Intelは、同社にとって最大の後工程の生産拠点であり、近く登場する予定の次世代クライアントPC向けプロセッサ「Menteor Lake(開発コードネーム)」の実装・テストを進めているマレーシア工場のクリーンルーム内部を報道関係者にはじめて公開した。
Intelの半導体製品の多くがここから世界中の顧客へ出荷が行なわれている。今回のイベントは「Intel TECHtour. MY」と称し、8月21~23日にかけて、同社のマーケティングセグメントとしてはアジア・太平洋・日本(APJ)の半導体・PC・AI・IT・ゲームなどのメディア向け、同23~25日は欧米の同様のメディア向けに開催されたものとなる。各参加者は、2日間にわたってマレーシアのペナン島にあるIntelのペナン・キャンパスおよび対岸の本土にあるクリム・キャンパスのクリーンルーム内部を実際に見学。マレーシア工場内にある秘中の秘ともいえるDesign and Development Labsの内部も一部見ることができた。
Meteor LakeのCPUタイルはオレゴンのD1施設で製造後、マレーシアで実装
今回の工場見学に先立ち、Intel セールス&マーケティング事業部門VP兼アジア・パシフィック・日本(APJ)担当ゼネラルマネージャーのSteve Long(スティーブ・ロング)氏が、現在のIntelの戦略について説明した。
Intelは「4年間に5技術ノード達成」という意欲的な微細化計画を明らかにしており、Long氏は「我々はすでに4年で5技術ノードという意欲的な計画のうち、Intel 7に関しては2022年より開始した第13世代Coreの製造より採用。Intel 4に関してもMeteor Lake向けCPUタイル(チップレット)に採用し、すでに製造を進めており、2つの技術ノードを完了した」と述べた。Intel 4については「Ramping Production Today」という微妙な表現を使っていたので、後で確認したところ、「今のところ製造は、米国オレゴン州のD1施設だけあり、製造にはEUVリソグラフィを使っている。現在、歩留まり向上中であり、いずれ量産移管先となるアイルランド工場ではテストウェハを流している段階」とのことであった。
その上で、今後の計画としては「Intel 4のバリエーションとなるIntel 3を用いた製造を2023年後半より開始。Intel 20AとそのバリエーションとなるIntel 18Aはそれぞれ2024年前半、2024年後半に製造を開始する」と述べ、今後も前工程の製造技術の開発を継続し、着実に製造に導入していくと強調した。
また、「Intelは世界中に半導体製造や開発・サービス拠点を有しており、近いうちにドイツやポーランドにも進出してグローバル展開を進める。前工程については、内部での製造(Intel Foundry Service:IFS)と外部ファウンドリへの製造委託を併用することで、コストや効率を最適化していく」と自社が掲げる「IDM 2.0」の戦略を説明した。今回、Intelが半導体後工場のメディア公開に踏み切ったのは、こうしたIDM 2.0やIFSなどの半導体関連の新戦略に沿って後工程も着実に準備が進んでいることを印象づける狙いがあるようだ。
次世代パッケージングおよびテスト用に新たなファブを建設中
次に、Intel 製造・サプライチェーン・運営担当 VP兼 Intel Malaysia工場長兼Intelアセンブリ・テストマニュファクチャリング(ATM)グループシステムインテグレーション&マニュファクチャリングサービス(SIMS)運営ゼネラルマネージャーのAK Chang氏がIntelの後工程およびマレーシア工場についての説明を行った。
Intelは現在、ニューメキシコ、マレーシア、ベトナム、中国(成都)、ポーランド(建設発表段階)に後工程ファブを構えている。中でもマレーシアは、ペナン島と対岸のクリムに2つのキャンパスが存在するが、ペナン・キャンパスはIntelが設立されて4年ほど経った1972年に開設されたIntel初の海外事業所である「A1」サイト(当初従業員は100人ほど)がベースになっている。それから51年が経過した現在、マレーシア工場は従業員15,000人、敷地面積9万平方フィートの巨大工場に発展したとする(図2)。
そのペナン・キャンパスでは先進パッケージング用施設(コード名:Pelican)、クリム・キャンパスでは新たなテスト用施設(コード名:Falcon)の工事が進んでいる。マレーシア政府によると、Intelは、今後300億リンギット(2023年8月28日のレートで約9450億円)を新工場群に投資することにしており、国内で4,000人以上の直接雇用と、5,000人以上の工場建設関係の雇用創出が見込まれているという。
Chang氏によれば、マレーシア工場では、過去10年間に12億個のチップの組立・検査を担当し、500種類以上のテスターボードを用いて2020年以降、約5億個のダイソートを行ったという(図3)。