今回の御題は「自動改札機」である。首都圏では比較的導入の歴史が浅く、広く普及するようになったのは1990年代以降の話。なんてことを書くと、近畿圏の人に笑われてしまうのだが、相互乗り入れや連絡運輸で複雑怪奇なことになっている首都圏に自動改札機を入れるのは難しいことなので、致し方ない部分もある。
そうした課題をクリアできる目途が立ったからこそ、首都圏のJRや民鉄各社でも自動改札機の導入に踏み切ることができたわけだが、機械のすることにはやはり限界がある。そして、違反をしていなくても、機械の仕様上や設計の限界を越えてしまい、目の前でゲートを閉められて駅員が飛んでくることもある。
そんな、自動改札機にまつわる話をいろいろとまとめてみた。
悪いことはしていないのに「キンコン」になってしまうことも
「キンコン」とは柑橘系の果物ではなくて(それは「キンカン」だ)、自動改札機がエラーを出してゲートが閉まってしまう事態を指す。不正利用の際に「キンコン」が発生するのは当然のことだが、不正を行っていなくても「キンコン」になってしまうことがあるので注意したい。
飛行機を利用する場合、「A地点からB地点に移動するだけ」と動きが単純で、しかも搭乗するフライトごとに改札を行うので問題は少ない。ところが、複雑な乗車経路の選択や発券が可能な鉄道は事情が異なる。
最も基本的な「A駅からB駅までの切符を所持していて、A駅で改札を通って入場、B駅で改札を通って出場」という単純パターンなら、問題は起こらない。日付が違っていたり、キセルをしていたりするのでもなければ、「キンコン」にはならない。
問題はもっと複雑なケースである。個人的な経験だと、以下のような例がある。いずれも、有人通路に回って切符を見せればあっさりクリアできたのだが。
ケース1 : 6の字型経路の乗車券
JRの乗車券は、同一区間の重複が発生しない範囲で、できるだけ長い距離にまとめるほうが安上がりである。そこで、東北方面をグルっと回った際に「東京都区内→大宮→新潟→米沢→福島→大宮」という乗車券を作ってもらった。最後の「大宮→東京都区内」は重複になるので、別発券である。
ところが、この乗車券が大宮駅の新幹線乗換口にある自動改札で引っかかった。行先に指定された駅で入場しようとしたからだと推測される。仕方なく有人窓口に持っていったら、もちろん通してもらえた。
ちなみに、こんな乗車券を発券してもらった理由については、「もっとおトクに! 賢い鉄道旅行術」の第2回乗車券は一筆書きで購入すべしを参照されたい。
ケース2 : 途中下車
JRや一部の民鉄には「途中下車」という制度があり、一定以上の距離を持つ乗車券であれば、途中の駅で出場・再入場ができる(JRの場合、101km以上)。昔は改札口で「途中下車印」を押してもらったものだが、最近は自動改札機でも途中下車できる。
と思ったら、これが通用する駅としない駅があるのだ。個人的経験だと、名古屋駅ではOKだったが、広島駅では「キンコン」になってしまい、有人通路に回る羽目になった。
ケース3 : 自動改札機で入場していなかった
別の切符で入場していたとか、無人駅で入場したとか、連絡改札で入場したとかいう事情で自動改札機を使わずに入場した場合、乗車券には入場の記録が残らない。その乗車券を使って自動改札機で出場しようとすると、「キンコン」になる場合がある。新幹線と在来線の中間改札でも同じだ。
例えば、「恵那→名古屋→東京都区内」の乗車券を事前に発券してもらっていたケース。恵那駅で明知鉄道からの乗換改札(これは自動改札ではない)を利用したためなのか、その後に名古屋駅の新幹線乗換改札で「キンコン」が発生した。
ICカード乗車券で「キンコン」を避けるコツ
最近は主流になりつつあるICカード乗車券でも、何も問題ないはずなのにエラーを起こすことがある。その多くは読み取り/書き込みのエラーだ。
ICカード乗車券は非接触式ICカードを利用しており、カードの内容を読み書きする際、改札機に組み込んだ読取装置が出す微弱な電波を利用している。隣の改札機と干渉すると困るので、あまり出力を高くできないらしい。
そのことと関係があるのかわからないが、経験的には、優しくタッチするとエラーになりやすいように感じられる。むしろ「パコン」と軽く叩きつけるぐらいのほうがエラーにならない。筆者はついでにちょっと遊んで、手首のスナップを利かせながら叩きつけている。
わかっていれば事前に回避できるかも?
このように、経験的に「これは駄目だ」というケースがいくつか存在する。そういう経験を蓄積することで、「こういう場面ではエラーを起こすだろうな」と先読みして、最初から意図的に有人通路に回ることもある。
悪いことをして「キンコン」になるのは当然だが、悪いことをしていないのに「キンコン」になると、自分も駅の人も気分がよくない。無用のトラブルを事前に回避できるのであれば、それに越したことはないと思うから。
ただ、途中下車のエラーみたいに、「以前はエラーになったものが、機器の改良(正確にはソフトウェエアの改良か)によってエラーを起こさなくなった」なんてこともある。駅の人が気を利かせて「これは自動改札機でも大丈夫ですよ」と教えてくれれば助かるのだが、それを期待できるかどうかは状況次第だ。