新幹線・特急列車で増える「電源設置座席」

その昔、「ノートPCをISDN公衆電話のデータ通信ポートに接続してNIFTY-Serveにアクセスしていたら、電話機にイタズラしていると思われて通報された」という笑い話(?)があった。今では、ノートPCを持ち歩く人は珍しくないし、列車や飛行機の中で使っている人もたくさんいる。

そうなると気になってくるのが、電源の問題だ。バッテリ駆動時間を確保するために各メーカーは頑張ってくれているが、それでも電源を確保できることがわかればグッと安心感は増す。予備のバッテリの持ち歩きによって対応できる場合がほとんどだが、車内で電源を確保することで予備バッテリを持ち歩かずに済めば、それだけ荷物が軽くなる。

国内線の飛行機であれば、搭乗時間はそれほど長くない。それに、離着陸時の電子機器お使用は禁止されているから、ノートPCを利用できる時間は飛行時間よりもかなり少ない。ところが、鉄道になると話が違う。新幹線で東京から博多まで移動すれば5時間かかる。それだけあれば相当な仕事ができるが、それは電源があればこそ。特に、無線LANやデータ通信サービスを利用すると、バッテリの減りが速い。

幸い、こうした状況を反映して、座席に電源コンセントを設置する車両が増えてきた。かつて、列車内の洗面所にある電気カミソリ用のコンセントで充電しながら凌いだこともあるのだが、それも昔話になりそうだ。

筆者の記憶が確かならば、「ノートPC用」と銘打って座席に電源を設置した最初の例は、山陽新幹線の「ひかりレールスター」(700系7000番台)だったと思う。この車輌の場合、指定席車(4~8号車)の車内前後端にあるすべての席と、8号車の普通車4人用個室に電源コンセントを設けてある。以後もJR西日本では、車内前後端の席に電源コンセントを設ける事例が多くなっている。

その後、JR他社もこの流れに乗って、特急列車の座席に電源コンセントを設置する事例が多くなってきた。この背景には、ノートPCの利用増大だけでなく、携帯電話を充電したいという需要が増した事情もある。特急列車の電源コンセントの設置方法を大別すると、以下のようになる。

  • 前後端の席のみ(指定席車だけのこともある)
  • グリーン車の全席と、普通車の窓側座席と前後端席
  • グリーン車の全席と、普通車の前後端席

さすがにグリーン車・普通車の全席に設置した例は少なく、JR東日本のE259系「成田エクスプレス」ぐらいだろうか。この列車はモバイルWiMAXを利用してネット接続を行えるのがウリだから、その関連だろう。

ちなみに、個室寝台車で電気カミソリ用向けに電源コンセントが設置された例があるが、ノートPC程度の消費電力であれば、問題なく利用できる。実際、「サンライズ瀬戸・出雲」のシングル個室でカミソリ用の電源にノートPCを接続したことがあるが、特に問題はなかった。

札幌-旭川間を結ぶJR北海道の特急「スーパーカムイ」

「スーパーカムイ」で使用している789系電車の指定席車(uシート)には、座席ごとに電源が備えられている。カップホルダー上部の黒い四角がそれ

電源装備がわかりやすいパターンとわかりにくいパターン

電源を装備していることがわかりやすいのは、「この車輌あるいは列車なら必ず電源付き」と明確になっているパターンだ。東海道・山陽新幹線であれば、N700系を使用する列車は時刻表に明記されている。よって、N700系を使用する列車に乗る際は、グリーン車あるいは普通車の窓側席・前後端席をリクエストして指定券を購入するか、あるいは自由席車で窓側席を確保すればよい。

同様に、「車内前後端の座席」を指名買いすれば電源を必ず確保できる例としては、先に挙げた「ひかりレールスター」や、「しらさぎ」の683系2000番台、2010年11月から「はまかぜ」で運転を開始する189系などがある。

ところが、同じ車両でも電源付きの車両とそうでない車両が入り乱れている場合がある。典型例が東海道・山陽新幹線の700系で、JR東海では60編成のうち36編成、JR西日本では15編成すべてが客室前後端の席を電源付きとしている。つまり、700系を使用する列車のうち電源付きになる確率は68%となる(「レールスター」は別)。

列車単位で見ると、山形新幹線の「つばさ」も同様だ。新しく投入したE3系2000番台×12編成はN700系と同様にグリーン車の全席と普通車の窓側・前後端に電源を備えているが、電源なしのE3系1000番台×3編成が混ざっているので、電源を備えた席に座れる確率は12÷15=80%だ。どの列車にどの編成が入るかは決まっていないので、運次第と言える。

なお、客室前後端に電源を設けた車両の中には、全座席に電源がない場合がある。また、「窓側席のコンセントを通路側からも利用したい」という場面もあるだろう。だから、テーブルタップやタコ足配線用の分岐コネクタを用意しておくと便利だ。あと、普通車窓側席の電源は壁の床に近いところに付いている場合が多いく、ウォールマウントプラグだと電源ケーブルの長さが足りなくなる可能性があるので、注意していただきたい。

ところで、列車の中に限った話ではないが、公共の場でノートPCを持ち出して仕事をする場合、会社や組織の機密情報が関わってくることもあるだろう。したがって、液晶ディスプレイには「覗き見防止」のためにプライバシーフィルタを取り付けることをお薦めしたい。