気がつけば……。ぼくのアトリエの片隅には、流木がこんなにも……。
これもまだほんの一部。家の外で管理しているものまで含めるとかなりの量になってしまいます。流木を集めるのが趣味ではないのですが、水草屋で買ったり、ネットで買ったり、人からもらったり、拾ったりして徐々に、いつのまにか増えてしまいました。流木なんかに手を出すなんてろくでもないと思ってるんだけど、この世に同じ形の流木はなく、心を掴まれる造形に出会うと、家に持って帰ってじっくりと眺めたくなる。静かな午前、お茶を飲みながら、机の上に置いた流木をじろじろ眺める、ただそれだけの時間。そんな贅沢な時間をイメージしてしまうと、いつのまにか流木のオークションで競り合ったりしている。
でもね、まさか自分がそんなモノに心奪われるとは思ってもみなかったですよ。できれば目を醒ましたい。そんなものに時間とお金をつぎ込むんだっから、もっと他にやることあるでしょ! って自分を説得したい。流木を眺めるなんてアホらしい。100歩譲っても、そんなものはもっと老人になってからでいいじゃないですか! 葛藤…自問自答…板挟み。
温泉地や民家の玄関先などで、剥製なんかと並んでピカピカに磨かれた流木の置物なんてものを見たことある方も少なくないと思います。流木に高い芸術性と悠久の時のロマンを感じる人たちがいるんですよね。流木を愛でるなんて……、そんなじじくさい趣味! そんなふうにも思ったりしますが、ここではひとまず、植え付けられた既成概念を少し剥がしてみて、流木そのものの造形美、あるいはそれらが代表する流線型の美について、もう少し考えを進めてみようかと思います。
流線型の美しさは女性も同じようにグッとくるのかなあ……。
タナカカツキ
1966年、大阪府出身。弱冠18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。キリンジのアルバム『BUOYANCY』など、CDのアートディレクションも手掛ける。