今、僕の部屋ではスカイプが起ち上がっていて、複数の友人、仕事先の人などと、常にオンラインで通話中、繋がった状態になっているんですね。スカイプといえば無料電話のイメージですが、繋がってるからといって、お互い何か話すわけではなく、ただ繋がりぱなしな状態です。気心知れた相手だから、生活映像や音声がダダ漏れなかんじになっちゃってるけど、そんな状態をもうずいぶん長い間やってきたので慣れたのか、気になりません。客観的に考えればおかしなことですが、ひとり部屋にいながら複数人の息吹が伝わっていているという感じは、それなりに、なかなかいいもんです。

仕事上、僕は、マンガや映像、デザイン、そのクリエイティブ活動は多岐に及ぶ! とかいったって、結局、環境としてはパソコンの前にいるだけなので、ぜんぜん多岐に及んでないです。ず~っと部屋にいる。部屋人。いつ外出したっけ? みたいなことになって、それは心身の健康によくないから、そこで、散歩! ということになります。

ひさびさの外は光量がえげつないです。メタルハライドランプ何個分? 電気代が凄そう、ってくらい眩しい。そして風、匂い、二軒先のお庭の黄色いバラが咲きまくって、いい香りを無尽蔵に散布しております。これがシャバの醍醐味か! 外気の大スペクタクル! 身体の全細胞が喜んでる気がする。

で、こんなことを考えます。部屋にいながら外の気持ち良さを味わうことはできないものか……。散歩の途中、縁側の老人をみかける。そう、縁側はそんな気持ちが現れてるな~。昔の人も同じようなこと考えていたのですな。

買い物でも、調べ物でも、部屋でできることがずいぶんと増えた。部屋で過ごすことは、これから先もっと多くなりそう。部屋をいかに充実させるかってのは、創作の意欲や心身のコンディションを考える上で大きなテーマです。

僕が期待しているのはやはり照明です。光と心身はかなりリンクしてますからね、室内の光量ってのはとても大事。照明はLEDになっていくんでしょうね。ついに今年になって各メーカー価格を抑えた水草水槽用のLEDライトが登場してきてます。「すみだ水族館」においてもLED照明が導入されました。数年前から僕は水草水槽を部屋でやっていて、ここでも以前書かせてもらったので詳しく書きませんが、水草水槽は、自然の芽吹きが、生態系が室内の水槽の中で展開されます。それは部屋に居ながらにして大自然への窓を持ってるようなものです。スカイプで繋がった友人たち、買い物など、パソコンは暮しの窓。

今、スカイプで友人が鼻歌をうたっている。僕はこの旋律に歌をのせてハモらしたりしてるけど、その声は友人の部屋ではタイムラグがあって、友人にはズレて聞こえている。これから先、通信が太くなって、実時間で歌のハモりができるようになれば未来だな。そんな時代はすぐにでもやってきそう。

室内労働の未来は明るい。と僕は思っています。

タナカカツキ


1966年、大阪府出身。18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。キリンジのアルバム『BUOYANCY』など、CDのアートディレクションも手掛ける。