ここ数回、「水草水槽」をモチーフにお話を進めてきました。僕はこの水草水槽とデジタルクリエイション、特にCG制作との共通点をものすごく感じています。
水草水槽は「飼育」水槽ではありません。水草をレイアウトし、常に美しい水の状態をキープするために生態系をサイクルさせることが不可欠で、そのためにエビや小魚などの生体を投入します。そこで飼育の楽しみが加わりますが「美しい景観」を作り込むことが第一義であって、これは盆栽やガーデニング、古来日本の庭の文化に近いかもしれません。
まず人間が設計図を描き(ここでCGとの共通点が出てきますが)、四角いフレームの中で人間は設計主となり世界を作ります。すべて人間が手を入れるのではなく、ある程度のところで他力に委ねます。あとは「監視」操作、支配、選択をしながら、完成を待ちます。CGにはレンダリングというコンピューターが黙々と計算する時間があり、水草の場合は草が育つのを待ちます。CGの場合コンピュータの誤作動で、あるいは設計ミスで思いもよらぬ表現が出来上がっちゃう場合があります。事の成り行きが思わぬ方向に好転するデジタルクリエイションの醍醐味については、前回の繰り返しになりますので、ここでは省略いたしますが、水草の場合も同じようなことが起こります。人間が自然を自在にコントロールできるわけはないです。期待するのは、デジタルクリエイションの醍醐味と同じく、人間の手には負えない表現が立ちあわられる瞬間です。CGも水草も、あるいは盆栽も、他力とセッションしながら想像を超えるものを創造していくセッション画です。
モネさんがCGについてうるさいので、CGについての説明は我々には不必要ですが、一旦ここで、これぞコンピューターグラフィックスという表現を、モネさんにとっては百聞は一見に如かず、見ていただこうと思います。
コンピュータグラフィックスのひとつ役割として現実的なものをシミュレーションし現実に撮影が不可能なものを補うという得意技がありますが、ここではセッション画としての「CGがやらかした人間の手には負えない表現」としての絵を見ていただきます。フラクタル画像なんてもってこいかもしれません。フラクタルについての細かい説明はここでは省略させていただきますが、とっても人間の手描きではムリ! 描けるものなら描いてみろ! ってかんじです。
ムービーをこちらにアップしました。
ちなみに、こんなサイトもあります。 コンピューターがまるで宇宙の印象を描き出したように思います。検索「フラクタル画像」で画像検索すると、色々出てきます。 「人間の手には負えない表現」、これらは「自然」を彷彿とさせます。大胆かつ繊細な自然。彩り豊かでバラエティに富み、恐れられ、崇められ、実りをもたらし、増殖をアホほどくりかえす。コピーアンドペースト、コピペの大魔王! フラクタル画像はまさしくそうです。コンピューターが人間にできない自然のイメージを表現したというのはおもしろいことだと思います。
水草水槽も言うに及びませんが自然の表現をふんだんに活用していく表現です。次回、表現としての「自然」について、もうちょっと突っ込んでゆきます
タナカカツキ
1966年、大阪府出身。弱冠18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。