東日本よりも西日本は海路が多い
中部地方以東に住んでいるとあまりピンと来ないが、東日本と西日本では海路の状況が異なる。なぜなら、西日本は瀬戸内海あるいは日本海などに多くの島嶼を抱えている事情があるため、船を使ってそれらの島嶼を結んでいるケースが多いからだ。また、本州・四国・九州の相互間でも航路が設けられている。
個人的な話をすると、予讃本線の八幡浜駅で「のりかえ 別府連絡」と書かれた看板を見てビックリした。四国で九州の地名を見て驚いたわけだが、よくよく考えれば、豊後水道を渡る航路があり、八幡浜と別府を結んでいる。陸路だととんでもない大回りを余儀なくされるが、海路なら最短ルートでショートカットできる。
自分が実際に利用した例では、熊本と島原を結ぶ航路がある。島原湾~有明海がグッと北のほうまで入り込んでいるため、列車で移動しようとすると鳥栖まで北上してから長崎本線で南下してこなければならないが、海路なら一直線だ。
特に、熊本~島原を結ぶ航路には熊本フェリーの高速フェリー「オーシャンアロー」が就航しているので、一般的なフェリーよりも速い。といっても、巡航速度35ノット(自足65km)で爆走していた東日本フェリー・青函航路の超高速フェリー「ゆにこん」(現存せず)と比べればスピードは出ていないのだが、それでも熊本~島原外港の所要時間は30分足らず。
試しに、熊本市の中心街から熊本港までの移動時間(後述)、それと島原外港駅からの島原鉄道の所要時間を加算してみたが、熊本~諫早間の移動時間はJR在来線特急の鳥栖回りと大差はなさそうだ。ただし、九州新幹線が開業すると話は変わってくるし、本数や利便性ではJRの勝ち。しかし、目的地がどこなのかによっては、海路にも十分に出番はありそうだ。
ビジネス利用が多い航路というよりは地元の生活航路だが、青森県の大間と函館を結ぶ航路もある。これのおかげで、大間から見ると青森よりも函館のほうが時間と距離が短く、出て行きやすいということになる。大間といえば下北半島の北端だから、そこから南下して陸奥湾沿いにグルッと回らなければならない青森は意外なほど遠い。それよりも、海路で一直線の函館のほうがはるかに近い。
変わったところでは、神戸空港と関西国際空港を結ぶ海上ルートがある。といっても、神戸市内で海に近い場所に住んでいる人やオフィスが海に近いところにある会社の人が、混んだ電車や交通渋滞に邪魔されずに関空に行けるぐらいしか、使い道は思いつかないが、ほかにどんなアイデアがあるだろうか? アイデア次第では使えそうな海路なのだが。
海路はターミナルの位置と天候がカギ
海路では、タダの旅客船ではなくフェリーを使用しているケースが多いので、クルマで移動する場合に重宝すると思われる。人間とクルマをまとめて運ぶことができるからだ。それに運転する立場から見ると、乗船して移動している間を貴重な休憩時間に充てることもできる。
ただし問題は、海路では必然的に乗り場が海辺になるため、市街地から離れているケースが少なくないこと。島原の場合、島原鉄道の島原外港駅から徒歩5分足らずという恵まれた位置にあるが、反対の熊本港フェリーターミナルは中心街からクルマで30分ほどかかる(早朝・夜間の便を除いて連絡バスは出ている。筆者は朝一番の便に乗ったためにバスがなくて、タクシー代を奮発したが……)。
そういう意味でも、いちいち公共交通機関でアクセスする必要がある徒歩乗船より、クルマでターミナルに乗り付けるほうが、海路を利用するメリットを実感できると言えるだろう。荷物が多い時でも、すべてクルマに積み込んで一気に移動できる。
あと、海路で注意が必要なのは、天候の影響だろうか。海が荒れると安全のため、当然ながら船は運航を中止する。すると、出発地あるいは目的地で身動きがとれなくなってしまう可能性が出てくる。
もっとも、天候が悪くなると飛行機だって飛べなくなるし、鉄道も運転を見合わせたり、速度規制がかかって遅れたりするから、船だけが特別に悪天候に弱いわけではないのだが。