前回、旅に持っていく荷物のサイズの基準として、「国内線における機内持ち込み荷物の上限サイズ」を使うことをオススメし、その理由を紹介した。実は、これにはちょっとした注意点があるので、今回はそれを取り上げよう。キーワードは「100席未満」だ。
100席より小さい機材は荷物のサイズ上限も小さい
前回、サラッと書いてしまったが、国内線における機内持ち込み荷物のサイズの上限は機材のサイズによって異なる。といっても、いちいち機種ごとに区別しているわけではなくて、「100席」がボーダーラインになっている。つまり、「100席以上」と「100席未満」という区切りだ。
平素、国内線の中でも主要幹線ばかり利用していると、「100席未満の機材」なんて乗る機会はそうそうないように感じる。確かに、ボーイング777やボーイング767はいうに及ばず、小さめの機体と見なされるボーイング737やエアバスA320でも100席を超えている。
とはいえ、すべての路線がこうした機材で運行されているわけではない。そこで、実際にどれくらい「100席未満の機材」があるのか、各社のWebサイトで調べてみた。ただし、もともと小型の機材しか使用していない会社は対象から外して、大手2社のグループについて調べた。
グループ | 飛行機と席数の内訳 |
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日本航空グループ | ボンバルディアCRJ200 (50席)、同DHC-8-Q100 (34席)同DHC-8-Q300 (50席)、同DHC8-Q400 (74席)、エンブラエル170 (76席)、サーブ340B (36席) |
全日空グループ | ボンバルディアDHC-8-Q300 (56席)、DHC8-Q400 (74席) |
一般的には、「よほどのローカル航路でなければ、100席未満の機材なんて遭遇しない」と考えても無理はないが、実はそうとも言い切れない。実際、筆者が先日に東京から宮崎まで日本航空で飛んだ時の機材はエンブラエル170だった。ただし、すべての宮崎便がエンブラエル170というわけではなく、ずっと大型のボーイング737を使用している便もある。
かように、バスや鉄道と比べると飛行機の運用は融通無碍なところがあり、路線ごとに使用する機材が固定化されているわけではない点に注意したい。「前回に乗った時は100席超の機材だったから」と思っていたら、実際は「100席未満」だったなんてことになると、持ち込めるつもりだった荷物を持ち込めなくなってしまう。逆の場合はあまり問題はないが。
となると、間違いなく「100席以上の機材」しか来ないであろう大都市同士の主要幹線以外では、利用に際して「100席未満の機材」を念頭に置いて、予約時に機材を確認するように心掛けるほうが良さそうだ。
実際、筆者も自分が利用する宮崎便がエンブラエル170だと知ったため、荷物のコンパクト化を図った。普段と同じリュックを使っていたら、持ち込みができなくなっていたかもしれない。もし、機内まで持ち込めたとしても、いざ搭乗となってから棚に荷物が入らなくて焦ってしまうことになっていただろう。
三菱MRJはライバル機よりも荷棚が広い
ちなみに、これから日本のエアラインが導入する小型の機材というと、全日空が導入を予定している三菱MRJ90 (92席)がある。当然、これを引き当てる可能性も出てくるだろう。
そこでで調べてみたところ、MRJの荷棚は他のリージョナルジェット機よりも大きく、25cm×45cm×56cmまで対応できることになっている。
これは、日本航空や全日空が規定している「100席未満の機材」における荷物サイズの上限の20cm×35cm×45cmよりも大きく、実は「100席以上の機材」におけるその上限値(25cm×40cm×55cm)をも上回っている。
つまり、MRJなら100席以上の機材を利用する時と同じサイズの荷物を機内に持ち込める理屈だ。このこと自体はおおいに歓迎すべきことなのだが、荷物のサイズ上限を定員だけで判断するわけにはいかなくなってしまうので、実際の運用がどういうことになるかが気になる。
つまり、空港で荷物を預けたり検査したりする際に、席数ではなく機材ごとに個別判断するのか、それとも現在と同様に席数で区分するのか、という問題だ。しかし後者の方法を使用した場合、せっかく荷棚を大きくしたMRJのメリットをなくしてしまう格好になるので、ありがたい話とは言えない。さて、どういうことになるだろうか。