今回も前回に引き続き、ビジネスパーソンの出張における最重要の楽しみ、すなわち「食」の充実に関する話を取り上げてみよう。前回は鉄道編だったので、今回は鉄道以外の交通機関についてまとめてみた。
飛行機と空港の「食」事情
国際線ならともかく、国内線の飛行機で機内食が出るほどの長距離路線は滅多にない。そもそもコスト削減に対する圧力が強い昨今、国内線の機内で食べられるものは軽食程度ということが多いのではないだろうか。
しかし、フライトの時間が食事の時間帯にかかる可能性は常にある。出張だと昼間は仕事だろうから、朝・夕が主体になるだろうか。となると、出発前に空港で食事を済ませるか、空港でお弁当か何かを調達するか、という話になる。
それを当て込んだのか、最近では「駅弁」ならぬ「空弁」なんて言葉もある。空弁とは、空港で販売されている弁当を指す。駅弁を手掛けている会社が空弁も手掛けていて、両方が同じ場合もある。これを面白いと見るかガッカリと見るかは、モノによるだろう。
前回に取り上げた鉄道の場合と同じで、大都市圏の大きな空港と地方の小さな空港では、当然ながら「食」事情にも大きな差がある。地方空港でも、それなりにフライトの数が多い拠点空港は話が別だが、ショボいところは本当にショボい。具体的な名前を挙げるのは差し控えるが、筆者の妹が某空港について「本当に時間をつぶせるような場所がないんだから!」とボヤいていたことがあった。
いくつかの地方空港を調べてみたところ、「レストランが1件、売店が1件」というのが最低ラインのようだ。規模が拡大すると、それぞれ数が増えてくる。余談だが、高松空港のターミナルビルで「うどん屋」が2軒もあるのを知った時は唸った。さすが「うどん県」だけのことはある。
高速バスの「食」事情
高速バスの場合、一般的に「車内で食事を出す」ということはなさそうなので、出発前に確保して持ち込むのが基本になる。
出発前に確保できれば安心感は高いが、どこが発地になるかで確保できるモノが違ってくる。都市部のターミナル駅あるいはその近傍から出るバスであればよりどりみどりだが、発地によってはコンビニの弁当あるいは握り飯なんて可能性もありそうだ。
高速道路を走る路線なら途中のSA・PAで止まることがあるので、その際に何か食べられれば……と考えたくなる。ところが、あれは基本的にトイレ休憩だから、落ち着いて食事をしていられるほど長い停車にならない可能性が高い。そこでノンビリしていて置いて行かれてしまったのではシャレにならないので、車内に持ち込んだほうが無難であろう。
ただし、最近ではSA・PAにコンビニやベーカリーを併設するケースが増えているので、そうした場所であれば、持ち帰りが可能な「食」の選択肢は増える。幸い、NEXCO各社はSA・PAの充実と情報発信に力を入れているから、利用する予定のバス路線が立ち寄るSA・PAを調べておけば、NEXCO各社などのWebサイトで "予習" が可能だ。
ドラぷら (NEXCO 東日本)
http://www.driveplaza.com/NEXCO中日本
http://www.c-nexco.co.jp/NEXCO西日本
http://www.w-nexco.co.jp/
フェリーの「食」事情
あまり出番はないかもしれないが、ついでだからフェリーについても書いておこう。最もバラツキが激しいのが、実はこの分野かもしれない。
豪華指向の航路ならば、レストランを何軒も設置しているような大型フェリーを運航している場合がある。これなら問題はない。短距離の航路だとそこまでするのは無理なので、売店だけということもある。もうちょっと運がいいとカウンター式の喫茶スペースがあって、軽食ぐらいは取れることもある。
ところが一方では、トラックドライバーが主な客層といった事情やコストダウンの観点から、「食」にはあまり力が入っておらず、インスタント食品や冷凍食品の自動販売機を設置しているだけ、なんていうフェリーもある。
同じ航路で複数の便があり、便によって「レストラン付き」と「自販機のみ」が混在していると、便の選択や食事の確保に関する判断を間違えた時に困ってしまう。例えば、オーシャン東九フェリーには「スタンダードフェリー」と「カジュアルフェリー」という区別があるが、前者は食事をとれるスペースがあり、後者は自販機のみである。
そのため、他の交通機関以上に、フェリーにおいては事前の調査・確認が重要になる。もちろん、船社のWebサイトで配船や船舶ごとの設備を確認できればベストだ。もし船内で大した食べ物を確保できなければ、事前に確保して持ち込む必要がある。
ただし、フェリーターミナルは往々にして市街地から外れたところにあるので、街の中にいるうちに食べ物を確保しておくのが正解であろう。フェリーに乗るのはクルマで移動している場合が多いだろうから、幸いにも機動力はある。
周囲の人に対する配慮もお忘れなく
鉄道・飛行機・バスを問わず、食事を調達して持ち込む際に注意したいポイントが1つある。それは、匂いのキツイ食べ物を持ち込むのは避けたいという話だ。船は空間に余裕があるから、問題は緩和されるかもしれないが。
山陽新幹線に乗った際、新大阪から乗ってきた人が車内で豚まんの包みを開いたものだから、周囲がその匂いでいっぱいになってしまった経験がある。豚まんは筆者の好物だが、自分が食べるものならともかく、隣席で豚まんの匂いを発散させているだけ、となると話は別。
単に自分も食べたくなって困るという程度で済めばいいが、「食べ物の匂いを発散させられるのは不愉快」という人もいるかもしれない。それを考えると、むやみに匂いがきついものを持ち込みにするのは避けたほうが良さそうだ。1つの気配りである。