前回は駅の構内を把握することで乗り換えの手間をいかにラクにするかについてまとめてみたが、今回はその前段となる交通案内サイトの話を取り上げたいと思う。
これまで、この種の機能はPC上で動作するソフトウェアの形をとっており、ダイヤ改正の度にバージョンアップしていた。しかし現在では、Webサイトを通じて利用するのが普通だ。常に最新のデータを利用できること、携帯電話やスマートフォンによるアクセスが可能になったことの利点は大きい。と言いつつ、筆者自身の携帯電話はいまだに「通話専用」なのだが……。
交通案内サイトとコンピュータの限界
閑話休題。その交通案内サイトだが、実際に出発地と目的地を入力して検索させてみると、時には「ええっ、どうしてこんなルートを」と我が目を疑いたくなるような結果を出してくることがある。
もちろん、「最短所要時間」あるいは「最低運賃」といった条件は満たされているのだが、やたらと乗り換えが多くなったり、JR線だけでも行けるところなのに、間に地下鉄などの民鉄線をサンドイッチするせいで運賃が高くなったり、といったことが間々ある。事業者ごとに独立して距離別運賃制を敷いている日本の鉄道では、異なる事業者の路線を乗り継ぐと初乗り運賃が次々に加算されて、えらく割高になるのである。
また、ほんの数分かそこらの時間短縮のために途中で乗り換えるような経路を指示してくると、「なんだかなあ」と思う。この辺は、所要時間や運賃について機械的に処理せざるを得ないコンピュータの限界というもので、利用者心理まで考えろというのは無理があるのだが。
もっとも、そういった問題がある一方で、近接しているが連絡対象になっていない駅の間を徒歩で結ぶ「裏技的ルート」が出てきて驚かされることもあるのだから、何にでもプラスの面とマイナスの面があるということだろう。
そう言えば、高速道路の所要時間案内サイトでも複数の候補ルートを表示させると、選択肢に困って大回りで高くつくルートを出してくることがある。この辺にもコンピュータの限界があるのかもしれない。
的確な結果を出すポイントは細かな「条件指定」と「経路指定」
ともあれ、単に出発地と目的地を指定するだけで自分の好みに合った最短経路、あるいは最安経路を出してくれというのは難しい場合もある。そこでモノをいうが、出発地と目的地以外に設定できる各種の条件である。
たとえば、「JRのみ」という条件を指定できれば、JR線の間に民鉄線をサンドイッチして割高な運賃になる事態を避けられる。飛行機・バス・徒歩といった手段を利用するかどうかの指定ができれば、これも自分の意図を反映させる一助となる。
さらに、経由地の指定を細かく行う手もある。特に、「どこを通るかは決めていて、時刻や乗り継ぎの情報だけがわからない」といった場面では、出発地と目的地だけを指定するようなズボラをしないで経由地をきちんと指定するほうが、望みの結果を早く得られる。ただし、交通案内サイトの仕様によっては、経由地を1つしか指定できない場合もある。
個人的な感想としては、経由地を1つしか指定できないのは不便で、せめて3ヵ所は指定できるとありがたい。長距離の移動で経路選択の幅が広い場合は特にそうだ。なぜなら、選択肢が広い分だけ、意図せざる結果が出てくる可能性も高くなるからだ。
紙の時刻表の存在価値
以上のように、コンピュータ任せにしないで自分で細かく条件を設定することで、交通案内サイトの真価を発揮させることが可能になる。最新の情報を利用できる点、アクセス手段があればいつでもどこでも利用できる点はメリットなので、たまたま駄目な結果を出してきたからといって「使えない」と決めつけるのは早計だ。
それに、駅情報・地図情報・タウン情報など、ネット上で入手しやすい各種リソースに関するリンクを用意できるのも、交通案内サイトの利点である。
では、紙の時刻表には出番がないのだろうか。そんなことはない。特定の線区や区間について、複数の列車やフライトなどを並べて見比べるには、紙の時刻表のほうが扱いやすい。だからこそ、今でも複数の会社から「時刻表」が販売されているし、航空会社も時刻表の冊子配布を続けている。紙の時刻表がなくならないのは、それ相応の理由がある。
第一、紙の時刻表はオフラインにならないし、故障しないし、ハングアップもクラッシュもしない。停電しても使える。
また、便名・時刻・運賃の情報に特化した交通案内サイトと異なり、紙の時刻表でなければわからない情報はいろいろある。例えば、東海道・山陽新幹線の時刻表を見てみると、編成両数や車種まで書いてある。欄外を見ると、ちょっとした豆知識や駅弁に関する情報まで載っている。こういうところは、長い歴史の積み重ねの中でブラッシュアップを重ねてきた紙の時刻表ならではだ。