前回の続きです。いきなりですが、「水草水槽」を画像検索してみてください。

ガラスケースの中に緑が繁茂してますよね。それは色とりどりの熱帯魚水槽の様相はありません。多少お魚はいますが、まるで水中園芸のようです。園芸は生きた植物を素材とする美的文化でございますが、その水中バージョン。いや、それだけではなく、ガラスケースの中におさめ、それをまるごと運搬できます。つまり部屋の中に持ち込み、年中楽しむことが出来ます。

水槽と聞いてまず思い浮かべるのが、メンテナンスの苦労です。昭和の金魚水槽、あの玄関先にあった水が汚れ、緑の藻が生えまくり、やがて金魚が見えなくなるような……。「水草水槽」は、あの昭和の飼育水槽のような悲惨な水の汚れはありません。水草は汚れの元になる藻やコケの栄養分を奪いとってしまうからです。さらに「水草水槽」は水槽内にある程度、生態系をサイクルさせるので、バクテリアが水をきれいにするのに一役かうのです。水槽内には植物を育てるために二酸化炭素を添加します。難しい話は置いておいて、さらに画像検索「ネイチャーアクアリウム」と検索してみてください。

これも「水草水槽」のいちジャンルですが、さらに見た目、美観に重きを置いております。どうでしょう? まるで自然の一部を切り取ったかのようではないでしょうか? アマゾンのジャングル、あるいは侘び寂のあるような庭の趣さえあるものがございます。(ネイチャーアクアリウムとは写真家でアクアメーカーADAの創始者天野尚氏が確立した水草レイアウトの技法です)。

ちょっと前まで水の中で草を育てるということ、水草の入手はたいへん困難でしたが、インターネット直販や、水草ショップなどで世界各地の美しい水草などが簡単に手にはいるようになり、近年のアクア機器の進歩により栽培も容易になり、水草を「育てる」ということから水槽内を「レイアウト」「デザイン」することに移行し、美観を競い合う世界コンテストまで登場してきました。ADAが主催する世界コンテストは今年で10年目を迎えております。

トップ10までの画像がここにアップされております。

この画像に心を掴まれた方には説明はいらないと思いますが、「なんだ、ただの水槽趣味じゃん……!」と思われてる方もいらっしゃると思いまので、さらに説明させてください。この水槽が自分の部屋にあることを想像してください。ガラスの中では自然と同じように、植物が育ち、美しく透明な水の中で魚が泳ぎ回り、新しい命が芽吹き、風のように水流が水草や水面を揺らめかせます。それだけではありません、魚の死に出会うこともあります。死んだ魚は翌日、骨になっています。仲間やエビに食べられ、バクテリアに分解され、やがて水草の養分になります。その美しい景色の中で「自然」が展開されるのです。ガラスの中の景色は生きているのです。

世界コンテストの話に戻ります。このコンテストが特徴的なのは水槽の美観、「美しさ」を競い合ってる点にあります。「印象」、「独創性」、「調和」、「自然感」、「水草の状態」など5つの細かな要素に分かれますが、総じて「芸術性」を軸に展開されてるということがとても重要なのです。

この話、ただのオッサンの水槽趣味の話ではありません。創作のための「心」のTipsに最後は戻りますので、いましばらく辛抱しておつきあいくださいませ。また次回に続きます!

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タナカカツキ


1966年、大阪府出身。弱冠18歳でマンガ家デビュー。以後、映像作家、アーティストとしても活躍。マンガ家として『オッス! トン子ちゃん』、『バカドリル』(天久聖一との共著)など作品多数。1995年に、フルCGアニメ『カエルマン』発売。CM、PV、テレビ番組のオープニングなど、様々な映像制作を手がける。映像作品『ALTOVISION』では「After Effects」や「3ds Max」を駆使して、斬新な映像表現に挑んだ。