8月に開催された「Intel TECHtour.MY」の2日目に公開されたのは、ペナン島の対岸、マレーシア本土のクリム・ハイテク工業団地(ケダ州クリム)にあるIntelマレーシア工場のもう1つのサイトである「クリム・キャンパス」の一部。シリコンウェハからダイを切り出しトレイに並べてダイテストを行い、合格品をキャリアテープに封入するための施設である「KMDSDP(KuliM Die Sort Die Prep)」、およびIntel製品の動作検証向けのテストマザーボードやそれを装着したテスターなどの装置を内製する「SIMS(System Integration and Manufacturing Services)」の施設が公開された。いずれの施設もKM-1(クリムキャンパスの1号棟)およびKM-2とよばれる建物の中にある。

  • Intelのクリム・キャンパスがあるクリム・ハイテク工業団地

    図1 Intelのクリム・キャンパスがあるクリム・ハイテク工業団地(マレーシア・ケダ州)の入り口 (著者撮影)

KMDSDPにおけるダイプレパレーションおよびダイソート

ダイ・プリパレーション

専用の箱に入れてKMDSDPに納品されたダイシングテープで接着保持されたシリコンウェハ(図2)は、レーザースクライバーによりダイにカットされ(ダイシングともスクライビングとも呼ばれる、図3)、ロボットによりダイを収容するトレイに自動的に移載されて、次のソート工程に回される(図4)。

  • 専用の箱に入れてKMDSDPに納品されたダイシングテープで接着保持されたシリコンウェハ

    図2 専用の箱に入れてKMDSDPに納品されたダイシングテープで接着保持されたシリコンウェハ (Intel提供、以下すべて)

  • ずらっと並んだダイシングマシン

    図3 ずらっと並んだダイシングマシン

  • ロボットがダイシングの済んだウェハからダイを1個ずつ取り出しトレイに収納

    図4 ロボットがダイシングの済んだウェハからダイを1個ずつ取り出しトレイ(写真には写っていない)に収納

トレイに移されたダイは専用の前面で開閉する密閉箱(外観は前工程で使われているFOUPに似ているが、中身はウェハではなく、ダイを載せたトレイ)に入れられて、無人搬送車(Automated Guided Vehicle:AGV)により自動テスト装置に運ばれる(図5)。

  • ずらりと並んだトレイ移載装置の間を走行する無人搬送車

    図5 ずらりと並んだトレイ移載装置の間を走行する無人搬送車

ダイソート

ソートシステムは、20台のテストセルが4段5列で配置され、20個のダイを同時にテストできるようになっており、ここで不良品や低性能品を選別する(図6)。

  • ダイテストシステム(ダイソーター)側面

    図6 (上)ダイテストシステム(ダイソーター)側面、(下)ダイテストシステムの前面。トレイを収納した密閉箱を置くEFEM(Equipment Front End Module)。奥に小さく見えるのが2台の無人搬送車

テストセルにはテスト用基板が収納されており、テスト対象のUPC/GPUごとに基板を簡単に差し替えられるように基板に取っ手がついている(図7)。

  • 20台のテストセルそれぞれに収納されているテスト用基板

    図7 20台のテストセルそれぞれに収納されているテスト用基板

なお、この基板は、後述する社内のSIMS部門で内製されたもので、内製することで社外への情報漏洩を防ぐ工夫がなされている。

トレーからキャリアテープへ

ダイ・ソートで合格したダイのみキャリアテープへ封入して、アセンブリ工程へ送られる。

システムインテグレーション&マニュファクチャリングサービス(SIMS)

クリム・キャンパスには、システムインテグレーション&マニュファクチャリングサービス(SIMS)と呼ばれる事業部門が同居しており、SMT(Surface Mount Technology)というにプリント基板に電子部品を表面実装する装置が並んで、IntelのCPUやGPUなどの開発を行なう時に必要な開発用のマザーボードおよびこれらを搭載したテストシステムをマレーシア工場内部で製造している。SIMSでは、プレ・シリコン向けのシミュレータ用基板も製造され、CPUの開発拠点などに提供されているという。

  • 製造したマザーボードの電気的検査

    図8 製造したマザーボードの電気的検査

  • HDBIテスターの製造

    図9 HDBI(High Density Burn-In)テスターの製造。重いマザーボード(上)をテスター(下)に装着した後に筐体をかぶせてテスターが完成する

  • CPU/GPUのテストに利用されるHMDTテスターの組立ライン

    図10 CPU/GPUのテストに利用されるHMDTテスターの組立ライン

なお、Intelにとって第14世代目のCoreとなるMeteor Lake(開発コード名)は、EUVリソグラフィを採用した「Intel 4」プロセスを用いてオレゴン州のD1施設で立ち上げ中であり、すでにアセンブリとテストがマレーシアで始まっているとのことである。

  • Intelマレーシア工場でMeteor Lakeの量産開始へ

    図11 Intelマレーシア工場でMeteor Lakeの量産開始へ (出所:Intelマレーシア工場長AK Chang氏のプレゼンの一部)