これまで、この連載では交通機関の「乗り方」を主に取り上げてきたが、たまには趣向を変えてみたい。ということで今回は、出張や旅行に使用する鞄のサイズについて考えてみようと思う。
旅の荷物はできるだけコンパクトに
旅の荷物に限った話ではないが、「万が一の可能性の過大評価」という現象がある。例えば、旅行に行く時は往々にして、「あれが必要かも、これも必要かも」といっていろいろなものを詰め込んで、大荷物になってしまう。ところが、ステーションワゴンに荷物一式を放り込んで旅行するならともかく、鉄道・バス・飛行機で旅行する時は荷物が大きくなると、何かと面倒だ。
まず、駅や空港などで歩いて移動するのが辛くなる。荷物が重かったり嵩張ったりするとますます移動が大変になるし、混雑している場所や時期は、周囲の人にも迷惑をかけてしまう。特に「キャスター付きのキャリーバッグは大変だな」と、混雑する新幹線の自由席で他の乗客を見ていて再認識した。
また、荷物があまりに大きいと、収納スペースに入らなくなる可能性がある。真っ先に連想するのは飛行機のそれだが、高速バスの荷棚だって相当に狭い。鉄道は比較的余裕があるほうだが、それでも2階建て新幹線Max、あるいは山陽新幹線の「こだま」で使われている500系みたいに、荷棚の高さや奥行きが抑えられている車両がある。
また、JR九州の787系・883系・885系みたいに、荷棚に蓋をつけた構造になっている車両がある。こうした車両でも上下方向の寸法が抑えられていることがあるので要注意だ。787系は別途、大型荷物置場があるので問題になりにくいが。
もちろん、荷物を預ける(飛行機)・床下の収納スペースに入れる(バス)・車端の空きスペースに置く(鉄道)という手もあるが、移動そのものの問題や盗難・紛失のリスクを考えると、荷物を最小限にして持ち歩けるに越したことはない。
実際、筆者はよほどのことがなければ荷物は1つしか持たない。飛行機に乗るのに荷物を預けたことは(北海道にスキーに行った時以外では)ほとんどないというぐらいだ。大抵の場合、リュック型のカメラバッグに最低限の着替え・洗面道具・ノートPCなどを詰め込んで出かける。2泊3日程度までなら、これで十分。一眼レフカメラはいつも首からぶら下げている。
期間が長く、もっと荷物が多くて収まりきれない場合は、仕方ないのでキャリーバッグを引っ張り出すのだが、こちらは国際線旅客機の機内持ち込み上限サイズになっている。10年ほど前に10日ばかりアメリカに行った時もこれ1つで済ませた。もちろん、このキャリーバッグも機内に持ち込むから、空港でいちいち荷物を預けることはしない。
特に飛行機の場合、機内持ち込みだけで済ませることができると、空港で手間を減らせる利点がある。荷物を預ける手間もそうだが、到着地の空港で自分の荷物が出てくるのをジリジリしながら待つ必要がないのは、なかなか気持ちがいいものである。
基準サイズは国内線の旅客機にすべき
では、荷物をコンパクトにまとめるにしても、どの程度のサイズにすればよいかという問題が出てくる。移動手段によって鞄を使い分けるのも不経済だから、できれば1つで済ませたい。となると、最も厳密にサイズが制約される国内線の飛行機を基準にするのがよいと思う。実は、筆者が使用しているカメラバッグは国内線の飛行機で許容されるギリギリのサイズだ。
国内線旅客機の機内持ち込み荷物は、以下のようにサイズ上限が定められている。
- 100席以上の機材:縦・横・高さの合計が115cm以内、かつ55cm×40cm×25cm以内
- 100席未満の機材:縦・横・高さの合計が100cm以内、かつ45cm×35cm×20cm以内
これを基本にして、どういった形態の鞄にするかを決めるわけだ。筆者は身軽に移動できること、カメラ機材の収納、両手が空くメリットといった点からリュック型のカメラバッグを使っているが、仕事の出張でこれはどうかと思うので、TPOに合わせて他の選択肢も考えてみたい。
もしも、この上限よりもサイズダウンできるのであれば、まず厚みを抑えたい。というのは、前述したMaxのように通常よりも荷棚の高さが低い列車があるからだ。また、自分の足下に荷物を置く場合も、厚みが少ないと収まりが良くなる。
鞄が小さくなれば、当然ながら収容可能な荷物が減ることになるので、中身をいかにして削るかという課題も生じる。
いずれにせよ、冒頭で言及した「万が一の可能性の過大評価」は荷物をコンパクト化する際の最大の敵だ。南極探検に行くのではないのだから、国内の旅行・出張では「足りないものがあれば現地調達」と開き直るぐらいで、ちょうどいい。とはいえ、化粧品だなんだと細々したものがいろいろ加わる女性のほうが、分が悪そうではある。