UMLを用いてシステム要求をモデリングする際の作業は4つのステップに分けられます。これまで、最初のステップの作業「業務フローの作成」、2番目のステップの作業「ユースケース図の作成」、3番目のステップ「コンテキスト図の作成」について説明しました。今回は、最後のステップの作業として、「配置図の作成」を紹介します。
Step4:配置図の作成
システムアーキテクチャはシステム要求の段階ですでに一部決まっていることがあります。例えば、ネットワーク構成、ハードウェア、ミドルウェア、開発言語などです。このような場合、システム要求の段階からシステムアーキテクチャをモデリングします。図1は配達予約システムのシステムアーキテクチャを表現した配置図の例です。
配達予約システムのシステムアーキテクチャはDMZ(非武装地帯)などのネットワーク構成、Webサーバなどのハードウェア、Apacheなどのミドルウェアで構成されています。これらシステムアーキテクチャの構成要素を「ノード」と呼び、立方体で記述します。また、システムアーキテクチャをモデリングする場合、ネットワーク構成の中にハードウェアがあり、ハードウェアの中にミドルウェアがあるという入れ子構造が登場するため、配置図でも入れ子でノードを記述します。
システムアーキテクチャを設計する際、性能や信頼性を考慮して各種サーバを多重化することがよくあります。配置図でサーバの多重化を表現する場合はノード内に多重度を定義します。
なお、多重度が「1」や「*」の場合も省略せずに記述することをお勧めします。多重度が書かれていないと省略されているだけなのか、記述漏れなのか、検討漏れなのかがわからないからです。ハードウェア間(またはミドルウェア間)の接続を表現する際は「通信経路」を使いますが、クラス図の関連と同様に、多重度を定義できます。
配置図はソフトウェアに詳しくない人も読む図です。業務フローと同様に、ステレオタイプを利用することをお勧めします。以下の図では営業所クライアントにデスクトップアイコンのステレオタイプを使っていますが、このほか、プリンタやバーコードリーダなどもステレオタイプを用いるとわかりやすいでしょう。
図1はシステムアーキテクチャの設計を表現した図であり、システムの実物を表現した図ではありません。各ノードにどのIPアドレスを割り当てるかをモデリングしたい場合は、図2のようにオブジェクト図的な配置図を書きます。ノードに多重度を記述しない代わりに、多重度に応じた数のノードのオブジェクトを記述しています。
『出典:システム開発ジャーナル Vol.3(2008年3月発刊)』
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