造形の美にせまる、第2回目です。前回は、流木の造形の魅力、それはイームズチェアなどの流線型にあるような美しさ……。のようなことを言っていたのですが、ちょっと違います。不気味さが違います。一般に流線型の美と言うのは、身体のフォルムや風の流れのようなもの、もっとクールでスタイリッシュなイメージだと思います。流木の造形は、もっと不気味で嫌ったらしい印象です。
僕は大阪で生まれ育ったので、当然、太陽の塔はよく見かけます。当時、万博にも行きました。まだ3歳だったので、その時の記憶はなく、写真しか残ってません。でも太陽の塔の印象だけは憶えていて、それを作った芸術家のことは知らなかったけど、この塔のことは好きでした。特にてっぺんの金に光る顔と側面の赤のラインはかっこいいと思っていました。顔や赤のラインはウルトラマン、胴体はエレキング(ウルトラセブンに登場する怪獣)を彷彿とさせて、敵か見方かわからないけど、身近なテレビのヒーローの造形を思い起こさせました。
そしてもうひとつ。大阪に生まれ育った人はこの塔もよく目にしたのではないでしょうか? 大阪府富田林市にあるPLの塔(「PLの塔」で画像検索をぜひ!)です。ここでは、毎年大きな花火大会(PL花火大会)が行われ、遊園地もあり(1989年9月で閉園)、甲子園ではPL学園(桑田や清原)が活躍したりと、子供に人気のPLでした。そのシンボルタワーは、僕が4歳の頃に出来て、太陽の塔のように顔はないけど、どこか有機的で、これまたウルトラマンに登場した怪獣シーボーズに似ていて、僕は好きでした。
太陽の塔が岡本太郎という芸術家がデザインしたものと知ったのは、ずいぶん後のことで、PLはパーフェクトリバティーという教団のシンボルタワーと知ったのは、それからさらに後のことです。この教団は「人生は芸術である」ということを真理にしています。「人は芸術生活をするとき、始めて人生の意義と妙味とを知ることが出来る。芸術生活とは何か、それは各人がその個性を各自の職域に於て自由に表現することである」ということらしいです。太陽の塔とPLの塔、大阪にあるこのふたつの巨大異形像は芸術ということで一致していたんですね。
このふたつの塔の中間地点に位置する東大阪で僕は生まれ育ちました。この塔は僕の造形感にどんな影響を及ぼしたのかな……。まったく及ぼさなかったのかもしれないし、自分ではわかりません。ただ、日々生活の中で、この好きだけど近寄りがたい造形、この形は何なのだろうと、時折考えてはよくわからないまま保留にする、そんなことを、幼年期から青年期にかけて何度となく繰り返したのは事実です。
この話、次回に続きます。
タナカカツキ
1966年、大阪府出身。弱冠18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。キリンジのアルバム『BUOYANCY』など、CDのアートディレクションも手掛ける。