ファイルサーバを運用している管理者にとって永遠の悩み、それは「ユーザーが手当たり次第にファイルをサーバに置いてしまうせいで、予想外に空き容量が減ってしまう問題」ではないかと思われる。
それに対してWindowsサーバでは、2種類のクォータ機能によって対処できるようにしている。今回からしばらく、このクォータ機能について取り上げていくことにしよう。
Windowsサーバで利用できる2種類のクォータ
Windowsサーバのクォータ機能には、2種類ある。いずれも、ファイルシステムにNTFSを使用しなければ利用できないが、いまさらFAT32でもないだろう。
ひとつはWindows 2000 Serverのときから存在する機能で、「ドライブごとに」「ユーザーアカウントを単位として」使用量の上限を設定する機能だ。正確にいうと、ファイルシステムにNTFSを使用することで得られる「所有者」の情報に基づいて動作している。これを便宜上、「ユーザー単位のクォータ」と呼ぶことにしよう。使用量の監視に加えて、設定した上限を超えた場合の警告や書き込み抑止、といった機能を利用できる。
もうひとつはWindows Server R2から加わった機能で、「フォルダごとに」「ユーザーアカウントに関係なく」使用量の上限を設定する機能だ。こちらは便宜上、「フォルダ単位のクォータ」と呼ぶことにしよう。こちらも、使用量の監視に加えて、設定した上限を超えた場合の警告や書き込み抑止が可能だが、警告手段が多様化しており、たとえば管理者に電子メールを送信して通知する機能も利用できる。
ユーザー単位のクォータはドライブを単位として設定するようになっており、フォルダ単位の設定はできない。一方、フォルダ単位のクォータはその反対になる。
両者を併用すると、「ユーザー単位でフォルダごとの容量制限」を実現できそうに思えるが、それを実現できるのは、ひとつのドライブにひとつの共有フォルダしかない場合に限られる。複数の共有フォルダがあると、ユーザーごとの使用量の情報を合算してしまうためだ。
現実問題として、ひとつのドライブにひとつの共有フォルダしか設けない場合は少ないと思われるし、そもそも、ひとつの共有フォルダに対して複数のクォータ機能を混在させると混乱の元だ。だから、クォータの設定・運用はファイルサーバの設置計画と密接に関わってくる。
どういった用途のファイルサーバや共有フォルダが必要になるかを決める段階で、クォータで制限しなければならない共有フォルダと、そうでない共有フォルダをふるい分ける。そして前者について、さらにユーザー単位のクォータで制限すべきか、フォルダ単位のクォータで制限すべきかを判断する。最後に、ユーザー単位のクォータで制限すべき共有フォルダと、フォルダ単位のクォータで制限すべき共有フォルダを、別々のサーバ、あるいは別々のドライブに配分する。というように計画的に導入しないと、クォータをうまく機能させるのは難しいのではないだろうか。
これは、「個人のデータを置くための共有フォルダ」と「仕事用のデータを置くための共有フォルダ」では使われ方や制限の必要性が異なってくるので、当然といえば当然の話ではある。特定のユーザーがサーバに大量のファイルを書き込んでクォータのお世話にならなければならないケースは、前者の方が多いのではないかと思われる。
クォータを利用するための設定
Windows 2000 Serverでは、ユーザー単位のクォータしか利用できないので、話は簡単だ。ドライブのプロパティ画面でクォータの設定を行えばよい。この方法は、Windows Server 2003やWindows Server 2008でも同様に利用できる。
Windows Server 2003では、[サーバーの役割管理]ツールで、役割として[ファイルサーバー]を追加すると、フォルダ共有の設定と併せて、ユーザー単位のクォータを設定できるようになっている。ドライブのプロパティ画面で設定する方法と違い、共有設定とクォータの設定をひとまとめに行う方法も用意しているわけだ。
Windows Server 203 R2では、[サーバーの役割管理]ツールで[ファイルサーバー]の役割を追加すると、管理ツール[ファイルサーバーリソースマネージャ]が加わる。これを使うと、フォルダ単位のクォータを設定できる。
Windows Server 2008では、[サーバーマネージャ]を使って、役割[ファイルサービス]と、その下の役割サービス[ファイルサーバーリソースマネージャ][ファイルサーバーの管理]を追加すると、フォルダ単位のクォータを設定できる。