電源レギュレータ
問題はバックアップ・バッテリだけではありません。電源レギュレータの選択という別の問題もあります。車載用途と同様に、車両外のバッテリ電源は、厳しい温度環境に耐え、広い入力電圧と電磁妨害(EMI)の軽減を維持する必要があります。テレマティクス・システムは、高温が続く車両内(フロントガラス、車室、トランク、エンジン)に配置されます。150℃のIC接合部温度と適切なボードの熱および効率性が求められます。
OEMのロードダンプ、逆極性やコールド・クランキングの条件に応じて入力電圧は異なりますが、通常は4.5Vから最大42Vの範囲です。スイッチング・レギュレータがカー・ラジオのAMおよびFMの周波数帯に干渉することは許されません。そのため、周波数の切り替えは(AM周波数帯より低い)約400kHzまたは(AM周波数帯より高く、FM周波数帯よりも低い)約2.1MHzのいずれかである必要があります。
適切なスイッチング周波数、ディザリング/スペクトラム拡散のスイッチング・レギュレータを選択して最適に配置することは、すべて、良好なEMIのパフォーマンスを確保するための重要な要素です。
オーディオ
オーディオ電源は大きく異なります。4W~6Wほどの低電力のシステムを選択する設計者がいる一方で、20Wのシステムを選択する設計もいるかもしれません。消費電力やバリエーション以外にも、一般的な車載での短絡の保護、ロードダンプ、温度に対する保護とモニタリングに加え、オープンおよび短絡の出力負荷、電源出力、接地短絡など、スピーカーの診断と保護はオーディオにおいて非常に重要な機能です。
データ通信
独立型のeCallシステムとTCUの違いは、ユニット外部でのデータ通信です。つまり、データ通信が行われる場合はTCUであり、通信が行われず、基本的に自動車用携帯電話である場合はeCallシステムです。もちろんTCUにもeCallの機能を装備できます。しかし、eCallシステムにはTCUの機能を装備できません。
テレマティクス・システム内のデータ、モデム、メモリ・ストレージの統合が進むと、ヘッド・ユニットやセントラル・ゲートウェイへの接続のデータ転送速度が向上します。CANやLIN、そしてUSBによるデータ通信の時代も過去のものになりました。これらの方式はすでに10/100Mbps、さらには1GMbpsの通信に取って代わられています。
将来の展望
コネクテッド・カーの将来については、未知な部分が数えきれないほどあります。テレマティクスは手がかりを提供していますが、技術はさまざまなテクノロジー企業が一体となって問題に対応できる速度でしか進歩しません。
これらの新しいトレンドや、OBDドングルのような小規模なアフターマーケットでのテレマティクスの可能性から生まれるもの、および、V2Xシステムのような革新的技術を予測することは困難です。モデム、処理、データ通信のように、最新のTCUとの類似点は確実にありますが、これらのシステムは完全に異なるニッチ市場に該当し、法令やユーザ・エクスペリエンスのような外部要因です。
また、断片化された市場、新しいサブシステム、設計における問題、セキュリティの懸念、インフラのニーズ、法制など、数多くの問題があります。
しかし、コネクテッド・カーに対する買い手の期待は高まっているので、大きな収益の可能性があります。OEM、ティア1、ティア2、サービス・プロバイダの各社は、自社と業界全体の水準を向上させる準備を進めており、将来的には対応が進むことは間違いありません。
著者プロフィール
Hope BovenzTexas Instruments(テキサス・インスツルメンツ)
オートモーティブ・インフォテインメント・システム部門システム・エンジニア