アプレッソの新製品「Thunderbus」は、VPN構築など大がかりな作業をすることなく、手軽にオンプレミス環境にあるデータをクラウドサービス上から利用できるようにするツールだ。開発の経緯や製品の特徴について解説した第1回に続き、今回は想定する利用シーンや将来像などについて話を聞いた。
Thunderbusで実現する情報活用3つのケース
Thunderbusはサーバライセンス(Thunderbus Serverを稼働させるサーバのCPU単位)およびエージェントライセンス(Thunderbus Agentの台数)、そしてユーザーライセンスの組み合わせで販売される。最小構成として、サーバ1CPU、5エージェント、5ユーザーという構成で100万円、または月額58,000円となっている。
利用シーンとしては、以下のようなケースが挙げられる。
[Case 1] クラウドサービス+Excel
1つめは、社内のクライアントPC上などにあるファイルをSaaSから活用するパターンだ。
「現場で日々発生する数字を、それぞれの社員がPCのローカルに保存したExcelで管理しているケースは少なくありません。一方で、サイボウズの『kintone』などでアプリを作り、データを皆で共有するようにしている企業も最近は増えています。現状ではそれらを連携することが容易ではありませんが、これらをThunderbusでつなげば、現場では今まで通りExcelに手入力するだけで、あとはThunderbusとDataSpider Servistaによりkintoneへデータをわたすことができます」と亀井氏は説明する。
[Case 2] BI(ビジネスインテリジェンス)+拠点データ
2つめは、多数の拠点や店舗を展開する企業の場合だ。拠点から本社へのデータ送信や、その逆となる本社から拠点へのデータ送信、あるいは売り上げなどの同期を行う必要があるデータは多岐にわたる。そのため、拠点や店鋪で管理しているデータとクラウド上にある本社のBI システムを連携することで、最新のデータをもとにした経営分析が行えるようになる。
同社 営業部の脇野寛洋氏によると、すでにα版の段階から、こうした多拠点展開をする企業がThunderbusを導入して、活用している例もあるという。
「この企業様は急速に拠点を拡大中で、拠点ごとの業績を管理するためにBIシステムの導入を進めていました。各拠点にあるシステムから業績データをファイルとして出力するところまでは構築されていたのですが、そのファイルを本部に転送する仕組み、分析に必要なデータをファイルから抽出・加工する仕組みを検討する必要がありました。ここで登場するのがThunderbusとDataSpider Servistaの組み合わせによるデータ連携です。Thunderbusを利用することにより、DataSpider Servistaから拠点にあるファイルを直接操作することができるため、ファイル転送処理をDataSpider Servista上でデータ加工処理と一緒に考えることができるようになり非常に効率的です。さらにThunderbusの拠点への導入が簡単であるということも好評をいただいており、アプリケーションエンジニアだけで拠点間の連携の仕組みを構築できることも魅力です」(脇野氏)
[Case 3] グローバルデータ連携
3つめは、グローバル展開している企業での利用も想定されている点だ。世界各地の拠点サーバからThunderbusでデータを収集して本社のシステムから参照したり、逆に各拠点のサーバへデータを配布するといった使い方だ。
「グローバル展開する際には、ネットワークインフラが貧弱な地域や、ITエンジニアがいないような場合もあります。そういった地域でも、Thunderbusを使えばVPNなどを導入する必要なく、連結会計や経費精算、在庫の突合などといったシステム間のデータ連携を容易に実現できます」(脇野氏)
SaaS事業者が、個々のユーザーのデータを収集することも可能に
もちろん、この3パターンの想定以外にも様々な使い方が考えられる。
「例えばSaaS事業者が、Thunderbusを利用してユーザーのオンプレミス環境にあるデータを活用できるようにする、といった使い方も可能です。ユーザーの環境にあるファイルにアクセスしたいとき、ユーザーにアップロードしていただいたりオンプレミス環境とVPNで繋いだりすることなく、簡単にファイルにアクセスすることができます。また、ローカルで溜まっていくアプリのログやバックアップデータをクラウドに逃がす処理を自動化するといった使い方も想定できます」(土岐氏)
「その他、流通小売業のEDIでも、便利に使えると思います。Thunderbusでつなげば、サーバ側からプッシュ配信することも、逆にサーバ側で収集することも簡単にできます」(脇野氏)
Thunderbusが提供する機能は、これまで敷居が高かった「オンプレミスにあるデータをクラウドから参照できるようにつなぐ」ことを容易に実現するという非常にシンプルなものだ。シンプルであるだけに、工夫次第で用途は広がるわけだ。
データベースやWebサーバへの対応など、機能を拡充予定
2014年9月のα版、12月のβ版を経て、今回1.0をリリースしたThunderbus。先行ユーザーの要望を聞ききながら調整を進めてきたわけだが、すでに今後の開発方針も定まっている。
「バージョン1.0では、WebDAVサーバとしてファイルへのアクセスを可能にしています。今後のバージョンでは、データベースやイントラネットなどのWebサーバの接続にも対応していく予定です。私たちは常にユーザーの声を聞きながら、機能を拡充していこうと考えています」(土岐氏)
データベースやWebサーバへの対応は、今夏にも実現させる方針だという。また、先行ユーザーからは他の接続形態を要望する声もあり、正式版ユーザーからの反応も踏まえつつ対応を検討していく意向だ。
「将来的には、SaaSとしての提供なども考えています。また、企業ユースとしてはもちろんですが、前述のようにSaaS事業者様へのOEM提供も行っていますので、自社サービスの利便性向上のためにも利用していただきたいです」(亀井氏)
本格的なクラウド時代を迎え、Thunderbusが利用されるシーンは今後ますます増えるはずだ。次回は、実際にThunderbusを導入、利用している企業の事例を紹介する予定なので、こちらも楽しみにしていただきたい。