約2年間に渡ってお付き合いいただいた「にわか管理者のためのActive Directory入門」だが、事情により、100回目をもって終了とすることになった。Windowsサーバについては新たに別の連載を予定しているので、そちらでも引き続き、お付き合いいただければ幸いだ。
Active Directoryは意外なほど巨大な対象であり、利用形態によって、求められる設定や運用ノウハウには大きな違いがある。そのため、本連載の内容だけでActive Directoryのすべてをカバーできたとはいえないが、「にわか管理者のための~」というタイトルに見合った、基本的な話については、おおむねカバーできたと思う。
そこで最後に、これからさらにActive Directoryを活用していく上で役立つと思われる情報源を紹介しておこう。
Active Directoryに限ったことではないが、実際に運用してみると、さまざまなトラブルや疑問点に遭遇することがある。ユーザーごとに、利用形態や要求する条件、負荷状況などが異なるからだ。そういった場面で、以下に示す情報源は、本連載でカバーできなかった部分をフォローする役に立つのではないだろうか。
なにはなくともTechNet Online
ちょうど別口で、マイナビニュースで「TechNetの歩き方」という連載を行っていた。ここで取り上げているMicrosoft TechNetは、マイクロソフト製品を使用している企業のシステム管理者であれば、間違いなく必携の情報源といえる。
その中核となるのが、マイクロソフトのWebサイトを構成するコンテンツ群のひとつ、「TechNet Online」だ。TechNet Onlineの中核をなしているのは製品・テクノロジーごとに設けられている「TechCenter」で、製品情報、導入・運用に関するノウハウ、ホワイトペーパーや各種関連情報などへのリンク、関連するソフトウェアのダウンロード、サポート技術情報の検索、といったものを集めた構成になっている。
そして、Active Directoryについても2010年に入ってから、専用の「TechCenter」ができた。ここを起点として、Active Directoryに関連するさまざまな情報にアクセスできる。
TechCenterの画面構成はどの製品でも基本的に似ており、画面中央に最新のトピック群、画面の右側や下側に関連文書やダウンロード関連のリンク、画面左側にカテゴリー別の記事一覧、という配置になっていることが多い。
特にActive Directoryやその他のサーバ関連製品の場合、TechNetライブラリは有用な存在といえるだろう。基本的な操作・設定手順や技術情報について、分野別に分けて掲載してある。有償プログラムのTechNetサブスクリプションを申し込めば、評価用ソフトウェアに加えて、そのTechNetライブラリのDVD-ROM版も入手できる。インターネットに接続できない環境でも参照できるので、サーバルームに缶詰になったときに便利だ。
また、マイクロソフトのサーバ製品を使っているユーザーの導入事例に関する情報を、「導入事例集」で調べることもできる。自社と似た環境、自社と似た要求に基づいた製品導入事例があれば、めっけものである。
スクリプトセンターで自動化促進
また、同じTechNet Onlineにある「スクリプトセンター」では、処理の自動化に活用できるスクリプトのサンプル、あるいはスクリプトの書き方に関する情報がまとめられている。定型作業の繰り返しが頻繁に発生するようであれば、スクリプトとタスク機能を組み合わせて定期的に自動実行することで、管理作業の手間を省くことができる。また、「うっかり操作ミス」によってトラブルを引き起こす危険性を減らせる利点もある。
意図した通りの作業内容を持つスクリプトがなくても、既存のスクリプトを改造して、あるいは組み合わせて用いることもできる。スクリプトの書き方が分からなければ、連載コラム「Hey, Scripting Guy!」などが参考になるだろう。
[TechNetスクリプトセンター](http://technet.microsoft.com/ja-jp/scriptcenter/default.aspx)。左下に、Active Directory関連の記事一覧があるのが分かる |
サポート技術情報は宝の山
そして、知ってる人は知っている「宝の山」が、サポート技術情報(KB : Knowledge Base)だ。トラブルに遭遇したときだけでなく、一般的な情報についてもカバーしている点が特徴的だ。なにしろ、マイクロソフトの技術サポート担当者が業務用に蓄積した情報を公開しているのだから、内容は筋金入りである。蓄積されている情報の分量も半端なものではない。
サポート技術情報は、サポートオンラインだけでなく、TechNet Onlineからトピック検索をかけることもできる。特にTechNet Onlineのリニューアルによって、キーワード検索だけでなく、イベントIDやトピックIDを使った検索も容易にできるようになった。Windowsサーバを使用している場合には特に、イベントビューアに記録されていたエラー、あるいは警告について調べる場面が発生しやすいと考えられるが、そうなるとイベントIDによる検索の有用性は高い。
ただし曲者は、日本語版サポート技術情報のうち、機械翻訳によって生成したものだろう。一応、日本語になってはいるが、文章がいまひとつ分かりにくいことがあるからだ。それでも、英語版しかないのと比較すると、はるかに助かるのは確かだが。
その機械翻訳版の攻略法については、「TechNetの歩き方」の第25回「サポート技術情報の機械翻訳を読み解く」でまとめているので、そちらを参照していただきたい。
おわりに
Active Directoryに限らず、コンピュータ全般にいえることだが、スキルを上げるためのポイントのひとつは、どんどん触って、動かしてみることだと思う。もちろん、知識の裏付けが何もない状態で闇雲に動かしてみるだけでは筋道だった知識が身に付かない危険性があるが、逆に、解説書やWebサイトの記事を読んでいるだけでもピンとこないものだ。
だから、現物を実際に操作してみるプロセスと、さまざまな情報源や解説に触れてみるプロセスを行ったり来たりしながらノウハウを身につけていくのが、もっとも効果的ではないだろうか。幸い、マイクロソフト製品については本連載を初めとして解説記事が大量に存在するし、現物の製品についてもTechNet Onlineから体験版をダウンロードして試すことができる。こうした恵まれた環境を使わずに放っておくのはもったいない。使えるものは存分に活用して、仕事を楽にしたり、トラブルを減らして早く帰宅できるようにしたいものだ。