前回は、ファイルサーバーリソースマネージャ(以下FSRM)の導入当初から用意されている既定のテンプレートを使用して、それをフォルダに適用したり、適用を解除したりする際の操作について解説した。今週は、既定のテンプレートでは対応できない場面において、独自にテンプレートを用意する際の手順について解説する。

カスタムテンプレートの追加

クォータで制限する容量の上限値、あるいは警告の方法を変更するには、ユーザーが独自にクォータ用のテンプレート(カスタムテンプレート)を作成する必要がある。カスタムテンプレートは、既存のテンプレートを手直しする形で作成することも。新規に作成していくこともできる。

なお、FSRMのクォータ機能には「監視」と「制限」という用語が出てくるが、これらは設定した容量上限に達したときに書き込みをできなくするか、それとも警告を出すだけか、という点に違いがある。つまり、書き込みを止めさせたい場合には「制限」を使う必要があるし、制限を超えたユーザーの存在を把握できればよいという場合には「監視」を使うことになる。

テンプレートの作成手順は、以下のようになっている。

 1. [ファイルサーバーリソースマネージャ]管理ツールを起動する。

 2. 左側のツリー画面で[ファイルサーバーリソースマネージャ]以下の[クォータの管理]-[クォータ]を選択して、[操作]-[クォータの作成]、あるいは右クリックして[クォータの作成]を選択する。(このとき、右クリックする場所は、画面中央の空白部分でもよい。

 3. 続いて表示するダイアログで、以下の設定を行う。

  • クォータのパス : 作成するテンプレートの適用対象となるフォルダのパスを指定する。
  • テンプレートからプロパティを取得する : リストボックスでコピー元テンプレートを選択して[コピー]をクリックすると、そのテンプレートの内容を引き写してくる。その内容を修正すると、新規作成よりも手間がかからない。
  • ラベル : ここで指定した内容は、設定完了後のクォータ一覧に「ラベル」として現れる。必須の設定ではないが、複数のテンプレートがあるときに識別を容易にする目的で利用できる。
  • 制限値 : 保存可能なファイルサイズの上限を指定する。値と単位を別々に指定する。
  • クォータの種類 : 設定した制限値を越えたファイル作成を認めない[ハードクォータ]と、制限値を超えた際に警告を発するだけの[ソフトクォータ]のいずれかを選択する。
  • 通知のしきい値 : 後述

 4. 設定を行ったら、[作成]をクリックしてダイアログを閉じる。このとき、作成したカスタムプロパティに名前を付けて、テンプレートとして保存するかどうかを訊ねるダイアログを表示する。再利用を容易にすることを考えると、テンプレートとして保存しておく方が良いだろう。

 5. 画面中央に、設定したクォータに関する情報が現れる。

制限値や制限の内容を自由に指定するには、カスタムテンプレートを作成する必要がある

作成した設定をカスタムテンプレートとして保存しておくと、設定の再利用が容易になる

なお、「2.」のところでクォータを設定せずに、テンプレートだけをとりあえず作成することもできる。それには、左側のツリー画面で[クォータのテンプレート]を選択してから、[操作]-[クォータテンプレートの作成]、あるいは右クリックして[クォータ テンプレートの作成]を選択すればよい。その場合、クォータテンプレートを作成して一覧に加えるだけとなり、フォルダに対する適用は行わない。

カスタムテンプレートの警告方法設定

カスタムテンプレートを作成する際には、[通知のしきい値]を使って、制限値に達したときの通知方法を選択できる。既定値では[制限(100%)]だけを登録してあり、通知方法に関する設定は行っていない。

カスタムテンプレートの作成画面で[制限(100%)]を選択して[編集]をクリックすると、通知方法を指定するためのダイアログが現れる。このダイアログには、[電子メールメッセージ]、[イベントログ]、[コマンド]、[レポート]と4枚のタブがある。使用する手段はタブの名前そのままだ。

  • 電子メール : 送信先メールアドレスを設定して、制限超過を知らせるもの。管理者に通知することも、ユーザー本人に通知することもできる。この方法を利用するには、前回に取り上げたSMTPサーバの設定が必要になる。
  • イベントログ : 制限超過の発生をイベントログに記録するもの。イベントログに記録する文面のカスタマイズも可能になっている。です。この方法では、イベントビューアを見ないと制限超過の発生を確認できない。
  • コマンド : 制限を超えたときに任意のコマンドを実行するもの。たとえばCOMPRESSコマンドで圧縮をかけて急場をしのぐ使い方が考えられる。いきなりファイルを削除するのは止めた方が良いだろう。
  • レポート : 指定したフォルダに、ファイルの形で記録を残す。

カスタムテンプレート作成時に[通知のしきい値]以下の[追加]をクリックすると表示するダイアログ。ここでは、警告の方法や、どの状態で警告を発するのかを指定できる

このほか、[追加]をクリックすると表示するダイアログで、閾値と警告方法を指定する仕組みもある。

カスタムテンプレートの変更・削除

当然ながら、テンプレートは作成だけでなく削除も可能だ。テンプレートを削除する際の手順は以下のようになっている。

 1. [ファイルサーバーリソースマネージャ]管理ツールを起動する。

 2. 左側のツリー画面で[ファイルサーバーリソースマネージャ]以下の[クォータの管理]-[クォータのテンプレート]を選択する。

 3. 画面中央で削除したいテンプレートを選択して、[操作]-[テンプレートの削除]、あるいは右クリックして[テンプレートの削除]を選択すると、そのテンプレートを削除できる。

[ファイルサーバーリソースマネージャ]-[クォータの管理]-[クォータのテンプレート]を選択した状態で、テンプレートの作成・編集・削除が可能

そこで気になるのは、すでにどこかのフォルダに適用しているテンプレートをいきなり削除した場合の挙動だが、実は設定内容はそのまま維持される。つまり、適用中のテンプレートを削除してもクォータの設定がなくなるわけではなく、テンプレートを使った設定の再利用ができなくなるだけだ。

このほか、「3.」の段階で、画面中央でテンプレートを選択してから[操作]-[テンプレートからのクォータを作成]、あるいは右クリックして[テンプレートからのクォータを作成]を選択すると、既存テンプレートの適用が可能だ。また、[操作]-[テンプレートのプロパティの編集]、あるいは右クリックして[テンプレートのプロパティの編集]を選択すると、既存テンプレートの修正が可能になる。

すでにどこかのフォルダに適用しているテンプレートを変更すると、[OK]をクリックしてダイアログを閉じた際に、以下の選択を求めてくる。これは、テンプレートを適用した後で、一部の項目だけを個別に設定変更できるためだ。

  • 当該テンプレートと同じ内容を持つクォータの設定だけを変更する
  • 当該テンプレートを適用しているクォータすべての設定を変更する
  • 当該テンプレートを適用しているクォータの設定は変更しない