朝のチャンスタイムが過ぎるとやってくる突然の食い渋り。この状況を打破することが、ワカサギ釣りにおける数釣りの極意だ。前回に引き続き、この難しい状況で一匹でも多くの魚を掛けていくコツを説明していこう。
落ちてくるものに弱い
ワカサギもそうだが、ほとんどの魚は水中をユラユラと落ちていく物体に反応するという本能がある。弱った小魚や小生物、岸壁から剥がれた貝、昆虫などの陸生生物の死骸などなど、魚の餌になるものは水中にあれば、ほとんど水底へと落下する。このため、魚にとって落ちてくるものは餌であることが多いという認識なのだと想像しているが、針がついた餌でも落ちてくればついつい見てしまう傾向があるのだ。
この「魚は落ちてくる物に反応しやすい」という習性を利用すれば、ワカサギ釣りの食い渋り対策はおのずと絞り込むことができる。ユラユラと落下してくる餌を演出するには、オモリの沈下速度よりゆっくり竿を下げるという方法もあるが、一番手っ取り早いのはオモリそのものの重量を軽くすることだ。
例えば、いままで1号(約3.75g)を使っていたなら1.5gにしてみる、あるいは2gを使っていたなら1gといった具合にすれば、いつもどおりのアクションをしていても沈下速度に変化が生まれる。わたしは0.5g~5gぐらいを使い分けるが、食い渋るほど軽いオモリを使う。もちろん、オモリが軽くなれば穂先も変えて行く必要はあるが、「1~3.5g用」といった重量負荷の範囲が広いものなら特に付け替えなくても大丈夫だ。オモリを軽くすることで、アタリが明確になるケースも多いので、穂先にこだわるのは上達してからでいいだろう。
食い渋りでも連発!!
ここまで説明してきたテクニックを駆使して、食い渋る時間帯に10匹、20匹とカウントできれば、自分のリズムはぐっと作りやすくなる。実際にこの日も午前9時から食い渋りの時間帯が訪れたが、うまく誘いのアクションを入れつつ魚を取っていくことで、お昼過ぎには100匹を超えた。途中群れがくれば、手返し重視の入れ食い対応でカウントを伸ばせるだけ伸ばし、また群れが去ればゆっくり誘って一匹ずつ積み上げていく釣り方を合わせていった。
ちなみに、群れがよく寄ってくる時間帯は2本竿が有利。これは単純に確率の問題だからだが、逆に群れが散っている状態の場合は1本竿のほうが効率的だったりする。こちらは、どれだけ誘いに集中できるかというのがその理由だ。仕掛けを落としたままの状態で食わないのが分かっていれば、そちらは完全に仕舞ってしまい、残り1本の竿でじっくり誘いを掛ける。このほうがやはり、微妙なアタリに集中できるのだ。この辺の勘はアングラー自身にもよるのだが、少なくともわたしはそのようにしている。
結局、180匹でこの日の釣りは終了となったが、散発する群れと突然の食い渋りという条件の中では十分な結果だろう。今年のシーズンでは11月の開幕こそ調子が良かったものの、12月、1月はなぜか不安定な釣果の日が多かった。そういう時でも、系統立てされた思考と、的確な状況判断があれば一定の釣果は得られるようになるのだ。たくさん釣るばかりが、釣りでは無いが、こと数釣りが基本のワカサギ釣りだからこそのゲーム性がそこにある。というか、たくさん釣れれば、それだけ美味しいおかずやお酒のおつまみがいろいろ作れるところが良いのだ。
今シーズンも残りわずか。みなさんも、一匹でも多くのワカサギと出会うために、いろいろと思考を巡らせ、一日のゲームを楽しんでいただきたい。
進化が止まらない釣り業界
さて、ここまで解説してきた「釣りとIT」だが、ここで一区切りさせていただこう。これまでの連載で紹介してきた内容は、釣りに持ち込まれたITという意味ではまだまだほんの一部だ。魚が好むサイクルで微弱な光を発生させるハイテクオモリ、スマートフォンの画面を魚群探知機にできるグッズ、魚群探知機と電動リールを有機的に連携させるソリューション、水中を3DCGのようにリアルに映し出す次世代魚群探知機などなど、まだまだ紹介できていない製品は枚挙にいとまが無い。
もちろん、それを活かす側のアングラーにもITを使うことができる合理的な思考は必須。最先端の技術はそれを使いこなしてはじめて次の技術へと移行する。いわば、アングラーの声が大きくなれば、開発も進み、必要な製品が生み出されていくといえるのだ。
釣りはとことん没頭してこそ面白さが理解できるもの。IT的なデバイスや思考を駆使して、あらゆる可能性を追求する先に次の楽しみが見えてくる。いったん、これで連載を一区切りさせていただくが、また機会があれば「釣りとIT」をご紹介していきたいと思う。ではみなさん、これからもよい釣りを!