ブレードサーバは多数のサーバを集積することが前提の設計であるため、信頼性は1Uラックマウントサーバなどよりも遙かに高いレベルが実現されている。「IBM BladeCenter HX5では、14基ものサーバを搭載するエンクロージャがダウンしたらその影響も大きなものになるため、単体サーバではコスト面で採用が難しいクリティカルなハードウェアについては、電源経路も含めた徹底的な二重化が行われている」
パブリッククラウドであれば、「サーバ単体の信頼性を抑える代わりにコストを下げ、十分な数の予備サーバを用意しておくことで全体の信頼性を維持する」という方針が採れるが、デスクトップ仮想化はプライベートクラウドでの運用が想定される。この場合、多数の予備サーバを用意しておくことも難しいため、やはり個々のサーバの信頼性を充分高いレベルに維持しておくことが求められる。こうした需要はブレードサーバ向きであり、「市場でも特に2ソケットサーバ・クラスではブレードサーバの伸びが顕著」と、同氏はいう。
デスクトップクラウドではレイテンシも重要
仮想化を前提にサーバを選定する場合、プロセッサの処理能力以外の性能についても十分な検討が必要だ。メモリ搭載量やストレージ容量、ネットワークI/Oなど、検討すべき要素は多岐にわたる。
柴田氏は、ユーザーの使い勝手を考えた場合、「仮想化システムでも、レイテンシを低く抑えることが大切」と語る。デスクトップクラウドは特にそうで、ユーザーが対話的な処理を行うことが多いため、不自然な印象を与えることのないレベルの反応速度をあらゆる操作に対し実現することが目標になる。Webアプリケーションやメールサーバなら多少の遅延は気にならないこともあり得るが、ユーザーが日常業務を行うクライアント環境において、操作のたびにユーザーが気づくレベルの遅延が発生するようでは「システムとして失格」と言われかねない。
サーバ単体で完結するチューニングならまだしも、デスクトップクラウドのような仮想化されたネットワークシステムのレイテンシを最小化するようなチューニングは、サーバのプロセッサの処理能力やメモリの割り当てに加え、サーバ間のインターコネクトやストレージI/O、サーバとクライアントの間のネットワークなど、対象となる要素が多く、かなり難しい作業となる。
事前構成済みソリューションで仮想化基盤を容易に導入
そこで、IBMがブレードサーバのメリットを生かす形で中・大規模のワークロードに対応する形で用意したのが「IBM BladeCenter Foundation for Cloud」だ。
プライベートクラウドとして利用するために必要なサーバ、仮想化ソフトウェア、10ギガビット・スイッチ、ストレージ、管理ツールがパッケージ化されている。同製品は1本のラックの中に必要なシステムをすべて収めたうえ、レスポンスを重視した構成をとっているため、デスクトップクラウドのようなレイテンシに敏感なワークロードにも対応できる。
ブレードサーバは実装密度が高く、また電源ユニットや冷却ファンなどのコンポーネントは複数のサーバで共用できるため、同じ数のサーバを運用するのであればラックマウントサーバよりも電源効率も高まる。また、単にサーバを集積しただけにとどまらず、システム全体としての信頼性も充分に高くなるように配慮されてもいる。
サーバ仮想化に加えて、デスクトップ仮想化も事前に構成が検証されたソリューションを採用することで 、基盤選択の悩みから解消するというわけだ。
「仮想化基盤として導入すべきハードウェアを判断しかねている」といった状況であれば、ハードウェアベンダーとして定評のあるIBMが最適な構成として用意した「IBM BladeCenter Foundation for Cloud」は最適解と言えるのではないだろうか。