1983年創立のレンタルサーバ事業者の老舗、カゴヤ・ジャパン。同社はこのところ機能別のサーバ提供に注力している。今年1月には、ウォッチガード・テクノロジー・ジャパンの次世代UTM「WatchGuard XTM」を採用したメールサービス「メールプラン エンタープライズ」を発表した。UTMの活用によって、ユーザーはどのようなメリットが得られるのか? 今回、カゴヤ・ジャパンの代表取締役兼最高技術責任者の北川貞大氏に話を聞いた。

カゴヤ・ジャパン 代表取締役兼最高技術責任者 北川貞大氏

ユーザーの利便性を高める機能別のサーバ提供

「機能別にレンタルサーバを利用することで、ユーザーは大きなメリットを享受できます」と、カゴヤ・ジャパンの代表取締役を務める北川貞大氏は語る。それにはいくつか理由がある。

同社はWebサーバ、データベースサーバ、メールサーバの3種類のサーバを提供しているが、企業ではサーバによって担当部署が異なるというのが、1つ目の理由だ。「Webサーバであればマーケティング部門、メールサーバであればIT部門や総務部門が管理している」といった具合にである。

こうしたなか、3種類のサーバがオールインワンになっているサービスを利用するとなると、不便なことが多い。同氏は「大抵の企業のWebサイトは制作会社が構築や運用を行っています。この場合、デザインの変更などで制作会社が変更されると、Webサーバも変わることが多く、その結果、メールサーバも変わってしまい、ユーザー側でもメールの設定を変更しなければなりません」と指摘する。

また、Webサーバでは急にアクセスが急増して負荷が高まることはそれほど珍しくない。ただ、Webサーバとメールサーバが一体化しているサービスでは、Webサーバの負荷の急増がメールサーバに影響を及ぼし、メールの送信や受信が遅延することになる。

いずれの場合も、Webサーバとメールサーバが独立していれば、メールサーバはWebサーバの影響を受けないで済む。

同社が機能別にサーバを提供できるのは、もともと3種類のサーバが稼働しているマシンを分けていたからだという。「競合他社はWebサーバ、データベースサーバ、メールサーバを同じマシンで稼働していますが、この環境では機能別にサーバを提供するのは難しいでしょう」と同氏はいう。

UTMが専用だから実現可能な自由度の高いメールシステム

同社はこれまでメールサーバとして「メールプラン 共用タイプ」と「同 専用タイプ」を提供していたが、今年1月に「同 エンタープライズ」をラインアップに加えた。共用タイプは初期費用が無料の手軽に利用できるサービスで、専用タイプはメールサーバを1台占有できるサービスだ。エンタープライズは専用メールサーバに加えて、専用のUTM「WatchGuard XTM」が採用されている。

北川氏は、エンタープライズの提供を始めた理由について次のように語る。「当社はもともと質の高いメールサービスを提供していたのですが、お客様の求める要件がシビアになってきました。例えば、FXの情報を契約企業にメールで送信している金融業のお客様は『1分遅れても困る』と、秒単位での処理を求められます。こうしたニーズにこたえるため、ウイルスやスパムメールのチェックを独立して処理させることでパフォーマンスの向上と拡張性を実現したサービスが『メールプラン エンタープライズ』です」

WatchGuard XTMは、同サービスにおいてメールのウイルスチェックとスパムチェック、メールフィルタリング、メールのログのダウンロード提供などを行う。同製品の採用による最大のメリットは「自由度が格段に上がること」と、同氏は話す。

「メールプラン エンタープライズでは、メールサーバとWatchGuard XTMが専用であるため、お客様のニーズに応じて自由にカスタマイズすることができます。メールフィルタリングやスパムメール判定は、企業によって基準が異なるため、カスタマイズすることで最適化が実現されますが、メールプラン エンタープライズではきめ細かな設定が可能です。WatchGuard XTMの追加による負荷分散構成やメールゲートウェイ追加による冗長構成にも対応しているほか、メールサーバの複数台構成も可能なため、部署別にメールサーバを分けるといった運用も行えます」

スパム判定、ハードウェアの丈夫さで競合製品を凌駕するWatchGuard XTM

実のところ、同社は7~8年前からウォッチガードとは異なるベンダーのUTMを利用していた。しかし、ウイルスチェックやスパムチェックにおける誤判定によって、メールが削除されてしまったり、本来の半分のメールしか受信できなかったりといった事態が発生したため、顧客に障害に関する説明が可能なログを提供できるUTMを採用することになった。

技術グループ DCチーム チームリーダーを務める別所啓次氏は、「メールプラン エンタープライズで利用可能なWatchGuard XTM 505のファイアウォールスループットは850Mbpsですが、保証されている以上の環境で利用しても十分なパフォーマンスが出ます」と、WatchGuard XTMのパフォーマンスの高さを強調する。

また、WatchGuard XTMの"見える化"機能を用いて、スパムチェックやウイルスチェックによって削除されてしまったメールなどをユーザーに示すことで、それまで使っていたUTMによるトラブルから生まれた不信感を払拭することに成功したそうだ。「WatchGuard XTMのログはお客様に理解してもらいやすい」と同氏。

WatchGuard XTMのスパム判定の精度については、「正直なところ、スパムチェックのためのデータベースやエンジンの質はどのベンダーも差はないと思います。ただ、ウォッチガードはクラウドベースでスパムを分析していることで、スピーディな対応が実現されて結果が出ているのでしょう」と、同氏は語る。

さらに、「ウォッチガードのハードウェアはとにかく丈夫なので助かります」と、同氏は続ける。それまで使っていたUTMは突然再起動したことがあるのだが、再起動が発生するとその間に処理が遅れてユーザーに迷惑をかけてしまう。同氏は「ウォッチガードは基礎から地道にハードウェアを作っていることがよくわかります」と、太鼓判を押す。

北川氏によると、カゴヤ・ジャパンでは今後クラウド対応を推進していくという。そこで、必要となるのが「UTMのバーチャルアプライアンス」だ。これを活用することで、メールプラン 専用タイプでも拡張性の高いサービスの提供が実現される。当然、ウォッチガードとしてもバーチャルアプライアンスの投入を予定している。

「クラウド」がIT業界のキーワードとして注目される前からレンタルサーバに従事してきたカゴヤ・ジャパンはサーバサービスのノウハウを知り尽くしている。さらに、UTMといった新たなITを活用しながら、サービスの質の向上を追及している。同社のメールサービスはITの進歩とともに進化を遂げているのだ。メールサービスを利用している企業は今一度、自社のサービスレベルを見直してみてはいかがだろうか。