ここまで、淡水の大物釣りの頂点ともいえるカープフィッシングについてお伝えしてきた。今回からは、これからの季節がまさに旬となる釣りモノを紹介していこうと思う。

道具にこだわるからこそ面白い

冷え込みが厳しくなると言う前日の予報を聞きながら眠りにつき、まだ薄暗い早朝に起床する。凍える体を暖かいコーヒーで目覚めさせながら車を飛ばす。

目的の湖に着くと、ボート桟橋の前には長蛇の列。白い息を吐きながら、釣り人同士が熱い議論を交わしている。受付を済ませ、ボートに乗り込む頃になってようやく日が差し始める。ボートを漕ぎ出し、狙いのポイントに着く道中、必至に魚群探知機のモニターを見つめる。散発的な群れは確認できるが、釣れ続くような形状では無い。探しているのはもっと広く重なっている群れなのだ。

朝靄が漂う湖面に漕ぎ出す。期待に満ちた瞬間でもある

ボートをもやぐことができるロープは何本もあるが、狙いの魚が通る道はその日によって違う。天候はもちろん、風向き、地形を読んで、その日の最良ポイントを見つける。ロープ沿いに魚群探知機でサーチしながら探ること数分…… 「居た」。

大きなボール状になっている群れは、狙い通りのフラットボトムに着いていた。ボートを固定して道具を取り出す。手にすっぽり収まるようにデザインされた電動リールの電源を入れて、先端に専用の扁平竿をセットする。今日の活性だと、あまり重いオモリを使うとアタリを見逃しかねないので、1~2g負荷の先調子をチョイスする。

5本針の胴付き仕掛けの先にオモリをつけ、餌であるサシ(ウジ虫)を2つに割って刺していく。指先が凍えてうまく刺せないが、これも楽しみのためなので我慢する。準備が整ったので、すぐに投入。水深10mの湖底へ仕掛けはまっすぐに落ちていく。

着底を待って、すぐに竿先を踊らせる。湖底での仕掛けのイメージはフワフワ、次にピッピと跳ね上がる。早い動きで魚の目を向けさせたら、次はスローに落とし込んでいく。その途中、扁平竿の先端が風に吹かれたかのようにフルフルと動く。すかさずアワセを入れてそのまま巻き取る。

上がってきた魚体はようやく出てきた朝日に照らされ、銀鱗を散らせながらピチピチと最後の抵抗を見せる。魚体にしばし見とれつつ、すぐにイケスへ入れる。そしてすぐに次の一投を落とし込んでいく。すると、今度は着底前にラインがふけた。どうやら落とし込む途中で食ってきたようだ。電動リールを回転させると、大きな手応え。群れの活性が高くなったようだ。案の上、仕掛けにはワカサギが6匹ついていた。5本針+オモリ針の計6本すべてにヒット。パーフェクトである。

期待の朝マヅメは高活性の中、釣れ続いたが、さすがに昼近くになってくると大きな群れは居なくなってしまう。しかし、ボトムにはチロチロとした影が魚群探知機にはしっかり映っている。こういう釣れない時間帯にどれだけ数が伸ばせるかが、仲間と差をつける結果に繋がるので、ボトムにへばりついているワカサギに口を使わせるのもテクニックのひとつだ。

オモリをボトムに着け、やや竿先を下げる。こうすると、仕掛けはテンションフリーの状態になるため、ゆっくりと餌の重みで沈もうとする。狙い通りの幅で沈ませたら、穂先をゆっくり数センチほど上げてやる。これを繰り返すと、ボトム付近の水流に併せて落ちていく餌を演出できるのだ。ただし、この釣り方の場合、出てくるアタリはものすごく小さい。竿先を曲げてくれれば良い方で、大抵はラインに微妙な動きが出る程度だ。

「ユラ」。竿先を1mm程度引きこみつつラインが横に動いた。ワカサギが刺し餌を口に入れているほんのわずかな間にアワセを入れないとならないので、すかさず電動リールごと持ち上げる。穂先に生命感が伝わってくれば成功である。

これは、毎年晩秋~早春の間、非常に多くのアングラーを虜にしているワカサギ釣りの様子だ。湖や生育状況によっても違うが、5~12cm程度の細身の魚体を持つ魚で、水温が低下するに従い、大きな群れを作る。高水温の時期には湖中に散らばっていたワカサギだが、こうなってくれると釣りやすくなるのだ。食味も最高で、天ぷらにするとほんのりとした甘さとほくほくした身が口の中で再度踊ってくれる。わたしの場合、ビール片手に食べ続けると、100匹ぐらいは簡単に消費してしまうほどだ。

多い日で数百匹も釣れる魚ではあるが、数釣りを求めなければ老若男女問わず、手軽に楽しめる人気のターゲットでもある。ただし、そこはITアングラー流、様々なデバイスを駆使して、誰よりも多く、誰よりも美味しい魚を釣るのだ。最大のコツは各デバイスの特性を良く理解し、機能を存分に引き出すこと。そして水中をイメージする第6感をプラスすれば、トップ釣果だって夢ではないのだ。

釣って楽しく、食べて美味しい。ワカサギは晩秋から早春が旬の人気ターゲットだ

手軽に始められるのも魅力

ITアングラー流では魚群探知機や電動リールを使うが、手巻リールと普通のワカサギ竿でも同じように釣果は得られる。毎年、この時期になると釣具店には2、3,000円のワカサギセット的なアイテムがたくさん並ぶので、それでも構わない。

ただし、きちんと釣果を得ようとするにはいくつかのコツが必要になる。正確に棚をとることや、良く釣れるポイントをしっかり覚えておくのも大切だ。また、ワカサギは新鮮な餌が大好きなので、マメな餌変えも大事になる。釣れていない人を見ていると、ずっとそのまま放置しているケースが非常に多い。わたしは一回の釣行で最低でも二袋分のサシを使い切るぐらいだ。美味しい魚のためなので、これから始めようという人も、上記のことには気を付けていただきたい。

さて、冒頭でも述べたとおり、これからが旬となるワカサギ釣り。関東では11月に入ると、各湖が次々と解禁になる。わたしも今からそわそわするほど楽しみだ。次回からは、具体的にワカサギ釣りの奥深い世界を説明していこうと思う。

ワカサギ釣りにこだわるほど、道具にも愛着が沸く。小さい獲物だが、実に奥深い釣りなのだ